7週間にわたるロックダウンも終わりに向けてカウントダウン、いよいよ最後の週が始まります。予定通り18日から解除への第一歩を歩み出せるよう、最後の「Stay at Home」が強調されると同時に、ソーシャル・ディスタンスを維持してのビジネス再開の準備も着々と進められています。
フェーズ1で再開するのはガーデンセンター、ホームセンター、ゴルフ場など。握手禁止、体温テストの導入など、「ニュー・ノーマル」のガイドラインも示され始めました。
そんな中、一昨日に発表された大ニュース。今年度の高等学校卒業資格(リービング・サート)試験の中止が決定されました。
アイルランドでは日本で行われているような大学ごとの入試システムはなく、全国一斉のこの試験の評価が志望校に送られ、大学側はそれを見て学生の受け入れの可否を通達します。
試験は通常6月に行われますが、今年はウィルスが落ち着くのを待って、7月29日以降に延期…とされていました。ただ、ソーシャル・ディスタンスを維持して試験が行えるのか疑問視されており、対象となるセカンダリースクール6年生(日本での高校3年生に相当)はみな、試験はどうなるの~と不確かな状況下に置かれていたのです。
結局、試験の代わりに、高校の先生が学内での成績をもとに評価をつけることに。パーフェクトな解決とは言えないが、今の状況下で出来る最善の策はこれです、2020年度の大学入学がなくなることだけは避けたいので…という発表でした。政府にとっても非常に難しい決断だったことでしょう。
評価をつける先生たちは大変。夏休み返上で作業するのでしょうか。方法についての細かいガイドラインは今後詰めていくことになるようです。
受け取った評価に納得がいかない場合は、再評価を求めることは出来ないものの、理由を開示してもらうことは出来るそう。
また、どうしても試験で評価して欲しい場合はそれも可能ですが、安全に試験が行えるようになるまで待つことになり、9月からの入学には間に合わなくなります。
ニュースではさかんに、発表を聞いた6年生(日本の高3生)たちの反応を取り上げていました。おおむね納得しており、試験があるのかないのかがはっきりしたことに安堵しているよう。
100%フェアとは言えないがこの状況下ではこれが最善だと思う、感染拡大のリスクを冒して試験をするのはよくないのでこれで良かった、ギリギリまで引っ張らずここで政府が決断してくれてよかった、9月から新しい進路を進めることがわかりほっとした…など、みな冷静かつ前向きで感心しました。
今大事なことは、彼らの健康と将来。政府が重要視したのはそこで、それをしっかり受け止めているようでした。
そのほか今週の新型コロナ関連のニュースとしては、パンデミック失業給付金の支給延長。
現行の週350ユーロの給付は、当初12週間まで補償されていましたが、それですと6月で打ち切りになってしまうので、取り合えずはその後も継続して支給されるそうです。(支給額が変わるかもしれない…という話もあり)
失業率はパンデミック以前の5%弱からいっきに20%越えのようですが、自分も完全失業状態ですからよくわかるのですが、今のムードとしては、取り合えず嵐が過ぎるのを待ち、晴れ間がのぞいた時にはバウンスするぞ!…といった感じ。悲観しても始まらない、といったところでしょうか。
PCR検査も今週から1日12000件まで可能になり、それまではキャパが足りず、高齢者、疾患のある人、医療従事者、介護施設入居者など優先、それ以外の人は3つの症状(熱、咳、呼吸困難)を満たしていないと検査してもらうのが難しかったですが、今は症状がひとつでもあれば検査してもらえるようです。
ハリス保険大臣はこれでもまだ足りないと言っているので、徐々に市中に人が出ていくにあたり、まだまだ検査を拡大していくよう。
ちなみにアイルランド政府は
2月の総選挙が大荒れし、どの政党も過半数の議席を取れず、いまだ新政府樹立に向けての連立協議中。次の首相が決まらないままパンデミックに突中してしまっため、取り合えず、ヴァラッカー首相が「ケアテイカー(代理)」首相として暫定的に職務を続行している状態です。
数週間前に、ライバル関係にあった2大政党フィネ・ゲール(現政党)とフィナ・フォールがアイルランドの歴史上初めて連立協定を結び、手を取り合うことが決まりました。それでもまだ議席数が足りないので野党からもう一党加わらねばならず、今、グリーン・パーティー(緑の党)と話し合いを進めているようです。
次の政府は新型コロナ収束と、経済不況に立ち向かう重要な時期を率いていくことになるので、ヴァラッカー首相は「4~5年持続可能な政府を」と慎重。来月には決定を…と言っています。首相はローテーションで、などという話もありますが、どうやらまずはフィナ・フォール党首のコーク出身のミホール・マーティンさんが新首相になるようです。
彼は地方選挙の応援で、地元議員さんと一緒にうちに来たことがあります。玄関扉をあけたらミホール・マーティンがいたのでびっくりしました。(笑)
ヴァラッカー首相とその政権は、このパンデミック禍で国民の心に真摯に寄り添い、迅速かつ明確に危機管理の舵を取り続けています。支持率は選挙前より高くなっているようで、ここで交代…というのもなんだか残念な気がしなくもないですが、個人的には肩の荷を少しおろしてひと休みして欲しい気も。ヴァラッカー首相もハリス大臣も今はアドレナリンがバンバン出ているでしょうが、新政府になって役職が変わり、景色が変わったらどっと疲れが出るかもしれませんし。
ミホール・マーティンさんはベテラン政治家で、首相になる気まんまん…って感じですから、それもいいでしょう。
いずれにしても、政府も国民も少しずつ前に進んでいます。気持ちも、行動も。
アイルランド人は地に足がついていると言ったらいいのでしょうか、モノゴトは常に変化するもの…と自然に受け入れ、あとはでんと構えてタイミングを待つ。何ごとにおいても、そんなところのある人たちです。
今起こっている現実を受け入れる、そして、前へ進む。試験がなくなってしまったティーンエージャーたちの前向きな様子を見て、行く手に希望を感じました。

昨日、ジョギング途中の公園にて。花が散った八重桜の木の下でごろんと横になり、しばしそよ風に吹かれて過ごしました
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コメント
fairy
私は在住23年目のベテラン!の域ですが、3人の娘の子育てに人生を捧げ(笑)あっという間です。直子さんのような日本人の方がいると知り(ガイドのお仕事など)感激をしました。
我が家は次女が受験生でとてもタイムリーな記事でした。本人は複雑な心境で、予想スコアが出るまでは何も出来ないので少しリラックスし、勉強もある程度続けるそうです。
模擬試験の後から少しでもグレードを上げるために頑張って来ていたので複雑ですよね。
2年前の長女の受験でその大変さに驚きました。こんなに勉強をするのか。。。。と(エスカレーター式の学校で受験もしていない自分には驚きでした。汗)でも第一希望への入学が叶い、晴れ晴れしていました。が、大学入学後はもっと勉強が大変です!
コロナ騒ぎで日常がガラッと変わりましたが、改めて目の前のささやかな事を大切に思うこと、感謝する事に気づけたのは幸いでしょうか。
直子さんもくれぐれもお気をつけて下さいね。
長文大変失礼しました!
2020/05/13 URL 編集
naokoguide
私がうかうか遊んでいる間に、3人のお子さんを立派に育て上げられ、素晴らしいと思います。人間をつくり育てあげるほど尊い仕事はほかにないと思っています。
お嬢さんが受験生でいらっしゃるんですね。私の周囲の友人たちは子どもがまだ小さい人が多く、受験生本人や受験生を持つ親御さんの様子はニュースなどメディアを通して知るのみだったので、貴重なコメントをいただきありがたいです。
リービングサートの学年を教えている先生が友人にいて、中止のニュースの数日前に話したとき、モックでうまくいかなった子の指導をしていると言っていました。本番で発揮できないままに終わったことは、先生も生徒も悔しいでしょうね。
fairyさんのお嬢さんのように、試験がなくなっても勉強は続ける…とテレビのインタビューに答えてた子がやはりいて、そういう心境なのね、と興味深く思いました。
こちらの子たちはみんな冷静で大人だなあ、と勇気づけられました。
こちらは大学に入学してからも、勉強がハードみたいですね。今やっているドラマ「Normal People」でも、トリニティーの英文科に入ったコネル君がすごく勉強してますよね(笑)。意見言わなきゃいけない場面でなかなか言えなくて落ち込んだり…
長々とすみません。私は今回の新型コロナ騒ぎでは失ったものも多いけど、得たもの、気づかされたことも多かったように感じています。
fairyさんもどうぞお気をつけてお過ごしください。今後ともどうぞよろしくお願いいたします!
2020/05/13 URL 編集
fairy
子育てに対するお言葉本当に嬉しく励まされます。涙
そんなドラマがあるとは知りませんでした!
偶然にも長女がトリニティーで物理を専攻しているのですが、彼女はドラマは見ていないけれど大学から撮影のお知らせがあったので知っていたそうです。
次女は全部見たそうです。(受験生なのに。笑)
周りから聞いてはいましたが、アイルランドは子供がセカンダリーに入ると、学校の送迎の他、習い事や遊びにと親がタクシーの運転手並みに忙しくなるのは本当で(郊外在住なので)今回のロックダウンで運転がなくなったので、ゆっくりドラマなども見たいです。高校生くらいからは夜遊びのお迎えも本当に多かったです!笑
直子さんのブログもさかのぼってゆっくり拝見したいです。過去記事へのコメントはご迷惑ではないでしょうか?
2020/05/13 URL 編集
naokoguide
トリニティーの学生さんにはやはり事前に伝達があったんですね。
私は仕事でいつもキャンパス内に出入りしているので、あーここも、あそこも…って出てくるたびに嬉しかったですが、授業の様子などは見たことがなかったので興味津々でした。(フィクションですが、かなりリアルな感じらしいので)
そうですね、こちらのお母さんたちは送り迎え、本当に大変ですよね。お子さんが多いとスケジュールも複雑で。
過去のブログへのコメントも、もちろん大歓迎です。嬉しいです、ぜひぜひ♪
2020/05/14 URL 編集