パリ在住の作家の辻仁成さんのブログを愛読しています。
辻さんの小説はお恥ずかしながらあまり読んだことがないのですが、毎日つづられる「滞仏日記」は、シングルファーザーとして異国で生きる辻さんの頑張りやお人柄、息子さんとの触れ合いのドキュメントがとても微笑ましいのです。海外在住邦人として共感することも多く、特に新型コロナ騒動が始まってからは、アイルランドに先んじて感染拡大したフランスの様子、そこから見える日本や世界の様子がひしひしと伝わってきます。
そして、本日の辻さんの日記ですが…。海外から日本へ帰国した人たちを待ち受ける現状に驚愕&怒り心頭。ぜひ皆さんに読んでいただきたい。
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滞仏日記「あの立花君、羽鳥慎一モーニングショー出演、9分」 ( Posted on 2020/04/02)
空港の検疫でPCR検査のため人混みで何時間も待たされ、あげくの果てに結果が出るまで空港のベンチで2日間も待たされるって、どういうこと?
海外からウィルスが持ち込まれないよう空港で検査して、その後14日間隔離するというのは正しいことでしょうが、こんなやり方をしていたら、細心の注意を払ってウィルス対策して帰ってきた人もここで感染しちゃうよ!
この4月2日放送の「羽鳥慎一モーニングショー」ですが、私も実際に見て報道内容を確認しました。(YouTubeに動画があがっていました)
そして、何より心配になったのが、先ごろアイルランドより帰国し、3月30日に成田空港に到着しているはずの友人Aさんの安否。Aさんはダブリンでの数か月の滞在予定を不本意ながら切り上げて、航空会社が次々フライトを欠航していく中、キャンセルされてまた取り直して…と苦労して帰国便を確保。それこそインタビューされた立花さんやほかの皆さん同様、「命からがら」国へ帰ったのです。
そのAさんのことを思うといたたまれず、安否の確認をするとともに、「辻さんのブログにこう書かれているけど大丈夫でしたか?」と聞いてみました。
Aさんから本日いただいた返信メールの抜粋を、ご本人の許可を得て掲載させていただきます。
まさしく、辻さんのブログが物語ってくれています!!!
私は検疫で約7時間待たされ、ようやく政府指定のホテルに移動出来たので、まだマシだったのかもしれないとブログを読んで思いました…
ちなみにホテルでは部屋から一歩も出られず、ドア前に運ばれる病院食のようなものを食べられるのみ。
そしてとにかくこっちから聞かないと先の説明は何もして貰えず、最終的にはここのホテルで結果を待って、もし陽性の場合は症状の有無に関わらず医療機関送りになる、その詳細は伝えられませんと言われました(クルーズ船の際にそれで関西の方が山形に送られた例があったとか)。
こちらの話しは何も聞いて貰えず、僕たちだって24時間体制で働いてるんです!と向こうサイドの疲労困憊をアピールされます。
ちなみに、結果が出る前に迎えやレンタカーで帰っている方は、陽性でも症状が出ていなければ自己隔離で良いとの事でした、、
私はその後迎えに来て貰えたので良かったのですが、検査結果は結局3日たった今朝にこちらから検疫所に電話をし、ようやく教えて貰えた次第です。
幸い、陰性でした!
ただ(成田空港で人混みに)巻き込まれている間に感染していないか、これから2週間不安なのも事実です。
検査結果が分からないと宿泊させてくれない施設も増えてきていまして、海外帰国者にはとても冷たい状況です。ほんとに辻さんが書いていた「日本を代表し、海外で頑張っている人たちであって、決して犯罪者ではない。」
泣きそうになりました。。
こちらは言われた事をしっかり守ってなるべく人様に迷惑をかけないようにしているのに、海外帰国者が感染を広めているという雰囲気なのがとても残念です。それよりも、日本国内の対応の問題かと思うので…
日本に帰国して改めて、アイルランドの対応は迅速で、住人も皆一丸となって頑張っているなと感じました。
これを読んで、あまりの悔しさに涙が出ました。
何がって、政府の方針もですが、何と言いましょうか、優しさとか思いやりとか一切ない。日本って、日本人って、こんなふうでしたか?
Aさんは今、自己隔離のため14日間、ご自身が予約した宿泊施設に滞在しています。何の補助もなく、自費で。
アイルランドも海外からの帰国者は14日間自己隔離しなくてはなりませんが、症状がない場合は検査は行われず、自宅へ戻って家にこもります。
アイルランドは検査キットが足りておらず、政府は国内42か所の検査場を準備し1日5000件の検査を目標にしていますが、現状では1日1500件しか出来ていません。症状のない人にまでキットを使わせるわけにはいかないのです。
日本は空港でそんなに使い果たしちゃって大丈夫なんでしょうか。もっと検査が必要な人がこれからたくさん出てくると思うのですが。
ちなみにアイルランド政府は、海外に(居住ではなく一時的に)滞在中のアイルランド人に「安全のために帰国しましょう」と呼びかけ、外務省や各国の駐アイルランド大使館が動き、出来る限り帰国の手助けをしています。
数日前ペルーから135人のアイルランド人ツーリスト(多くが若いバックパッカー)がチャーター便で無事に帰国しました。旅先で劣悪な状況で隔離されてしまい、帰国するにもフライトが法外な値段で購入することが出来ない、助けて!とSNSを通じて発信した彼らを、政府は見捨てませんでした。
一律400ユーロでチャーター便乗せ、無事にダブリン空港へ到着。家族はどんなに安心したことでしょう。安否を気遣いはすれど、彼らを責めるような風潮は一切ありません。
日本も初めの頃、武漢にいた日本人を無料チャーター便で帰国させたことは知っています。
国の規模も違いますし、単純に比較してあれこれ言うつもりはありませんが、少なくともアイルランドは、このパンデミックで自国民を誰ひとりとして置き去りにしません!と政府が強く断言してくれています。私のような外国人の居住者にも扱いは同じです。
経済面はもちろん、心のケアも具体的に行ってくれています。大統領、首相、大臣から毎日のように心強いメッセージが発信され、外に出られない高齢者のために、警察や郵便局が御用聞きをしています。持病があって全く外に出ることが出来ない子どもの誕生日にパトカーや消防車が行列して家を訪れ、2メートル以上離れたところから「ハッピーバースデー♪」を大熱唱するサプライズをしたり。
パンデミック失業給付金も今週から支給が始まり、28万人がすでに給付を受けています。私もその一人です。
そういう政府の真摯な対応が国民を団結させ、不安も不便もあるけれど、それ以上に優しさや思いやりで満たされた日々です。
これまでも日本政府の煮え切らない対応に絶望と脱力のし通しでしたが、今日という今日はそれも通り越して怒りが燃え上がりました。
辻さんの言葉をお借りして、私も叫びたい。
「マスク二枚は有難いけれど、そこじゃないんだよ!」

ジョギングで行く公園のソーシャル・ディスタンス奨励サイン。こちらはマスクではなく、これがルール。そもそもマスクの習慣のないアイルランドでは、マスクは具合が悪くなった人がするもの。それでも予防のためにしたいのであれば、装着時やずれを直すという理由で顔に触れないようにするなど、正しい使い方をしないとより危険ですよ、と専門家がラジオで言っていました…
※アイルランドにおける新型コロナウィルス感染状況は、最新情報がこちらで確認できます
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COVID-19 National Summary
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