先日の「ケルティック・クリスマス2018」に初来日で出演した、カナダのプリンス・エドワード島出身のイースト・ポインターズがとても気に入り、コンサート後も毎日聴いています。
プリンス・エドワード島といえば「赤毛のアン」の舞台として有名。長年の「アン」ファンの私にとって、日本でのケルト音楽の祭典に「アン」の島のバンドが加わるというのは非常にテンションのあがる(!)出来事でした。
「ケルティック・クリスマス」前夜にはカナダ大使館で行われたイースト・ポインターズのみのミニ・コンサートにもご招待いただき、彼らのライブを2度にわたり楽しませていただきました。

カナダ大使館内ホールにて。素晴らしいライブでした。会場も小さ目だったせいかメンバーがとてもリラックスした様子で、素顔のイースト・ポインターズが見られたような気がしました
実はこのミニ・コンサートの前に、一緒に行く「アン」友達の皆さんと大使館隣りの草月会館のカフェでお茶をしていたんですね。
そこへイースト・ポインターズの3人がふらりと入ってきてびっくり。私たち「赤毛のアン」のファンでプリンス・エドワード島へも行ったことがあるんです!…なんてお話ししてしまったのですが、とても気さくで感じのいいお兄ちゃんたちでした(笑)。
そもそもプリンス・エドワード島にケルト音楽を伝えたのはスコットランドやアイルランドからの移民たちです。19世紀半ばの島の人口は50%がスコットランド人、25%がアイルランド人だったそうです。
イースト・ポインターズはスーリー(Souris)というプリンス・エドワード島東部の海辺の町出身で、島におけるケルト音楽は主に東部で継承されてきたよう。コンサート中のMCによると彼らはスコットランド移民7世で、ご先祖には地元で名の知れた名フィドラーもいたようです。
「赤毛のアン」と数冊にわたる続編は19世紀末~20世紀初頭の物語で、作者のL.M.モンゴメリもやはりスコットランド系のアイランダー(プリンス・エドワード島出身者)です。
「アン」には音楽描写はあまりなく、近所の人々が楽器を持ち寄ってグリーンゲイブルズでセッション…みたいなことがあったらいいのですが、残念ながらありません(笑)。アンが育ったアヴォンリー村は羽目を外すことが良しとされない、どちらかというと厳格な土地柄だったよう。
ところが、第5巻の「アンの夢の家」で新婚のアンが暮らす海辺のフォア・ウィンズは違っていて、漁船や汽船が発着する土地らしくどこそこ開放的。アヴォンリー村にはいなかったようなミステリアスな登場人物も多く、アン夫婦とご近所付き合いをするジム船長もそのひとり。灯台に住む船乗り上がりの独り身の老人で、類まれな語りの才を持つフィドルの名手なのです。
イースト・ポインターズの演奏を聴きながら私がさかんに思い出していたのは、子供の頃から親しみ、数え切れないほど想い描いてきた、物語の中のフォア・ウィンズの情景やジム船長のフィドルの音でした。
今目の前で、伝統を受け継ぎ進化させたようなナチュラルで心地いい音楽を奏でている若者たちが、あのジム船長の末裔なんだなあ…なんて思ったりして(笑)。
スーリ―では毎年7月にロー・ロー・フェスティバルという海と音楽の祭りがあるとイースト・ポインターズが話していました。
演奏中、その様子がスクリーンに映し出されたのですが、船上で歌ったり踊ったり、捕れたてのロブスターがふるまわれたりと楽しそう。1976年にメンバーのお祖父さんが始めたフェスティバルだそうです。
もしもアンやジム船長のフォア・ウィンズが実在するならば、21世紀のフォア・ウィンズはこんな感じなのかなあ、なんて思いました。
ロー・ロー・フェスティバル、いつか行ってみたい!
コンサートの時にスクリーンに映し出された映像は、このビデオの一部だったと思います。この中の「John Wallace」という曲は、19世紀にプリンス・エドワード島沖で難破した船のことを歌ったものだそう。アンの時代の出来事ですね。作者モンゴメリが子供の時に書き、初めて新聞に掲載されたエッセイも船の難破が題材だったなあ、なんて演奏を聴きながら思い出しました
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コメント
ますみ
私は、アンの中では、夢の家が、一番好きです。
堅めのアヴォンリーと違う、フォア ウィンズの素敵な土地柄、今まで会ったことのない人達が、
魅力を作っているのですね。
音楽から、当時の雰囲気を想像できる、なるほど!と思いました。
私、9月のユーラシアさんのツアーで、直子さんに、ケルトのCDを、推薦して頂きました。皆、好評でした。御礼申し上げます。楽しいクリスマスになりますように!
2018/12/13 URL 編集
miwako
私はちょうど村岡訳「アンの娘 リラ」を読んだところだったのです。
はじめの大事なパーティーのシーンで「バイオリンの名人」が出ていました。
そうか、フィドルですね。何年も読んでいて、始めてピッタリのイメージが出来ました。ありがとう!
2018/12/14 URL 編集
naokoguide
コメントありがとうございました。
イースト・ポインターズは伝統音楽とはいえ現代のバンドなので、いくらPEI出身だからといってここからアンにつなげるのは難しいかな…って最初は思っていたのですが、思いがけず、アンの世界が連想されて自分でもうれしかったです。
「夢の家」、私もアン・シリーズの中でも特にお気に入りです。今また読み直しているのですが、以前は読み流していたいろいろな美しい描写にあらためて気が付き、うっとりしながら読んでいます。アン・シリーズは何度読んでも気づきがありますよね。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします♪
2018/12/14 URL 編集
naokoguide
この件については、もっともっとお話ししたいことがあるのですが、またいつか(笑)。
そうなんです、フィドルなんですよね、原文は。
ヴァイオリンっていうからてっきりクラッシックだと思っていて、それに合わせてレスリーが踊ったのは社交ダンスみたいなものだと思っていたのですが、きっと、もっとアイリッシュ・ダンスっぽい踊りだったと思う。
そうか「リラ」にはそんなシーンがありましたっけ。読み直してみなくちゃ。ありがとう!
2018/12/14 URL 編集
アンナム
(アンがミス・バーリーに音楽会に連れていってもらった時の興奮もこんなだったかしら、、)
この記事でさらに詳しく解説して下さり、なるほど、とかあぁそういう事だったのかとあらためて感動がよみがえりました。
アン仲間って本当にいいですね。
2018/12/14 URL 編集
Pearl
2018/12/16 URL 編集
naokoguide
私も楽しかったです!こちらこそ、遠方から来てくださってありがとうございました。お会い出来て嬉しかったです♪
アン仲間の皆さんとは年に一度お会いするかしないかなのに、そんなこと全くお構いなしにおしゃべりが出来て、すごいな~っていつも思います。貴重なお仲間ですよね、本当にありがたいです。
Pearlさんへ
ええ、書きますとも!
Pearlさんの素敵なエッセイもまた楽しみにしています♪
2018/12/17 URL 編集