月末に撮影予定のテレビ番組のロケハンが始まりました。
今日は、昨晩日本からご到着されたディレクターさんをお連れしてディングル半島へ。半島先端のスレー・ヘッド・ドライブ(Slea Head Drive)の遺跡めぐりにご案内しました。
十字架や碑文の刻まれた石板や立石のきれいなものを探していて、私も未だ見たことのない「キルフォーンテンの十字架の石(Kilfauntain Cross Slab)」を見に行くことに。この石は道路から離れた牧草地の中にあるのでアクセスしにくいのです。
グーグルマップで石のありかの見当をつけて、牛が放牧されている牧草地に侵入。民家があれば「入らせてください」とお願いもできるのですが、廃屋となったあばら家があるのみ。こういう場合はゲートを自分で開けて入り、牛が外に出ないようにまた閉めておきます。
牧草地をしばしばウロウロしたのち、動体視力のとても良いディレクターさんが立石らしきものを発見。

石がくずれてゴロゴロしている遺跡っぽい場所を遠くから見とめ、その横(写真右端近く)に立石を発見
イグサに刺されながらも草をかきわけて近づいてみると、なんとも美しい彫りが。やっと見つけた嬉しさも手伝って、斜めに傾きながら立つ高さ1メートル強の石板から、強いエネルギーのようなものが放たれている気が。

円に囲まれたギリシャ十字(縦横の線が同じ長さ)。その下に渦巻きが
渦巻き(魂が永遠であることのンボル?)や円(太陽信仰?)は、キリスト教以前の精霊信仰の影響。そこへそろそろキリスト教の兆し(十字)が見え始めた頃の、過渡期のものでしょうね。完全に渦巻きや円でもなく、完全に十字架でもない、2つの文化や信仰のクロスオーバー。アイルランドの初期キリスト教がヨーロッパ大陸のものと違っておおらかで、精霊信仰を少しずつ飲み込みながら成長していったことがうかが知れます。
渦巻き模様の下に刻まれているのは、キリストの名を意味するギリシャ文字「chi-rho(カイ・ロー)」の2文字だとか。この「カイ・ロー」はラテンのアルファベットで「X、P」として『ケルズの書』に出てくる、それでしょうか。

よく見ると側面にはオガム文字も(オガム文字については過去ブログ参照→
ウェールズ「ケルト紀行」⑤ ラテン語並記のオガム文字)
この地に教会を設立した(と言われる)聖フィンタン(St. Fintan)の名に読めるそうです。

石をカメラに収めるディレクターさん

石板横には初期キリスト教会らしき建物があったよう
牧草地をウロウロしてやっと見つけた遺跡。なんだか自分たちで発見したかのような気がして愛着がわきました。
※ディングル史跡めぐり 過去ブログ
ディングル遺跡めぐり① ビーハイヴ・ハットディングル遺跡めぐり② キルマルケダー教会ディングル史跡めぐり③ クローシュテ・イーダのオガム石群
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