アイルランドを代表する銀食器メーカー、ニューブリッジ・シルバーウェア(
Newbridge Silverware, Newbridge, Co. Kildare)。
以前に観光イベントで知り合った担当者からお招きを受け、日本人ガイド有志で、ニューブリッジにある本社工場&ビジターセンター&ショールームへ見学に出かけてきました。

ダブリンから車で45分~1時間。オードリー・ヘップバーンの大きな写真とニューブリッジ・カラーの水色が印象的なショールーム入り口(オードリーの写真は、こちらの博物館内にコレクションがあるからです。過去ブログ参照→
ニューブリッジで楽しむプチ・ハリウッド♪)
銀製品は現在もすべてハンドメイド。まずは、昨年より一般公開された、製造工場を見学させてもらいました。→
Factory Tour
工場へ入る前に、創業の成り立ちをビデオで見せてくれます
近年はジュエリー・メーカーとしても知名度をあげているニューブリッジ・シルバーウェアですが、もとはカトラリー(食卓用のナイフ、フォーク、スプーンなど)を中心とする銀食器メーカーとして1934年に創業。
英国支配時代の19世紀~20世紀初頭、ニューブリッジの町はブリテン島外でいちばん大きな英軍駐屯地でした。最盛期には2000を超える部隊が駐屯していて、多くの兵士や馬がここからクリミア戦争、ボーア戦争、第一次世界大戦の前線へと送られたほど。
兵舎や厩舎の建築、馬具の生産などで町はうるおい、職人技術も発達しましたが、1922年、アイルランドの独立に伴い英軍が引きあげると、町は衰退の一途をたどることに。それを見かねた地元の有力者が、英軍時代に培われた地元職人のスキルを活かし、英軍が残していった炉や道具を使って銀製カトラリーの製造で町の復興をはかったのが始まりでした。
当時、カトラリー産業で世界一だったイングランド中部の工場都市シェフィールドから専門の職人が招き、ニューブリッジに製造方法が伝えたそうです。

工場内には、英軍が残していったという、創業当時に使用されていた炉が残されていました
スプーンやフォークを作るのに、こんなにたくさんの細かい行程があったとは知りませんでした。
一枚の真鍮の金属パネルからラフな形にくり抜き、それをのばして平らにし、フォークには切れ目を入れて、曲げて…と、それぞれ違った機械を使ってひとつひとつ行います。

古いカトラリーがオブジェのように壁にかけられていました

これはプレスする機械…だったでしょうか。似たような機械がたくさんあり、それぞれ役割が違います

柄の部分に型押しされた模様。人気の「ケルティック」柄です
フォークとスプーンは1枚の真鍮から作られますが、ナイフは柄と刃を別々に作ります。驚いたのは、ナイフの柄の部分は2つのパーツから出来ていて、中にセメントを入れるということ!

ナイフの柄になる2つのパーツをくっつけている職人さん

こんな風に中は空洞

そこに液状のセメントを注入!
この作業がいちばん面白そうでした。もしもニューブリッジで働くことになったら、この作業をする係にあててもらいたいです(笑)。
ジュエリーは90年代から始めたそうですが、はじめはカトラリーを切り取ったあとに残った真鍮くずを再利用する目的だったそう。そう言われてみれば、初期の頃のネックレスなどのデザインは、スプーンの曲線にぴったり合いそうな形が多かったですね。

もう20年近くも愛用しているニューブリッジ・シルバーウェアの私物ネックレス。今は見かけないので、もう製造されていないかも。この曲線、スプーンの淵にぴったり合いそうな感じですね(笑)

ジュエリーは銅板から作られます。こちらは手動ではなくコンピューター制御。ガーネットの粉を混ぜた水中で水圧を利用して、プログラミングされた型に切り抜かれていきます

ペンダント・ヘッドの出来上がり
カトラリーは真鍮、ジュエリーは銅で作り、最後にシルバー・コーディングするのですが、この方法がこれまた驚きで、はじめは説明されてもなかなか理解できませんでした。
シルバー・コーティングって溶かしたシルバー液のようなものにジャボーン…ってつけるのかと思ったら、そうじゃないんですね。

銀の塊の入った水槽にカトラリーやジュエリーを入れ、水の中に電流を流すと化学反応が起き、銀が溶け出して少しずつコーティングされていくそう!
工場見学の後、現オーナーが世界中のオークションで買い集めたハリウッド・スターたちのコレクションを展示した、ショールーム上階の博物館へ。
長くなるので続きはまた後日、アップしますね。

ショールームを訪れたセレブたちの写真がいっぱい。こちらは2007年、そういえば当時ニューブリッジのモデル役を務めていましたね、ラグビー・レジェンドのローナン・オガラです
※3月30日追記、続きをアップしました→
ニューブリッジ・シルバーウェア訪問② 往年のスターのコレクション&アフタヌーン・ティー
- 関連記事
-
コメント