本日6月16日はブルームスデー(Bloomsday)。ダブリン出身の作家ジェイムズ・ジョイス(James Joyce、1882–1941)にちなむ記念日です。
ジョイスの代表作『ユリシーズ(Ulysses)』はダブリンの「ある一日」に起こったことを書いた長編小説ですが、その「ある一日」というのが1904年6月16日。ジョイスの実生活では、未来の妻ノラ・バーナクルと初デートをした日です。
小説の主人公レオポルト・ブルームにちなみブルームスデーと呼ばれ、いったいいつから始まったのだろうとあらためて調べてみると、出版の2年後の1924年にはイベントらしきものが行われていたとか。なんと100年近くも続くロングランの記念日なんですね。
毎年この日になると、ジョイス時代の衣装に身を包んだジョイス愛好家たちがダブリンの街に出没。小説に登場する場所を練り歩いたり、ブレックファーストを食べたり、朗読会を行ったりしますが、今年は新型コロナ禍でオンラインでのイベントに切り替えられたようです。
RTEラジオでは、物語が始まると同じ朝8時から、29時間45分ぶっ通しでの『ユリシーズ』の朗読が行われています。これを書いている
今もまだまだ続行中!
有名な『ユリシーズ』、皆さんは読んだことがありますか?
正直に告白すると、私はありません。仕事柄、だいたいの内容も出てくる場所も知っているけれど、通読したことはなくて、おそらくこれからも読まない気がする…。
ジョイスさん、すみません、『ダブリン市民』と『フェネガンズ・ウェイク』で勘弁してください、って感じです…。
でも、耳で聞くなら出来るかもしれない。いや、どちらかというと『ユリシーズ』は読むより聴きたい。優れた文学作品にはまるで音楽のような流れるリズムがあるけれど、ジョイスの筆もきっと楽器に匹敵するものだろうから。
文豪イエーツは口でブツブツ唱えながら詩を書いたと言います。妹に「お兄ちゃん、うるさいっ!」と言われて、キッチンの隅で書いていた、と伝記で読みました。
ジョイスも妻のノラに「あなたは歌手になった方がいい」と言われ続けたそうです。声がよくて、歌もピアノも上手だったんですよね。確かジョイス自身が朗読した『ユリシーズ』のレコードが存在していたような…。
アイルランドの文学者は語り部の血をひいていますから、彼らの作品は「文字」だけではなく、「音」を伴うはずなのです。
ブルームスデーに向けてそんなことを思っていたら、RTE Newsのサイトに全18章の朗読がすべてアップされていました。(英語)
早速、昨日から少しずつ耳で聴く『ユリシーズ』を楽しんでいます!
→
Ulysses - listen to the epic RTÉ dramatisation(PodcastsやSpotifyにもダウンロードして聞けます)

(写真は上記サイトより転載)
この朗読は、1982年、ジョイス生誕100年を記念して録音されたものだそうです。今日RTEラジオでぶっ通し放送しているのと同じで、18章全部で29時間45分あるので1日10分聞いたとして180日かかる!
まだ第1章の途中ですが、思ったとおり耳に心地よく、読むより自然に理解できるような気がします。読破…じゃなくて、聴破(?笑)まで長い道のりですが、来年のブルームデーまでに聴き終えられればいいなあ(笑)。
新型コロナ禍で時間が出来、集中しやすい環境になったせいもあり、以前よりも英語の本を多く読んでいます。
出来るだけ音読していますが、こんなにちゃんと声に出して読むのは高校生のときの英語学習以来かも。先生の勧めで教科書音読丸暗記法を実践しましたが、驚くほど英語力がアップした覚えがあります。暗記が必要だったかどうかわかりませんが、暗記するくらいたくさん読めば自分のものになる、ってことだったのだと思います。
教科書はともかくとして、優れた文学作品を声に出したり、耳から入れたりすると、文豪の言葉が血となり肉となって流れ込んでくる気がします。英語は第2言語なのでどうしても記憶に焼け付きにくいのですが、音で入れると残りやすいように感じます。
※『ユリシーズ』にちなむ過去ブログ→
新オープンのアイルランド文学博物館「Moli」/
『ユリシーズ』に出てくる「カムデン・ストリートのデラハント」
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