先週末より、ラグビーのシックス・ネイションズ(Six Nations=欧州6か国対抗戦)が始まりました。
今年からギネスが6年間のスポンサー契約を結び冠スポンサーとなったので、昨年までの「ナットウェスト」や「RBS」に代わり、「ギネス・シックス・ネイションズ」になりましたね!
アイルランドは初戦でイングランドにまさかの敗北。北半球ナンバー・ワンの実力を保持し、
昨年のグランドスラム覇者でもあるアイルランドの勝利を絶対的に信じていた私は、あまりにがっかりしてこれで私のシックス・ネイションズは終わった…とまで気落ちしましたが、一昨日のスコットランド戦で22対13で勝ち星をあげてくれたのを見て、気持ちが復活。まだ強豪ウェールズとの試合もあるし、アイルランド、頑張って!…と気を取り直して応援することにしました(笑)。
それにしても今期はイングランドが強いですねー。昨年の不調を晴らすべく、なんだか殺気立っているように見える…。
昨日はフランスに44対8という大差で勝利したそうですし…!(おお、怖い~。アイルランド、初戦で当たっちゃって良かったかも)
9月にはいよいよ日本でラグビー・ワールドカップが開催されるとあって、今年のシックス・ネイションズは注目度も高いのではないでしょうか。
6か国(アイルランド、イングランド、ウェールズ、スコットランド、フランス、イタリア)すべてがワールドカップ出場国ですし、日本はそのうちの2か国、アイルランドとスコットランドと予選で対戦しますしね。
そして、今、ラグビーと同じくらい注目度が高い事柄と言えば、やはりブレグジットの行く末。先日、
ブレグジットと北アイルランドの国境問題について当ブログでお話ししましたが、実はこの問題、アイルランドのラグビー代表にも無関係とは言えないことなのです。
というのも、現アイルランド代表チームの信頼厚きキャプテン、ローリー・ベスト(Rory Best)は北アイルランド出身&在住。ダブリンでの国際試合やトレーニングに、国境線を越えて来ている一人だから。

昨年のシックス・ネイションズで優勝杯を掲げるキャプテン、ローリー・ベスト(写真は
Sporting Newsより転載)
どういうことかと言いますと、ラグビーのアイルランド代表チームは北アイルランド(英領)を含む、アイルランド「島」統一チームで編成されています。政治的には英領である北アイルランドに住むローリー・ベストも、シャムロックのエンブレムを胸に、アイルランド代表としてプレイしているのです。
アイルランド代表チームの発祥は1875年。アイルランドが南北に切り離され、南部26州のみで英領から独立したのは1922年。独立の半世紀近く前にチームは誕生しており、その時には「北アイルランド」という概念そのものがなかったのですね。
そして、北アイルランド紛争の時代にも分裂することなく、アイルランド島統一チームとして今日まで存続してきた事実は、スポーツに国境なし、を体現していると言えるのではないでしょうか。
私はこのアイリッシュ・ラグビーの在り方こそが、アイルランドの和平、国境に縛られないアイデンティティーの在り方の、ひとつの指針にもなり得ることだと思っています。
(関連過去ブログ→
ラグビーのアンセム「アイルランズ・コール」)

一昨日のスコットランド戦で、全力疾走で爽快なトライを決めてくれた若きジェイコブ・ストックデイル君(若干22歳!)も北アイルランド出身。昨年のシックス・ネイションズではトーナメント最多トライ記録保持者となり、プレイヤー・オヴ・ザ・トーナメントにも選ばれた注目の「得点王」。11月のオールブラックスとの歴史的試合では、彼のトライがアイルランドの勝利を確実にしました
万が一、ブレグジットの影響でハード・ボーダー(厳格な国境管理)が復活するようなことになれば、キャプテンやスター選手が自国チームの試合に出るために国境審査を通って来るという、おかしなことが起こります。便宜上の問題というより、プリンシパルの問題。ブレグジットの行く末により、国境なきアイリッシュ・ラグビーの価値が損なわれることが懸念されているわけです。
日本でのワールドカップに向けて、今後、日本のメディアで参加国の紹介などが行わることと思いますが、アイリッシュ・ラグビーの特異かつ平和的な在り方について、ぜひ報道していただきたいものです。
そして、そのことをアイルランド人がどれほど誇りに想っているのか、技術的な強さだけでなく、こういう事情も手伝ってアイルランドは「ラグビー大国」なのであり、2023年のワールドカップ誘致を平和の祭典として悲願していたのだ…ということも。(←過去ブログ参照:
2023年ラグビー・ワールドカップ開催地決定まであと10日…/
ラグビーW杯の開催地にはなれなかったけれど…)
ちなみにローリー・ベストは、2016年のEU離脱を問う国民投票の際、メディアに「残留」を呼び掛けていました。ベストの実家は地元の北アイルランド、アーマー州(Co. Armagh, Northern Ireland)でアバディーン・アンガス牛を飼育する畜産農家。
EU離脱に伴う助成金の削減や打ち切りが農業経営を圧迫するとの理由で、北アイルランドの畜産農家はみな、「残留」支持でした。「離脱」支持者はグローバルマーケットが開けると主張しましたが、土の上で働いているファーマーたちには夢物語にしか聞こえなったことと思います。(当時の関連新聞記事→
Irish rugby captain Rory Best urges voters to back Remain in Brexit referendum)
そんな背景も含め、ブレグジットの期日を目前に控えた今年のシックス・ネイションズを闘う彼の心境は、いろいろと複雑であろう…と思えてならないのでした。
※過去のアイリッシュ・ラグビーに関する記事→
アイリッシュ・ラグビー
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コメント
ようはっば
今でも、やっぱりよく理解してないですが、いつも試合で見てる選手の皆さんが北アイルランドの方だと知って、急に身近な問題に思えてきました。
キャプテンやストックデール選手がアイルランド選手として出られなくなったら?
どうなるんでしょうか。
うーん、、、
忙しさにはかまけて知らずにいるとあかんなぁと思いました。
引き続き、ナオコさんのブログで情報収集していきます。
もう少し日本の新聞もじっくり見てみます。
2019/02/18 URL 編集
naokoguide
アイルランドが南北統一チームだというのはスゴイことだと思います。キャプテンは、英国市民なんですから!
昨年秋にブライアン・オドリスコルがナビゲーターをつとめ、アイリッシュ・ラグビーの歴史を北アイルランド問題から見るTV番組が放送されました。北出身の往年の選手たちへのインタビューもたくさんしていて、ラグビーがアマチュアスポーツだった時代は、北アイルランドの警察官や、なんと英軍のメンバーも代表に含まれていて、ダブリンに試合に来るときは護衛付きだったそうです!紛争中に出場したワールドカップでは、1週間前に北の選手3人が車でダブリンへ移動中、国境近くで爆弾テロの犠牲になり、命は助かったものの出場できなくなってしまった…なんてこともあったそうです。
私もあの番組を観るまで知りませんでした。
2019/02/18 URL 編集