
1986年創立のアイルランドを代表する演劇スクール
ダブリンのサブカルチャーの中心地として知られるテンプル・バーの一画に、ゲイエティー・スクール・オブ・アクティング(
Gaiety School of Acting, Essex Street West, Dublin2)という俳優養成学校があります。
アイルランドがまだまだ貧しかった80年代に、国内初のフルタイムのアクティング・スクールとして開校。数多くの有名俳優、脚本家たちを輩出し続けている国内外で定評ある学校です。

観光客の波が途切れるテンプル・バー西端のオールド・タウン地区。文化施設やおしゃれなショップ、カフェが立ち並ぶ中に、はちみつカラーの石造りの学校が

入り口を入ると、現在俳優として活躍中の本校出身者の写真がずらり。いちばん有名なのはなんといってもこの人、コリン・ファレル(Colin Farrell)でしょう
今日までの数日間、日本からの学生さんたちがアイルランド演劇の実地研修のため、こちらの学校に通っていました。
桐朋学園芸術短期大学の演劇専攻の生徒さん31名です。

ゲイエティー・スクールのインスタグラムより。本日、国際婦人の日(International Women's Day)にちなみ「平等」のポーズで!先生方や私たち通訳も一緒に♪
生徒さんたちの通訳として私も日々学校に通い、普段はなかなか見ることのない舞台演出の現場を見せていただくと共に、若いクリエイティブなエネルギーに触れて感激しどおし…の数日間でした。
研修の課題は4つのアイルランド演劇。サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら(Waiting for Godot)」と「行ったり来たり(Come and Go)」、ジョン・ミリントン・シングの「海へ駆りゆく人々(Riders to the Sea)」、そして本来は子供向けの物語ですが、オスカー・ワイルドの「わがままな巨人(Selfish Giant)」。
4日間でこのお芝居を解釈し、英語で演じるところまでやり遂げたのですから、皆さん、素晴らしい才能と集中力ですよね!
演劇演習のサブとして、上演する劇のアニメーション製作も行いました。ストップモーションという技法で、キャラクターや背景を作り、絵コンテを描いて、それに合わせて写真撮影。台紙の上に置いたパーツをほんのちょっぴりずつ動かし撮影するのですが、10~12枚の写真がやっと1秒間のアニメーションになる…という気の遠くなるような作業です。
最終日の今日は、研修の集大成として、学内のシアターにて発表会が行われました。
皆さん演劇専攻の生徒さんですから、お芝居はお手のものですが、アイルランド人の先生の指導のもと英語で演じるのは大変なチャレンジだったことでしょう。
たどたどしかったセリフまわしが日々上達していく様を見ていただけに、本番での皆さんの堂々とした姿を見て、まるで我が子の成長を見届けたかのような気持ちに。私たち通訳も感激のあまり、思わず涙、涙…。

左上から時計回りに「行ったり来たり」、「わがままな巨人」、「ゴドーを待ちながら」、「海へ駆りゆく人々」。皆さんが製作したアニメーションが背景として映し出されました
芸術表現は言葉を超えますね。悲しみにくれる役を演じた生徒さんは、本番直前まで長い英語のセリフまわしに苦労していました。
ところが本番ではセリフは一部飛んだものの、役にすっかり入り込んで本物の涙が頬を伝い、それを見た観客がもらい泣き…。彼女自身も演技を通して、自分の中の言葉の壁を超えたのですね。

4つのお芝居に続き、全員浴衣姿で太鼓と横笛に合わせて祭りの踊りを披露。観客席のアイルランド人の生徒さんたちも踊りの輪に加わり、大変な盛り上がりに

最後はスタンディングオベーションの嵐。演技のすばらしさはもちろん、皆さんの自主性と情熱に誰もが自然に心を動かされたのでしょう。アイルランド人の先生も、これまで見てきた発表会の中でいちばん素晴らしかった!と大絶賛
この数日間、若い学生さんたちが健気に助け合いながら取り組む姿を見て、思わずウルっ…とくる瞬間が何度もありました。
もう子どもではないけれど、まだ大人でもない…そんな年ごろ特有のキラキラした感性がまぶしくて、まぶしくて。私もこんな頃があったなあ、あの時はずいぶん大人になった気でいたけれど、まだ子どもの感性をしょっていたんだなあ、なんてしみじみ思っていたら、昨日の夜は学生時代に戻った夢を見ました!(笑)
そして、このゲイエティー・スクールの指導内容にも、いたく感激。数日間でここまでの成功体験を与えられるのは、考え抜かれたカリキュラムと経験のなせる業だと思います。
日本の学生さんたちをこのような形で受け入れたのは初めて…とのことですから、桐朋学園の素晴らしい皆さんのことは、長い間学内で語り継がれることでしょう!
- 関連記事
-
コメント
ようはっぱ
すごいですねえー。
生徒さんたちはもちろん、学校の先生たちにも良い機会となったんですね。
私もなんか嬉しいです。(^_^)
2019/03/10 URL 編集
naokoguide
生徒さんたちを見ていて、日本も捨てたもんじゃない!と心から嬉しく思いました!
また来ていただきたいです♪
2019/03/10 URL 編集