連日のTVロケもそろそろ大詰め。
今日は7月に新たに発見された新石器時代の古墳の撮影。世紀の大発見!として注目を集めた遺跡の発掘現場を特別な許可を得て見学&撮影させていただきました。
(過去ブログ参照→
ボイン渓谷で新たな遺跡発見!巨石古墳と謎めいたサークル)

遺跡が発見されたのは18世紀の大邸宅ダウス・ホール(Dowth Hall, Co. Meath)。ドローンで上空から撮影中!

調査はまだまだ続行中。10名の考古学者チームが日々発掘作業中です
発見されたのは、有名なニューグレンジ(Newgrange)と同時代・同形式の羨道墳(せんどうふん=Passage Tomb)で、推定5500~5000年前のもの。屋敷の修復・再建工事に先だって地下の発掘調査を行ったところ、文様が刻まれた古代の巨石が発見されました。
ダウス・ホールはそもそも古墳の上に建てられていて、18世紀の建築家たちは古墳を形成する巨石を屋敷の建設に流用してしまったのだとか。
遺跡は上部が破壊され、後世の土など堆積物すっかり覆われてしまっていたため、事前のレーダー探査には反応しなかったそう。考古学発見があるかどうかは掘ってみるまでわからず、まずは石や建造物が5000年前のものなのか、18世紀のものなのか、それをより分ける地道な作業から始まったと言います。
今やっと5000年前の層に行きついたところで、本格的な調査はまだまだこれからなのよ…と、発掘チームのリーダー、クリーナ・ニー・リノーン博士(Dr Clíodhna Ní Lionáin)が詳しく説明してくださいました。クリーナ博士が今回の世紀の発見を導いたまさにその方です。
古墳は直径40メートル、ニューグレンジの約半分ほどの大きさ。周囲を囲った6つの縁石が発見されています。

そのうちのひとつには同心円、渦巻模様など古代人のアートが豊富に刻まれていました!
この石は発見された時のまま、そのままの場所にあります。かなりの巨石のため持ち上げて裏を見ることはまだしていないそうですが、もしかしたら裏側にも文様があるかもしれず、それがわかればこの石がずり落ちたのか、コテンと倒れたのかがわかるとのことのでした。
文様をよく見ると線が点線なんですよね。石器時代なので金属がありませんから、石英または硬いフリント石を道具として、のみと金づちの原理でカンカンカン…と点線を連ねていったのですね。
この石についてのクリーナ博士の説明で興味深かったのは、2人の違った人により文様が刻まれたのでは?…という仮説。根拠は彫りの深さに違いが見られるから。

こちらは熟練した職人が彫ったらしく、彫りが深い

こちらはまだ不慣れな人が彫ったのでしょうか、彫りが浅い
ニューグレンジ、ナウス、ダウス、フォーノックス、ロッククルー、キャロモア…と、これまでアイルランド国内の新石器時代の文様を数えきれないほど目にしてきましたが、そういう観察眼は私にはなかった!新たに目を開かされた気持ちでした。
古代にも器用な人、不器用な人がいたでしょうし、熟練した職人もいれば見習いもいたことでしょう。これまでただただミステリー…としてしか目に映らなかった文様がとたんに親しみを増し、5000年前の人たちの手の跡がリアルに感じられました。
先輩の職人に叱られたりしながら一生懸命に彫ったのかな…なんてことを想像してみたり(笑)。古代の人間ドラマが見えたような気がして感激。
古墳内の石室は2つ発見されていますが、入り口ははっきりせず、今後の調査が期待されます。
古代人の骨など炭素物質もまだ見つかっておらず、発見されたらより詳しい年代が明らかになることでしょう。

手前の高い部分は18世紀の構造。左下が石室ですが、写真ではわかりにくいですね
添乗員時代も含めこの20数年間、世界の古代遺跡をたくさん見て来ましたが、発掘調査の現場を見たのは初めて。
快くTV撮影に協力してくださり、クリーナ博士じきじきに説明をしてくださったのには感謝感激。貴重な経験をさせていただきました。
ダウス・ホールは一般公開していませんが、8月にオープン・デーがあり2日間限定で公開されましたので、今後またそのような機会があるかもしれません。
発掘調査の進展とともに、要チェックですね。
※ダウス・ホールはDevenishという会社の管理下にあり、発掘調査はDevenishとUCDの合同プロジェクトのようです。DevenishのHP(文様のある石が発見されたときの写真あり)はこちら→
Discovery of Megalithic Passage Tomb Cemetery within the Bru na Boinne World Heritage Site
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