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トリム・キャッスルと映画『ブレイブハート』

昨年9月にトリム城(Trim Castle, Co. Meath)へ行ったときのことが下書きフォルダーに入ったままになっていたので、加筆してご紹介します。

ダブリンから北西40キロ程のところにあるトリム城は、13世紀築城のアイルランド最大規模のアングロノルマン(イギリス)の城。
普段は全景を外観から見るのみのことが多いのですが、この時はガイド付きツアーでグループの皆さんをご案内し、城内をくまなく見学して、とても楽しかったのです。(写真は2019年9月撮影)

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アングロノルマン貴族ヒュー・ド・レーシー(Hugh de Lacy)と息子ウォルター(Walter de Lacy)が2世代にわたり、半世紀を費やして1224年に完成。城塞がこれだけ見事に残されているものはなかなかありません

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通訳していたため詳しい説明は訳し流してしまい、内部の写真も撮る余裕がありませんでしたが、時代ごとに増築された部分や城の機能がよくわかりました。トップルーフからの長め

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冒頭写真の裏側、城の脇を流れるボイン川の土手より全景を臨む(この写真は2013年8月撮影)

トリム城と言えば公開から25年経った今もなお、映画『ブレイブハート(Breavehear)』撮影時のエピソードの数々が語り継がれています。
スコットランドの独立を目指して戦った歴史上の人物ウィリアム・ウォレスの生涯を描いた、メル・ギブソン主演の1995年公開の映画。作品賞をはじめ5部門でアカデミー賞を受賞した、当時の話題作です。

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写真はBraveheart (1995) IMDbより転載

舞台はスコットランドとイングランドですが、撮影の多くはアイルランドで行われました。トリム城は、ウォレスがイングランド貴族から奪い取ったヨークの城として登場しています。


トリム城の姿を世界に知らしめた、ウォレスとその一味が城を奪う迫力満点のシーン。外壁上部の木造部分、打ち壊される扉は撮影用に取り付けられたもの

昨年9月の見学時も、城のガイドの男性が四半世紀も前の撮影時のエピソードをつい先日のことかのように詳しく話してくれました。
ハリウッドの大作のロケ地となったという栄光はトリムの町の誇りで、今もなお語り継がれているんだなあ、と微笑ましく思ったものです。

ただ、私がこの映画を観たのがあまりに昔すぎて、記憶が忘却の彼方…。ここであのシーンが…と説明してもらっても、まったく思い出せなかったのが残念でした。
戦闘シーンが恐ろしかったことと、イザベラ王女役のフランス人女優ソフィー・マルソーを久々に画面で見て、おぉ~と思ったくらいしか印象にない。アイルランドにまだ来たことのない時代でしたので、ロケ地を意識することもなかったのです。
余談ですが、ソフィー・マルソーは私が子どもだった80年代初期、デビュー作の『ラ・ブーム』でブレイクして、「スクリーン」(っていう洋画雑誌。今もあるのかな?)でたくさん紹介されていました。日本のTVコマーシャルにも出ていて、私もあんな可愛いパリジェンヌになりたい!って憧れたものです(笑)。

そんなことで、今ちょうど時間もあることですし、20年以上ぶりに『ブレイブハート』をアマゾンプライムで観てみました。
いやあ、面白かった!初めは『ゲーム・オヴ・スローンズ』を観ているかのような錯覚におちいりましたが(笑)。
戦闘や残虐なシーンは『ゲーム・オヴ…』のおかげで鍛えられたのか、思ったほど怖くなく見られました。(ウォレスの最期だけはムリ。飛ばしました…)

あらためて観ると、スコットランドもアイルランドと同じくケルト系なので、その点で興味深い場面が多々ありました。
以下に覚え書きとしてあげてみます。

♦森の中の秘密の結婚式のシーン。ケルト十字の傍らで司祭が二人の手と手を布で結ぶ儀式は、アラン諸島のダラ・モロイ司祭がケルト式ウェディングでするのと同じ。司祭はゲール語で祈りの言葉を言ったようですが、「アガス(agus、英語のandの意味)」しか聞き取れなかった。

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モロイ司祭のセレモニーのときの新郎新婦の手と手の写真。過去にコーディネートさせていただいたケルティック・ウェディングより

♦ウォレスの従者に加わったアイルランド人のスティーヴン。はじめはどこか信用ならない奴で、アイルランドはオレの島だから任せろ、なんて言っちゃっていいのかな、このお調子モノが!って思っていたら…。フォルカークの戦いで、イングランドに捨て駒として雇われていたアイルランド歩兵軍が驚きの行動を。スティーヴンの言葉が証明された!
スコットランドとアイルランドはケルト人を先祖とする者同士であり、イングランドを敵とする者同士。敵の敵は味方…に時としてなり得るんですね。
(スコットランド軍が戦闘前にキルトをペラリめくって…というところも、戦いの緊張感を破る爆笑シーン・笑)

♦戦いのとき、ウォレスたちは顔をブルーにぬっています。中世スコットランドでこれが行われていたかどうかは疑問ですが、古代ケルト人の風習にヒントを得た演出と思われます。敵を怖がらせ、威嚇する意図があったようです。

そして、トリム城以外のアイルランドのロケ地についても、せっかくなのでご紹介しておきます。
観ていてわかった場所もありましたが、多くはこちらのサイトなどを参照しました。ストーリーの進行順に羅列してみます。

●エドワード皇太子とイザベラの結婚式のシーン
ダンセイニイ・キャッスルのセント・ニコラス・チャーチ(St. Nicolas Church, Dunsany Castle, Co. Meath)…19~20世紀にかけて作家としても知られたダンセイニ卿の居城内にある15世紀のチャペル

●エジンバラのロバート・ブルースの城
ダンソーリー・キャッスル(Dunsoghly Castle, Co. Dublin)…1450年頃築城のタワーハウス。タワーハウスはアイルランドに数多く残されていますが、オリジナルの小屋組み屋根が現存するのはここだけ。一般公開されていないのが残念

●イザベラが侍女と歩く回廊(後半にも、ひとり幸せにひたって歩くシーンあり)
ベクティブ・アビー(Bective Abbey, Trim, Co. Meath)…トリム城のすぐ近くにある、12世紀のシトー会修道院の廃墟

●夕陽の中、従者が「イングランド軍がスターリングに集ってる」と伝えに来て、ウォレスが「戦の準備はいいか!」、「ウォー!」とというシーン(BGMはバグパイク)
→おそらく、ウィックロウ山地(Wicklow Mountains)…山や岩場はスコットランドでの撮影シーンが多いのですが、石灰岩質の岩場と背後のなだらかな山の形から、ここはスコットランドではなくウィックロウのようにに思います

●スターリングの戦い
カラ(Curragh, Co. Kildare)の平原 …ダブリンの西、ニューブリッジとキルデアの間に広がる氷河期に削られて形成された約2000ヘクタールの平原。史実では「スターリング・ブリッジの戦い」ですが、適当な橋がないのでこうしたようです。2000人のエキストラを動員し、9台のカメラを使用して6週間かけて撮影したという、本編最大の見せ場のひとつ。エキストラが腕時計をしたままだったりして、撮り直しをした…なんてエピソードも
(北アイルランドに行くと『ゲーム・オヴ・スローンズ』にエキストラとして出てた、と言う人にかなりの確率で会いますが、私がアイルランドに来た当初は『ブレイブハート』に出てた、と言う人何人も会いました・笑)

●フィリップが落ちる窓
トリム城内の一角…と、昨年9月の見学の際に城のガイドが説明してくれたように思うのですが、記憶があいまい。次回行ったら確認します。背景がトリム城っぽいんですよね…

●フォルカークの戦い(と、おそらくエンディングの戦いシーンも?)
バリモアユーステス(Ballymore Eustace、Co. Kildare)近くの平原…カラと違うのは、背後に山が近いこと、広葉樹が生えていること。クライブ・オーエン主演の2004年公開の映画『キング・アーサー』もここでロケしています

●モーネイ伯の城からウォレスが馬ごと飛びこむ湖
ブレシントン湖(Blessington Lakes, Co. Wicklow)…ダブリンへ電気と水を供給するダムの一部を成す貯水池。飛び降りる窓はセット、馬は電動だそう!

●ウォレスが幽閉される地下牢
→ここも上述のベクティブ・アビー(Bective Abbey, Trim, Co. Meath)だそうです

室内の多くは、ダブリン近郊の海辺の町ブレイ(Bray, Co. Wicklow)にあるアードモア・スタジオ(Ardmore Studios)で撮影されました。多くの大作が生まれた有名な撮影所です。
そのほか、ウォレスの育った村や、高い山や渓谷のシーン(モーネイ伯殺害後、馬の背にのったウォレス山頂にたたずみ絶景を眺める印象的なシーンなど)はいずれもスコットランドのハイランド地方。
そして、私がとても見ることが出来ず飛ばしたウォレスの最期のシーンは、ロンドンだそうです。

25年も前の映画を今さら…という気もしましたが、歴史ものなので古びることなく、今見ても十分面白かったです。もはや名作の域ですね。
史実とは異なる部分もあるようですが(ウォレスと王女のロマンスなど)、一般に英雄視されているロバート・ブルースがここでは少々腰抜けに描かれているのが興味深い。実際はどうだったのでしょうね。

余談ですが、ロバート・ブルースによりスコットランド統一が成し遂げられた後、1315年、ロバートの弟エドワードがアイルランドを侵略しています。アイルランドの王たちを味方につけて、イングランドに敵対するため。
初めのうちは戦況も芳しく、一時はロバート・ブルースもやってきて軍勢に加わり、兄弟でスコットランド、アイルランドそれぞれを治めるシナリオも夢見るのですが...。
結局は飢饉で多くの兵士を失い、エドワード自身も戦死してしまいます。もしこれが成功を収めていたら、アイルランドはスコットランドの支配下に置かれていたかも!

話がそれましたが、アイルランドとスコットランドの美しい景色がたっぷり楽しめる作品でもありますので、ご興味のある方はぜひ。
メル・ギブソンはもちろん、ウォレスの片腕となる幼友達ハミッシュ役のアイルランド人俳優ブレンダン・グリーソンも若いです!

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アイルランド公認ナショナル・ツアーガイド。長野県上田市出身、2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。

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