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「ロックダウン」じゃなくて、「ロックイン」しよう!

今日からサマータイムとなり、日の入りが1時間遅くなりました。今、夜8時をまわりましたが、外はまだ明るさが残っています。

アイルランドでは一昨日、より厳しい外出制限が出されましたが、「私の仕事は出勤していいの?」とか「買い物できる店が2キロ以内にないんだけど…」といった疑問や困惑の声が上がり、次の日にフォローアップされました。
在宅勤務対象外の職種がカテゴリー別に具体的にリストアップされ(細かくてスゴイ!)、ヴァラッカー首相が2キロと言ったのは休憩や軽い運動のための外出範囲のことで、食料や必需品の買い物は必要があればそれを越えてもいいんですよ、といったことなど。
あ、それから、一昨日のブログで2キロは道なりなのか半径なのか…と友人スティーヴンと話し合ったことを書きましたが、やはり半径2キロ以内でした。私の主張が正しかったでしょ、スティーヴン…!(笑)

こういう発表を政府が金曜日に行い、週末に疑問点を晴らし、気持ちや行動を整えられるようにしてくれているのはありがたいです。
もしかするとタイミングはただの偶然かもしれませんが、今やヴァラッカー首相を筆頭にアイルランド政府のリーダーシップを全面的に信頼してどこまでもついて行きます!という気持ちになっている私には、すべてがそんなふうにありがたく思えるのです。(おそらくアイルランド人の大多数が同じ気持ちだと思います)

移動や集合をより厳しく制限するため、町の入り口や人の集まりやすい公園にはガーダ(Garda=アイルランド警察)が出て検問を行うようになりました。外出理由を確認したり、公園などへの入園を制限しているようですが、あくまで呼びかけと指導で、懲罰はありません。

私はこの週末、日本の感染者が増えていくことへの懸念と、何が根拠かわからないのですが、この状態は思っているよりずっとずっと長く続くのではないか…という思いにかられ、急に眠れなくなりました。
そうしたら、まるでテレパシーでそれを察知してくれたかのように友達が代わる代わる電話をかけてきてくれて、たくさんおしゃべりして、フェイスタイムしてずいぶん気が晴れました。電話をくれたお友達、ありがとう♪
友人ニーヴがツリー・ハグを勧めてくれたのには笑った。今はハグをしてはいけないので、代わりに木に抱きつくといいそうです!(笑)

この週末の新型コロナ関連の出来事で特筆すべきことは、アイルランドのフラッグキャリア、エアリンガスの民間機が北京へ飛び、医療関係者用のマスクやゴーグルなど防備用具を大量に運んできてくれたこと。
昨日飛び立ち、本日午後ダブリン空港に到着。マスク1100万枚、ゴーグル2300万個、医療用ガウン2400万着が入った段ボール箱を客席いっぱいに積んで帰ってきました。総額2800万ユーロ(約34億円相当)相当。
世界で今、金銀財宝より貴重なものがコレなんですよね。

現在アイルランドでの感染者の約5分の一は医療機関で働く人。最前線にいる医師や看護師の命を守るための策をまず講じて、間もなくやってくるであろう感染ピークに備えようというわけです。
マスク何千万枚ってすごい数に思えますが、これだけでは全然足りないそうで、これを第一号として、数日間のうちに10往復する予定だとか。

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ミッションを成し遂げてダブリン空港に到着し、一躍有名になったセント・ローナン号(エアリンガスはすべての機材にアイルランドの聖人の名がついています)写真はIrish flight bringing PPE from China arrives in Dublin(The Irish Times)より転載


乗客の代わりに客席にマスクや医療用ゴーグルを乗せる日が来るとは…。パイロットはボランティアで名乗りを上げた皆さん。離陸、着陸時にはダブリン空港の管制塔からコックピットへ激励と感謝の特別メッセージが送られ、到着したパイロットたちはレッド・カーペットで迎えられたそうです

感染ピークがいつになるかは予測できませんが、アイルランドでは4月半ばと想定して、医療崩壊を食い止めるための可能な限りの準備が進められています。
私立病院を臨時で国の管理下におき病床数を確保したほか、ダブリン市内のシティーウェスト・ホテルを自宅隔離できない人のための隔離施設として使用することも決まりました。
シティーウェスト・ホテルは日本からの観光グループさんもよく利用しますので、このブログを読んで下さっている方の中には泊まりました、という方もいらっしゃることでしょう。ちょうどこの週末にかけて毎年恒例の観光業界の見本市が行われる予定でしたので、新型コロナがなかったら私もそこにいたはず。感染症の隔離施設になるとは、ほんの数週間前まで誰が予測したでしょう…。

そんなロックダウン中のアイルランドですが、ヴァラッカー首相は「ロックダウン=lockdown(封鎖)」という言葉はあえて使わず、「リストリクションズ=restrictions(制限)」と言っています。
「ロックダウン」というと、多くのアイルランド人は武装したギャングに取り囲まれて建物の中に立てこもる…みたいな、アメリカ映画の過激なワンシーンを連想してしまうようです。暴力や武力から身を守るための強制監禁…といった響きがどうしてもぬぐえないので、ヴァラッカー首相はあえてその言葉を使いたくないのだと思う。
そこには、権力を行使して人々を強制的に従わせるのではなく、愛情や思いやりから自粛して欲しい、この国のリーダーとしてそれを成し遂げなければならない、という大きなメッセージと信念が感じられます。

SNSなどでは、「アイルランドはロックダウンじゃなくて、ロックインにしようよ!」と提案する文化人も現れました。
「ロックイン(lock-in)」とは、閉店後のパブで、常連客や仲間うちでこっそり飲み会を続けること。その方が楽しい感じがするし、スリルとユーモアがあってアイルランドらしいでしょ、というわけですね。
友人たちと話していると、パブでおしゃべりしながら飲むのに比べ、自宅でひとりで飲んでいるとついつい飲み過ぎちゃうのよね~という言う人も多く、ジョーク好きの友人ディヴィッドは、(感染者数の曲線グラフの)カーヴを平らにする前に、このままだとウェストがなくなって体の曲線のカーヴが平らになっちゃうかもね…なんて言ってます。
それを聞いて、ふむふむ、確かにアイルランドには「ロックイン」の方がふさわしいなあ、と。

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うちの近所も人気がなくがら~ん。みんな「ロックイン」中…です

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アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドの山下直子です。2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。長野県上田市出身。

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