『赤毛のアン』のお友達とのオンライン読書会も早くも3回目となり、東京、神奈川、静岡、名古屋、高崎、そしてダブリンの私の計8名がオンライン上に集い、なんとも心躍る2時間を過ごしました。

今回のお題は、アンシリーズ第8作の『虹の谷のアン(Rainbow Valley)』。手持ちの古い新潮文庫は省略部分が多いので、全訳の改訂版を電子書籍で購入して読みました。黄色いバラは数日前に咲いたシャーロット。隣りのネコがジャンプして枝を折ったので泣く泣く室内で咲かせましたが、かぐわしい香りを楽しみながら読書が出来てかえって良かったかも
11歳でグリンゲイブルズにやってきたアンも40代前半となり、6人の子のお母さん。賢く物分かりのいい母親として要所要所に存在を示すものの、物語の中心はアンの子どもたち世代です。ご近所に越してきた牧師館の子どもたちと共に、周囲の大人を巻き込んで繰り広げられるさまざまなエピソードが時に痛快で、時にいじらしく、大笑いしたり、胸をきゅんとさせたりしながら、モンゴメリ作品の面白さを多いに味わったのでした。
読書会が素晴らしいのは、共感したり、気づかされたりすること。
誰かが「ここに感動した」と言えば、「私も!」だったり、「そんな場面あったかしら?」だったり。「そういう見方もあるのねぇ」ということもあるし、翻訳や時代背景から生じる疑問点が提示されて、後日それを調べ合う楽しみも。
そして、子どもの頃から繰り返し読んでいるのに、未だに新しい発見もあるのです。
今日はモンゴメリ作品にちらほら登場する「日本」が話題となりました。マリコちゃんがモンゴメリ作品に見る神智学についての書に日本との関連についての記述があり、モンゴメリが牧師の妻という立場でありながら、アミニズム信仰に傾倒していたことが示唆されていると教えてくれました。
私のここ数年のテーマは「モンゴメリ作品とケルト」。ケルトもアミニズムですから、その点で興味深い話でした。
海外の研究者の中には、『源氏物語』の自然描写や自然を通しての感情表現に、モンゴメリ作品との共通点を見出す人もいるそうです。ちょうど一昨日のブログにコメントをくださったSHIGEさんが『源氏物語』のことをおっしゃっられたばかりでしたので、これは何かの啓示かも、この機会に通読してみようか…なんてことも思いました。
ほかのアン・シリーズ同様、『虹の谷…』にも心に残る言葉がたくさんあります。今の私の心境にぴったりきたのは、アン一家が住むイングルサイドの忠実なる住み込みお手伝いさんスーザンを描写したこの一文でしょうか。
彼女は物事がよくなるようにと自分に出来る範囲のことには努力したけれども、あとのことは心静かに、大いなる力にお任せした。(第26章)

今回も物語の中のおやつを作ってみました。『虹の谷…』には直接出てはきませんが、イングルサイドでスーザンが子どもたちの朝食に作った(と前作『炉辺荘(イングルサイド)のアン』に書いてある)マフィン。今回も
テリー神川さんの本のレシピで、チェリーはレシピ外。甘さ控えめで、アイルランドで食べるマフィンとスコーンの中間くらいの食感。だからおやつというより朝食用なんだ、って!ことがよくわかりました
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コメント
アンナム
読書会の醍醐味を味わいました。
心に響いた箇所は沢山ありましたが、一番はスーザンの人となりの描写で、
「ものごとがよくなるように自分に出来る範囲のことはしたけれどもあとのことは心静かに大いなる力にお任せした」というところでした。ナオコさんも同じ箇所を思っていらしたのですね。うれしいわ、同感です!
発言しようとメモしていたのですが、タイミングつかめず、言いそびれてしまいました。
この文章の前に「つまらない人間愛などはちっとも気にしなかった。」とありますね。でもせっせとフェイスに靴下を編んであげています。スーザン好きだわ!
2020/05/04 URL 編集
naokoguide
私もメモしていただけれど、言いそびれてしまいました。「つまらない人間愛などは…」っていうひと言は、ちょっと難しいな、って思ってしまいます。その心境になるにはまだまだ人生積まないとならないのねー、って。(笑)
次回がすでに待ち遠しいです!
2020/05/04 URL 編集
アンナム
黙って人のために尽くす、これはキリスト教の教えにもあるのでモンゴメリはきっとこのことを言いたかったのかな、と思いました。本当の答えは私も
まだまだ人生を積んで自分を育てないと得られないです、ね。
2020/05/04 URL 編集
naokoguide
そういうことですね、ちょっとわかった気がします。
この時スーザンはひたすらフェイスの靴下を編んでますものね。それがスーザンの人間愛。
黙って人のために尽くす…ってアンナムさんの言葉で、ちょっと違うかもしれないけど、ミニーメイが病気になったとダイアナが言いに来たとき、無言で表へ出て行って医者探しに馬車を駆り出したマシューの姿が浮かびました。ちょうどアニメを見たばかりだからかな(笑)
2020/05/04 URL 編集
miwako
実は私も聞きそびれたことがあります。
旧訳に無く、新訳に登場したメアリー・ヴァンスのフルネーム。ミドルネームの羅列に何か意味があるのかしら?と思って。特に宗教的な感じもしないし、貴族の名前は長いから、そんな雰囲気を出しただけとも思うし。かつてのアンが「コーデリアと呼んで下さい」と言ったエピソードに近いと言えば近いかな?
なんの一行だったのかナゾです。
聞けばスコットランド系とかアイルランド系とかわかるようなミドルネームなのでしょうか?メアリーが登場してすぐの場面です。外国人お名前に多く接しているnaokoguideさん、何かひらめくものがありますか?
2020/05/05 URL 編集
naokoguide
メアリー・マーサ・ルシラ・ムーア・ボール・ヴァンス(Mary Martha Lucilla Moore Ball Vance)…長いっ!
こちらの人って、みんなミドルネームがあって、おじいちゃんとか、おばあちゃんなどご先祖からももらう人が多い。普段は名前+苗字だけ使ってる場合がほとんどだから、パスポートとか見て、あなたってホントはこんな名前だったの!?って思うことも。メアリー・ヴァンスほどたくさんある人は今は見ないけど(笑)
たくさんミドル・ネームがあるってことは、メアリーが生まれた時に大事な子で、子孫に名を継いで残されたいような名誉ある親族がたくさんいた、生まれはいいのよ、あたいは!ってことかなって思いました。
貴族の名前が長いのもそういうことよね。テリュース・G・グランチェスター(Gのほかにもミドルネームあったかもね)だけと、キャンディはみなしごだからキャンディスだけだものね・笑(色が白いから孤児院のシスターがホワイトってつけたのよね)
メアリーの名の中で、出所の特徴がわかるのはムーアかな。これはアイルランド系の苗字です。
最初の3つ、メアリー・マーサ・ルシラはファーストネームで、全部聖人の名で今となってはちょっと古めかしい名。花子さん的な。メアリーの先祖にはアイルランド移民がいたのかも、ですね!
楽しい話題をありがとう、miwakoちゃん!
2020/05/05 URL 編集
miwako
メアリー・ヴァンスは、1つ1つの名前についてもあるだろうけど、まずはミドルネームの長さを言いたかった!ということであれば、確かに前後の文面からも納得、スッキリ。あんなに長いのに説明も無くあっさり通過しているあたり、当時は長い名前人が結構いたのかしら(笑)
貴重なご意見、考察をありがとうございました。
虹の谷、新訳の登場で思っていた以上に面白い作品と感じました。良かった、良かった。
では、また読書会で。
2020/05/06 URL 編集
naokoguide
私、疑問点を見つけるのがすごくヘタなの。いろんなことに対して、あれ?ってあんまり思わないみたいで、質問は?って言われても、いつもない。誰かに言われて、そういうえば疑問よね、って気づくのだけど(笑)
なので、読書会であれ?って思ったことをみんなが言ってくれるのが、とても新鮮でありがたいです。
そこから世界が広がって本当に楽しいわねー。こちらこそありがとうございました。
次回も楽しみ♪
2020/05/06 URL 編集
Yama
コロナ籠りをしている私、夜な夜なひとり読書会を開いています。隅っこをつついてみてなるほど、と思ってみたり、ああそうだったのか、と納得してみたり。
すこし聞いてくださいますか? まず『アン娘リラ』について。
モンゴメリの日記は、その時代の社会を知る貴重な情報源と考えられますね。同じように『アンの娘リラ』は戦争記録文学として、さらに庶民の暮らしの記録として読むとそこに多様な情報が盛り込まれていることに気づきます。
記録にありました。
「およそ100年前、世界的感染症パンデミック・スペイン風邪が流行した。全世界の人口の半分近くが感染し、死者は5000万人から8000千万人、統計によっては1億人ともいわれている。1918年、アメリカ・カンザス州陸軍基地で始まった流行は、春には第一次世界大戦の激戦地西部戦線まで到達し、夏には欧州全体に広がった。秋以降は第2波となってパンデミックとなった。」(罹患者、死亡者数には各論あり)
『アンの娘リラ』の内容は1914年6月に始まり終章は1919年6月。
第一次世界大戦は1914年7月28日から1918年11月11日まで。
スペイン風邪は1918年3月から数年にわたり第2波第3波と続いている。
『アンの娘リラ』のなかにスペイン風邪の記述があるかどうか、これが主な目的でした。
数度読み返してみましたが、当時世界中に蔓延し、大戦の早期決着の遠因にもなった「スペイン風邪」についての言及はありません。「熱病にかかれば免疫ができる」、「消毒した匙で食事を与える」、「幼児に当たりかまわずキスすることは衛生的でない」といった表現はありましたが。
第一次世界大戦中には戦士の士気高揚のため、スペイン風邪についての情報は軍の検閲により最小限に抑えられた事実を忘れていました。国民の一番の関心事は、第一次世界大戦の戦況に向けられていて、中立国スペインにおいてのみ伝染病の影響が自由に報道されたことで「スペイン風邪」という呼称が広まったことも。
それと、日本でもかつてそうでしたが、闘って死ぬのではなくて戦場で病死することは、あまり名誉なことではないという風潮もあったかもしれません。
ところが、モンゴメリ自身がスペイン風邪に悲しい思い出を持つことからあえて内容に入れなかったという見方もあるようです。
牧師館の息子も、アンの息子も、この20年後に来る第二次世界大戦に参戦したのか。こういう悲しい疑問も湧いてきました。
そして次の夜、虹の谷へ遊びに行くと。こんなシーンがありました。
ここまでくるとクイズですけどね。
孤児のメアリが、牧師館の子供たちと虹の谷で遊ぶ場面があります。
「あたいがやろうとさえ思えば何一つできないってことはなかったんだからね」とメアリは折さえあれば自慢するのだった。ときわ木の葉で袋をこしらえることも子どもたちに教えたし、・・・・・虹の谷にユーカリを摘みにいけば、メアリが一番大きいのをたくさん摘んでは噛んで、それを自慢にした。
『虹の谷のアン』 第6章 メアリ牧師館にとどまる もちろん村岡訳」
Never struck anything yet I couldn’t do if I put my mind to it,” shedeclared. Mary seldom lost a chance of tooting her own horn. She taughtthem how to make “blow-bags” out of the thick leaves of the “live-forever” that flourished in the old Bailey garden, she initiated them into the tooth some qualities of the “sours” that grew in the niches of thegraveyard dyke, and she could make the most wonderful shadow pictures onthe walls with her long, flexible fingers. And when they all went pickinggum in Rainbow Valley Mary always got “the biggest chew” and bragged aboutit. There were times when they hated her and times when they loved her.But at all times they found her interesting.
この how to make “blow-bags” out of the thick leaves of the “live-forever”
これ、どんな遊びか、分かります?
今回のひとり読書会でこの部分が解読できたのです。子供のころを思い出し暗闇のなかで笑ってしまいました。
また、植物オタクの興味はこんなところにも。
1911年、新婚旅行の旅日記にブルーベルの記述があります。その花はHarebellであると確認できました。しかし1911年8月20日の日記の中に、「a little blue flower 」があるのですが、これがどの花なのか、トロントのYさんにも手伝っていただきましたが、わかりません。英語を母語とする人の特有の感性があるのか?とも考えてみましたが、いまや「分からないことを楽しもう」という心境になりつつあるのです。
守られている状況にあることを感謝しつつ。
2020/05/11 URL 編集
naokoguide
次の読書会が『リラ』なので今日から読み始めるところです。スペイン風邪については、私も興味を持っていたところでした。
これまでの読書会では特に話題にはならなかたのですが、『炉辺荘』『虹の谷』いずれにも登場人物が肺炎にかかるシーンは出てきますよね。
ギルもアンもかかるし、牧師館のカールも。肺炎は当時は命取りで、回復に時間を要したことがうかがわれます。この時代は風邪とインフルエンザの区別がついていなかったといいますし、ちょっとしたことで重症化して生死をさまようことが多々あったことでしょう。
blow-bagsについても話題にはならず、私もそのまま読み流していました。
モードが新婚旅行で見た青い花について。日記のその部分を読み返してみました。イングランドとスコットランドとの境界線にあるノーハム城に咲いていた、モードも見たことのない青い花。
8月下旬にこちらでよく見られる青い花…ということで思いつくのはスカビオサです。
→http://naokoguide.com/blog-entry-2283.html
ブルーベルもヘアベルも時期が合いませんし、青い花はそんなに多くない。アイルランドもその辺りと植生はそれほど変わらないでしょうから、モードが初めて見たのはこれかなあ、なんて想像しました。
いずれにしても、こういうことをいろいろ考えるのは楽しいですね。
Yamaさんの『リラ』と第一次大戦との時代考証は、次回の読書会で皆さんにお知らせしますね!
興味深い話題をありがとうございます。
2020/05/11 URL 編集
Yama
葉は厚く、葉の表面を押しながら触ると、層状になっている表面の皮と葉の内部とが分かれて袋状になります。それを手の平に置いて叩くと「パン」と音がする。これがblow-bags の遊び。
子供のころ、左手の親指と人差し指をゆるく丸めた上に、葛の若葉や朝顔の葉を置き、くぼみに少し押し込んで穴を作り、右手で叩いて遊びませんでしたか。
うまくいくと「パン!」。
>8月下旬にこちらでよく見られる青い花…ということで思いつくのはスカビオサです。
あれこれ図鑑をめくって探しましたが、咲く時期、花色と姿などからモンゴメリが惹かれそうな花ということで、私も「スカビオサ・マツムシソウ・西洋マツムシソウ」に賛成です。しかし、それを確かめようもありません。
ここにしつこく書きました。
http://kemanso.sakura.ne.jp/anne-bluebell.htm
コメントへのお返事をいただいて、ますますアイルランドへ行きたくなります。
その時は「エバラの焼き肉のたれ」を持っていきますね。甘口、辛口のどちらがお好み?
2020/05/12 URL 編集
naokoguide
それにしても、live-foreverがそういう葉っぱだったとは!
Yamaさんのお書きになったのを読んで、チコリの花が一面に咲き乱れている様子を想像してみました。こちらでは見かけませんが、ブリテン島には咲くのかもしれませんし(植生は似ているものの、植物の種類はアイルランド島よりずっと多いですから)、PEIn咲くのであればなおさら。
(前回のお返事で、キャヴェンディッシュでしか見ない、というのを、どこにも見ない、と読み間違えていました)
8月20日頃にノーハム・キャッスルへ行って確かめるしかない!という気になってきました。パンデミックが収束したら実行したいことリストに入れます。
エバラ焼肉のたれ!もうずい分食べてないので、以前は甘口好みだったけれど、大人になったので辛口でもいけるかも(笑)
Yamaさんとアイルランドでお会い出来たら夢のようです♪
2020/05/12 URL 編集