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20年前の今日、オドリスコルのパリでのハットトリックを偲ぶ

コロナウィルス以外の話題はこの世から一切なくなってしまったのではないかと錯覚されるような日々ですが、今日スマホの画面にランダムに現れたアイリッシュ・タイムズのウェブ・ニュースのヘッドラインを見て、まるでお宝発掘!したかのように心躍りました。
Karaoke on the Champs-Élysées: 20 years on from Brian O’Driscoll’s hat-trick in Paris
(シャンゼリゼ通りでカラオケ、ブライアン・オドリスコルのパリでのハットトリックから20年経って)

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パリのラグビー・スタジアム、スタッド・ドゥ・フランス(Stade de France)で8万人の観客を前にアイルランド国旗をはためかせる若き日のブライアン・オドリスコル選手(写真は上記記事より)

今からちょうど20年前の今日、2000年3月19日。パリで行われたラグビー・シックス・ネーションズの第4節アイルランド対フランス戦で、アイルランドが見事な逆転勝利を成し遂げた時のことを回想した記事です。
アイルランドがフランスに勝利したのは1983年以来17年ぶりで、しかも、アウェイでの勝利は1972年以来28年ぶりという快挙でした。
この年のシックス・ネーションズを境にアイリッシュ・ラグビーは大きく飛躍していくことになるのですが、その立役者となったのが、前年にアイルランド代表に選ばれたばかりの新星ブライアン・オドリスコル(Brian O'Driscoll)でした。

初めてのシックス・ネーションズを戦うオドリスコルは、21歳になったばかり。この対フランス戦でハットトリック(一試合で3回以上のトライを記録すること)を成し遂げてチームを勝利に導き、その後14年にわたる輝かしいキャリアへと駆け出していくことになります。

今のアイルランドの実力からは想像できないかもしれませんが、90年代のアイルランド代表はファイブ・ネーションズ(2000年にイタリアが参加してシックスとなりました)でいつもビリ、またはビリから2番目という戦績の、欧州の強豪から遅れをとるチームでした。
そのアイルランドが浮上し始めたのが、オドリスコル、オガラ、ストリンガーといった、2000年代のアイリッシュ・ラグビーの主格となったスターたちがそろって初登場した、この2000年のシックス・ネーションズだったのです。中でもこのパリの逆転勝利は、後のアイルランドの栄光を予感させる伝説のゲームとして語り継がれることとなります。

私がラグビーを観始める以前の出来事なので、オドリスコルのハットトリックの場面はダイジェストで見たことはあるけれど試合は通して観たことはないなあと思い、YouTubeで探したらすぐに出てきました。
今シーズンはコロナウィルスの影響でシックス・ネーションズが宙に浮いてしまい寂しく思っていたので、早速、20年前の今日という日に思いを馳せてタイムスリップ。
懐かしいスター選手たちの若き日の姿に感激しながら、なんとも素晴らしい80分間を楽しみました!

昨今の試合中止や延期でラグビー・ロスになっている方も多いことでしょう。オフィシャルな映像ではないのでいずれ消去されてしまうかもしれませんが、ご興味のある方のために動画をシェアさせていただきますね。


France 25 Ireland 27 - Six Nations 2000 - full BBC Coverage.

ちなみに全試合観るのは長すぎる…という方は、こちらがオドリスコルのトライにつながる場面ですので、そこだけ観てください!(笑)
①22分~
②55分半~
③73分~

当時のアイルランド代表のキャプテン、キース・ウッド(Keith Wood)も懐かしい。
ユニフォームがぶかぶかなのが、時代を感じさせます。でも、「スクール・ウォーズ」世代の私には、この方がラグビーのイメージとして返ってしっくりきたりして(笑)。

オドリスコルにとっても初シックス・ネーションズでしたが、オドリスコルと並んで銅像になってセント・スティーブンス・グリーン辺りに飾られるべき!と私が常々思っているローナン・オガラ(Ronan O'Gara)様(彼に対してはさまざまな理由から「様」づけ・笑)も、この時まだ23歳。愛すべきスクラム・ハーフのピーター・ストリンガー(Peter Stringer)も同じ歳で、2人ともこのシックス・ネーションズが初キャップでした。
みんな若くて初々しい。ストリンガーなんてまるで子供のよう。

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勝利の瞬間のストリンガー。このあと、キャプテンのキース・ウッドに抱きつくのですが、まるでお父さんと子供のようです(写真はYouTube画面から切り取りました)

フランスはこの4ヶ月前にワールドカップの決勝まで進んだ強豪。そのチームに勝利したアイルランドの喜び方がすごいのです。
みんな無邪気に飛び跳ねて、昨今のプレッシャーいっぱい…といった様子のアイルランド代表たちとは全く違う。勝ってもここまで飛び跳ねて喜ぶかしら、最近の選手たちは?
この頃は追いかける方だったからでしょうか。今のアイルランドは気の毒なことに、勝って当たり前…なのかも。
試合前のアイランズ・コールを歌う姿も清々しく、ハングリーでやる気満々、なんだか微笑ましいですよね。

冒頭のウェブ記事で、この試合をオドリスコルと共にプレイしたロブ・ヘンダーソン(Rob Henderson)選手が当時を回想しています。
オドリスコルの存在感やプレイを「マジック」と称え、彼がすごいのはハットトリックを決めたからだけではない、ボールの行く手を常に読んでそこへ動いている、と絶賛。そのセンスとスタイルは彼のキャリアを通じて変わることはなく、素人の私から見ても常に軽快、巧妙、時には優雅でさえありました。
「この人は天才だ!手に吸盤が、足にエンジンがついている!」と何度も思わされたものです!

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この試合でオドリスコルはトライするたびにハート・マークみたいなポーズを指で作るのですが、地元クロンターフの友達にトライしたらこの合図をすると約束してしていたそう。21歳ですね~、可愛い(笑)

この夜パリで、ヘンダーソン選手はオドリスコルをシャンゼリゼ通りへ連れ出し、カラオケ・カフェで朝まで一緒に飲んで歌ったそうです。ナショナル・ヒーローとなったオドリスコルのことがとっても自慢だったようで、勝利の嬉しさと共に懐かしく回想しています。

あの頃のオドリスコル人気はものすごくて、もしもアイルランドにアンアンみたいな雑誌があったら、「抱かれたい男ナンバー・ワン」に選ばれていたと思う(笑)。彼のサポーターは、「In BOD We Trust」というTシャツを着たりしていました。
「BOD」というのはオドリスコルの名前&苗字の頭文字をとった愛称で、英語の「In GOD We Trust(=我々は神を信じる)」の「GOD(神)」を「BOD」に置き換えて、「我々はオドリスコルを信じる」と、もじったわけですね。
チャーミングで自信に満ち溢れていて、才能も運も自然に彼に引き寄せられていくかのようでした。ここぞという時にトライを決めてチームを勝利に導くのが常で、一種のエンターテインメント性さえ兼ね備えた選手だったと思います。もちろん本人は意識してやっていたはずもなく、天性のスターだったわけですが、プロ・スポーツの権化みたいな人だなあと彼の試合を見るたびに思ったものです。

このスタッド・ドゥ・フランスでのハットトリックで、オドリスコルはその名を世界のラグビー界に知らしめ、スター街道への第一歩を踏み出しました。
そして、この人は本当にスターとして生まれついているのだなあと思ったのは、その14年後、引退試合が奇しくも同じスタジアムでの対フランス戦だったこと。(→アイルランドのシックス・ネイションズ優勝と、オドリスコルの引退
アイルランドは22対20というスコアで激戦を勝ち抜き、この勝利をもってこの年のシックス・ネーションズ優勝。しかも、なんとアウェイでフランスに勝利したのは2000年のあのハットトリックの試合以来だったのです。
まるでオドリスコルなしではスタッド・ドゥ・フランスでは勝てないよ!と言わんばかりの、ラグビーの神様のお膳立てではありませんか。

あの時、「これ以上素晴らしいキャリアの終わり方はない」とオドリスコル本人も言いましたが、彼のラグビー人生そのものがひとつのドラマであり、みんなの夢でした。
こういう選手は100年に一度いるかいないか、この先もなかなか出てはこないでしょうね。

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コメント

hongna

No title
ナオコさん
オドリスコル君の話題ありがとうございます。この翌年にはLionsにも選ばれたのですからやっぱすごいですよね。WorldCupの招致活動でHongKongに来た時に拙い英語で話しかけた私にその10倍以上も話し返してくれた(理解が追いつかず適当な相槌打つのが精一杯でした😰。)ナイスガイでしたよ。
この試合もまあおフランスが勝つんだろうなあと思いながらTVで見ていて童顔の彼がいきなり走り込んで来てトライを3つも決めてハートマークなんて作っちゃうし.....誰だこやつ⁉️って思ったのをちょっと思い出しました。もう20年も前なんですねえ。

ヨーロッパが大変な状況になってしまい、Six NationsはじめChampionsCup、各地域のリーグ戦も延期になり寂しい限りですし、どうしてもいろいろとしんどくなってしまいますが、1日も早く全世界的に完治して単純に好きなことを思いっきり楽しめるようになること祈りましょう‼️

naokoguide

hongnaさんへ
ああ、反応してくださって嬉しい。さすがhongnaさん♪
生オドリスコルと会って話したなんて、本当にうらやましい~(ミーハー・笑)。同じダブリンにいたって会えないのに。

この20年前の試合、リアルタイムで見ておられたんですね。アイルランド買っちゃうなんて、え~?って感じだったでしょうね(笑)
私はオドリスコルが活躍していた時代のアイリッシュ・ラグビーが本当に好きだったので、彼のプレイが心底なつかしいです。意外とキック外しちゃうオガラ、ひょうきん者のストリンガー、この3人が大好きでした。
2000年に彼らがそろってシックスネーションズ初デビューしてたってことがわかり、それが私がアイルランドに住み始めた年で、アイルランドの経済が急成長を見せ始める直前で…ああ、大きな波が来ていたときだったんだなあと、この試合を見ながら感慨深かったです。

それから20年。コロナ・ショックに世界が震撼していますが、これも何かの啓示でしょうかね。長く生きてきて戦争も体験していない私たちにとっては、自制心を試される良い機会かもしれません。アンネ・フランクは2年も隠れ家にいたわけですし…ね。
自宅で静かにしていることが他者の命を尊重することになるのであればたやすいことです。

またアイルランドでご一緒にして、ラグビー談義させていただくのを楽しみにしています。その時は、あんなこともありましたね~って笑って言えますように!

ようはっぱ

ありがとうございます。
貴重な映像を教えてくださってありがとうございます。
全部見ましたー。(^_^)
解説が英語でよくわからなかったのですが、「オガーラ」だけはよく聞こえました。
ルールも今とちょっと違うのかな?
ミスも多いけれど、勢いのある試合で見ていて楽しかったです。

直子さんのブログでよく出てくる選手たちの名前。
たかだか5、6年のキャリアのにわかファンの私は存じ上げない方ばかりですが、相手チーム、フランスの15番は今のフランス代表の若き司令塔のお父ちゃんですかね?
大声援の中での白熱した試合。
やっぱりラグビーはこうでなくちゃ!!と思いながら見ました。
こんな試合風景がごく普通に見れる日が早く来ますように。

naokoguide

Re: ありがとうございます。
ようはっぱさん、
そうか!ヌタマック選手のお父さんですね、フランスの15番。エミール・ヌタマック選手。
調べたら、今大活躍のフランスのフライハーフ、ロマン・ヌタマック選手は1999年生まれなので、この時まだ生後11か月足らず。すごい遺伝子ですねー。そして時代を感じる…

そうなんです、ミスも多いんだけど、元気いっぱい、ドンマイ!って感じすよね。
ルールは私はよくわからないのですが、20年のうちにスタイルもルールもいろいろ変わっているのではって気がします。

ブログ本文でまったく無視してしまって申し訳なかったのですが、3番のジョン・ヘイズ(John Hayes)もこのシックス・ネーションズが初キャップ。ジョン・ヘイズもオドリスコル、オガラ、ストリンガーと共に2009年のアイルランドの61年ぶりのグランドスラムの時のメンバーで、アイルランドのラグビー選手として史上初の100キャップを成し遂げたすごい選手です。シャノン空港で銅像になってます→http://naokoguide.com/blog-entry-3001.html
こんなすごい人を(自分の好み重視で…笑)無視してしまって申し訳なかったです。

非公開コメント

naokoguide

アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドの山下直子です。2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。長野県上田市出身。

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