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殉職したガーダ、コラム・ホーカンさんのお葬式

制限解除が進み市中に人が出始めたとたん、海や川での事故、行方不明、殺人事件などのニュースが次々と聞かれるようになってきました。
先週はアイルランド西部のキャッスルリー(Castlerea, Co. Roscommon)という町で職務中の警察官がピストルで撃たれ殺害されるという痛ましい事件があり、国内が騒然となりました。
アメリカのような銃社会ではないアイルランドでは、発砲事件といったら麻薬絡みのギャングの抗争がときどきあるくらい。都市部から離れた静かな田舎町で警察官が銃弾に倒れる…というのは想定外のショッキングな事件でした。

亡くなられたのは49歳のコラム・ホーカン(Colm Horkan)さん。24年務めたベテラン巡査で、出身地メイヨー(Co. Mayo)のGAA(ゲーリックアスレチック協会)に若いときは選手として、現在はサポーターとして深く関わってきた方だそう。GAAはプロ化されることなくアマチュアリズムを守り続けているアイルランドの国技のスポーツで、アイルランドの地域コミュニティーの中核を成す存在といっても過言ではありません。地方の町では特に関係者の結束や信頼は絶大です。(日本でも放送が決まった人気ドラマ『ノーマル・ピープル』の主人公コネルもGAAのスター選手でした)

犯人は精神病をわずらった男で、どういう経緯かわかりませんが、コラムさんが職務上携帯していたピストルで無差別に発砲したようです。

アイルランドでは警察官のことを「ポリス(Police)」という英語ではなく「ガーダ(Garda)」と呼びます。アイルランド語の「ガーダ・ショーカーナ(Garda Síochána)」の略で、「平和の保護者(Guardians of the Peace)」という意味。
アイルランドで殉職した89人目のガーダとなってしまったコラムさん。ヒギン大統領もヴァラッカー首相も、ダブリン、コークなどの市長もみな弔意を示し、全国の警察署に一般市民用の弔問記帳も設置されました。

こちらの動画は、亡くなられた翌々日に故郷の町チャールズタウン(Charletown, Co. Mayo)に無言の帰郷を果たしたコラムさんのバジル(祈りを捧げたり、弔意を示す行為を深夜まで、または夜通し行うセレモニー)の様子。何百人もが深夜まで沿道に立ち続けたそうです。
ソーシャルディスタンスを保って行進しているのは、地元GAAのコラムさんの後輩にあたる選手たちでしょう。



そして、日曜日に行われた葬儀は国葬扱いに。チャールズタウンの教会に何百人もの人が集ったのはもちろん、全国各地の警察官たちがそれぞれの場所で同じ時間にセレモニーを行い、葬儀開始時間の正午には1分間の黙とうが捧げられました。
こちらの記事に葬儀を報じるニュース動画が掲載されています。→'One of nature's gentlemen' remembered at funeral(RTE News)

葬儀の様子は国営放送局(RTE)によりライブで動画配信されました。→こちら
私はちょうど家にいて最初の数十分を見ていたのですが、こんな言い方は不謹慎かもしれませんが、なんと美しいお葬式だろうと胸が震えました。生前のコラムさんのお人柄がにじみ出ていて、うまく言葉を紡げませんが、アイルランド社会の基盤となっている何かとても確かなもの、温かなもの、まっすぐな真実…といったものを見せられた気がしたのです。
アイルランド国旗に包まれたコラムさんの棺が「ユー・レイズ・ミー・アップ」の歌声で教会に運ばれてくるところ(6:18~)、ソーシャルディスタンスの関係で教会内に入れなかった人たちが雨の中立ち続けているところ、地元のGAAグランドに集まってコラムさんを偲ぶ人々、弟さんの弔辞…。

日本でこの規模の葬儀があるとしたら、著名人や芸能人でしょうか。ヒデキのお葬式くらいの人、人、人…。
コラムさんの葬儀がこれだけ盛大になった理由は、彼が生前に多くの人に慕われていたことももちろんですが、やはりアイルランドという国における警察官への尊敬と信頼の大きさを物語っていると思えてなりません。
海の向こうのアメリカでは、警察官が民間人を殺害したり、暴力的な行為をはたらく事件が頻発しています。それを思うと、アイルランドにおける警察官(ガーダ)の在り方、地元の人々との関係性…といったものがまったく違う次元にあることに驚かされます。

新型コロナ禍で移動制限を取り締まるためにガーダを出動させることになったとき、ヴァラッカー首相はアイルランド独立以来の「強制ではなく同意により連行する」というポリシーに従い、警察権力は最小限に行使することを強調しました。
ガーダの役割は名前のとおり、あくまで平和を維持する「治安防衛団」。コラムさんの殉職が国葬として扱われたという事実、地域社会全体が示す敬意と弔意の熱狂。アイルランドという国が決して建前ではなく、真に平和な社会を目指して営まれている国家であることをあらためて示された気がしました。
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コメント

殉職したガーダ、コラム・ホーカンさんのお葬式

日本でも警察官が被害に会った時、その場にお花や品物が捧げられるのをニュースで見ます。
でも、この葬儀の夜の車列や教会での葬儀の映像を見ると、ガーダがいかに親しみを込めて、また信頼されているのかがよく分かります。
Naokoさんの5月9日のブログでも、外出制限が緩和されフィッシュアンドチップスを食べに行っての帰り道、ガーダの検問で「(自宅へ)気を付けて帰ってね」と言われたとか、次の検問では「僕の分(のフィッシュアンドチップス)は?」とユーモアを交えて言われたとか、アイルランドのガーダの親しみやすさが感じられていました。
ブログを拝見して、コラム・ホーガンさんがお亡くなりになったのは悲しいニュースですが、何かほのぼのとした気持にもさせられました。
心温まるブログを有難うございます!

Re: 殉職したガーダ、コラム・ホーカンさんのお葬式

SHIGEさん、共感してくださって嬉しいです。ありがとうございます。
私はかつてストーカーまがいの被害にあったことがあり、ガーダが毎日夜11時に毎日うちに訪ねてきてくれていたことがありました。もっと重要な事件があるでしょうに、こんなささいなことで煩わせてすみません、と言うと、事件の発端はすべてささいなこと、通報したあなたは正しいことをした、と言われ心強かったです。
フィッシュアンドチップスの時のことも、よく覚えてくださっていてありがとうございます。
こういう点は、アイルランドのいつまでも変わらずあって欲しいと思ういちばんのことです。

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アイルランド公認ナショナル・ツアーガイド。長野県上田市出身、2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。

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