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レイシズムは大西洋の向こうを見ずとも探せる

米ミネアポリスのジョージ・フロイドさんの事件を受けて、アイルランドでも2週続けて週末に黒人差別や人種主義への抗議デモが行われました。
アイルランドはレイシズム(人種主義)による差別の事例が比較的少ないと言われてきましたが、だからといって全くないわけでない。それでもアイルランド警察がジョージ・フロイドさんにしたようなことをするとか、そこで誰も止めに入らないとは到底考えられませんし、私自身も人種のマイノリティーとして20年間この国に住んでいますが、心や身体に傷を負うような差別を受けたことはありません。

大坂なおみ選手が「あなたの身に起きてないからといって、何も起きてないということではない」とツイートし、その通りだよね、と思ったものの、どんな事例がアイルランドにあるだろうか、具体的なことを知りたいと…思っていたら、先週末、我がレオ・ヴァラッカー首相(父親がインド人)が国会でこうスピーチしました。
「大西洋の向こうを見なくても、人種主義は探せる。この国でも多くの事例がある」と。

そして昨日のことです。ダブリン市内の私立のセカンダリースクール(中学・高等学校)の卒業生、在校生が校内で受けた人種差別の体験をソーシャルメディアなどで訴え、学校側が調査に乗り出した、とニュースが流れたのです。



差別を受けたという黒人生徒数名が、テレビに顔が出ることを承知で体験を話しています。言葉や態度による嫌がらせを黒人ではない生徒たちから受けた、または、受けている、と。
最後に話した女の子が、顔で笑っているけれど本当は泣いている、と声をつまらせるのを見て、彼女の気持ちがぐさり胸に刺さりました。気にしてないふりを装って明るく振る舞うことほど辛いことはない。
そして、そうかこういうことか、大坂選手やヴァラッカー首相が言ったのは、と腑に落ちたのです。

私は大人になってから自分の意志でこの国に来たので、言われても言い返せるし、私を差別する人がいたら避けることが出来ます。そして、私はアイルランド人ではない。どうしても居心地が悪ければ帰る国がある。
でもこの国でアイルランド人として、ほかのアイルランド人とは違う外見を持って生まれ育った人たちは、まったく異なる体験をしているのだ、と。
私も同じマイノリティーだから…なんて少しでも彼らに境遇を重ね合わせようとしたことを、恥ずかしく、申し訳なく思いました。

この報道でもうひとつ印象的だったのは、抗議があった学校の校長先生の態度。冷静に受け止め、声をあげた生徒に目を覚ますきっかけをくれてありがとう、ちゃんと調べます、と言っていることです。
謝るとか、「私の学校に差別はありません」とかいうくだらない言い訳をする選択肢はそもそもない。起こったことを、気がついた時点で改善する努力をする。出来ることはそれのみ。
アイルランド人は友人関係でもこういう態度を取ることが多く、違うよそれ、あ、そうなんだ、教えてくれてありがとう、ってその時から改めてる。いつも感心し、私もそうありたいと尊敬します。

ヴァラッカー首相は先の国会でのスピーチで、差別の一例としてこういうことがあるとも言いました。肌の色や外観で「この国の言葉が分からない人」と勝手に推測して、ゆっくり話しかける。
これは、インド人の父とアイルランド人の母を持ち、アイルランド人としてこの国で生まれ育った首相自身の体験かもしれません。そういうシーン、外国人と接点のある人には思い当たるのではないでしょうか。相手が英語(またはその国の言語)がわからないと勝手に決めつけて、極端にゆっくり話しかけたり、「ドゥー、ユー、アンダースターンド?」みたいな言い方する人。
私も経験あります。でもそういうとき、相手は最初から私の英語を聞こうとしていない。肌の色を見て、言葉が通じないと決めつけているのです。

そういえば、映画『シングストリート』(過去ブログ→シング・ストリートは実在します!…ロケ地いろいろ)でそういうシーンがありました。黒人の男の子をバンドメンバーに勧誘しに行って…。
まああれは、80年代の外国人がとても少なかった時代のアイルランドの「あるある」ネタで、「オレたち昔、無知だったよなあ」というある種のアイロニーだから笑いを誘うわけですが、あれと同じことが2020年にも横行しているなら、シャレにも何もなりません。

それでも子どもやティーンエージャーは社会経験が少なく、未熟で発展途上なわけですから、まだ救いがあると思う。彼らは成長の過程にあるわけですから。
(またまた昭和でスミマセンが、かつて『金八先生2』で言ってましたよね。彼らは間違うんです、未熟だから間違うんです、間違ったら違うと繰り返し教えるのが教育なんです!って)
しかし、肌の色や国籍の違いなんて「違う」という事実でしかなくて、人は人としてみんな同じ。それは理屈としてわかっていても、実感していない大人が実は多いのかもしれないと今回の件で思いました。
おそらくそれは異文化の中に投げ出されて初めて体感する感覚なのかもしれず、「違う」人と会って話したり、自分が「違う」存在になってみないと感じにくいことかもしれません。私の中にもまだまだ無理解があるし、「違い」を認めて理解するのは簡単ではないこともあるけれど、異文化体験はそれを促すきっかけを作る大きな教育だと思います。

今回の事件は「Black Lives Matters」を越え、社会に根深く存在する身近な差別や偏見をあらためて掘り起こしています。
新型コロナ禍でのさまさまな不安や生きにくさ、ソーシャルメディアの誹謗中傷なども時を同じくしてクローズアップされていることに、何か偶然ではないものを感じずにはいられません。

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観光客もよく訪れるベルファーストのインターナショナル・ウォールにジョージ・フロイドさんが描かれました。3人の警官の制服を着た人が「見ざる言わざる聞かざる」になっています…(写真はBelfast marks Black Lives Matter movement with new mural of George Floyd. RTE Newsより)

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Author:naokoguide
アイルランド公認ナショナル・ツアーガイド。長野県上田市出身、2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。

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