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春分・秋分に光が差し込むロッククルー

ユネスコ世界遺産として知られるニューグレンジ(Newgrange, Co. Meath)と同時代の史跡、ロッククルー(Loughcrew, Co. Meath)。
アイルランドにおける新石器時代の4大古墳のひとつにも数えられる、考古学的に重要で興味深い場所です。

ここへは10年ほど前に行ったのが最後でしたので、数日後のご案内に備えて、下見に出かけて来ました。

ダブリンから車で1時間程。古墳は丘の上にあり、カーンバン・イースト(Carnbane East)、カーンバン・ウェスト(Carnbane West)、キャリクブラック(Carrickbrack)、パトリックスタウン(Patrickstown)の4つの丘に分かれています。
今日はメインの古墳、ケアンT(Cairn T)のあるカーンバン・イーストを目指しました。(ケアン=人間が作ったの石積みのこと)

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丘のふもとのサイン。この脇に駐車スペースがあります。ここへたどり着く最後の数百メートルは普通乗用車でもやっとすれ違えるくらいのかなり細い登り坂

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この階段を登って丘へ

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かなりの急斜面。白いラインの入ったこのポールに沿って登るのがいちばんの近道です

丘を登ること約10分。(登りが苦手な方はもうちょっと時間がかかるかも)
突然降り出したにわか雨にびしょぬれになりながら、丘のてっぺんに到着。目の前にケアンTが現れました。

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写真奥のマウンドがケアンT、直径35メートル、周囲は38の巨石に囲まれています。ロッククルーには25の古墳が発見されており、盛り土がなくなってしまっている手前の巨石群(ケアンV)もそのひとつ

墓の形はニューグレンジと同じ羨道墳(せんどうふん、passage tomb)で、内部には通路とそれに続く玄室があります。
ケアンTの内部は、近年は5月下旬~8月下旬の10:00~18:00に常時オープンしているようですが、それ以外の時期は近くのロッククルー・エステイト(Loughcrew Estate)のティールームで鍵を借りて入ります。(身分証明書、デポジット要)
今日は外観だけさっと見る予定で鍵を借りに行かなかったのですが、ラッキーなことにアメリカ人のグループさんがたまたま居合わせ、便乗して入れてもらいました。

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ニューグレンジのミニチュアみたい。通路はほんの1.5メートルくらいだったでしょうか、とっても狭い!(アメリカ人の観光客さん、こんな後ろ姿を撮ってしまってごめんなさい)

この狭い内部にある石に、驚くほどたくさんの模様が彫られています。ニューグレンジより100~300年古い紀元前3300年とも3500年とも言われるケアンT。数百年古いせいなのか、ニューグレンジの人たちと異なる感性を持っていたのか、ここの模様にはニューグレンジの洗練されたものとは異なる原始的な美しさがただよいます。

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通路に入ってすぐ左にある石。真ん中に踊る人が見えた気がした!

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玄室はニューグレンジと同じく3つ。右側のものの脇にある石にはプチプチがいっぱい

ニューグレンジは冬至の朝に太陽の光が差し込みますが、こちらロッククルーに太陽光が差し込むのは春分・秋分の朝。1980年に初めて観測されました。
通路から差し込む光が、奥の石室のこの石を照らすのです。

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花模様のような、輪切りのレモンのような模様。草間彌生さんっぽくないですか?(写真をクリックして拡大してみてください)

この、円の中に花が咲いたみたいな模様に太陽光が当たり、光が左上から右下に向かって模様を照らしながら移動するのだとか。
ニューグレンジのルーフボックス(roofbox)の仕掛けを使った寸分違わぬ光の差し込み方もいいですが、こんな素朴な光のショーもいいですね。ここの石の模様を見ているとなんだか心が和み、明るく弾けるような気持ちになってきます。

丘からの眺めも素晴らしく、どこまでも続く緑が目にまぶしい。

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丘の上で方向感覚をすっかり失くしました。遠くに見える丘もロッククルーの4つのうちのひとつでしょう

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遠方の山並みは北アイルランドのモーン山脈でしょうか

今日はこのあと、もう一か所別の場所を見に行く予定があったので、ケアンLのあるカーンバン・ウェスト(Carnbane West)へは行かず、次回にとっておくことに。
丘を下りて、ふもとのロッククルー・メガリティック・センター(Loughcrew Megalithic Centre)でおいしいスープ&ブラウン・ブレッドのランチをいただきました。(写真撮り忘れましたが、スープ絶品!)

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センターはこんなカワイイ茅葺き屋根のコテージ群。カフェ、ショップ、トレイあり。ここを管理しているナイルは、もともとのコテージの持ち主の曾孫さんで、史跡ツアーもやってくれます

ちなみにロッククルーでは2014年より春分・秋分のイベントが行われていて、日の出時間にケアンTの内部を公開、太陽光が玄室に差し込み、石を照らす様子を見ることが出来ます。(天気が良くて太陽がちゃんと昇ればですが・笑)
間もなくやってくる今年の秋分のイベントは、9月21日~23日。日の出時間のケアンTへの入場は到着順で、朝7時前に集まった全員を順番に玄室へ入れてくれます。
たったの17分間しか太陽光線が差し込まないニューグレンジに比べて、こちらは約50分間光が入るのだそう。1回に5名ずつくらい、1~2分玄室にいさせてくれるらしいです。
(秋分イベントの詳しい詳細はこちら→Loughcrew Autumn Equinox 2018

毎年来たいと思いながら、仕事が重なったりで来られずにいたロッククルーの春分・秋分。今年はお客様をご案内して行く予定です!
真っ暗闇の中、早朝から丘を登る元気のある方はぜひ。きっと幻想的なことでしょう。

【追記】2019年11月現在、古墳内部の一般公開はされていません。丘へは自由に登ることが出来、古墳の周囲を歩くことは出来ますが、内部の再公開については未定とのこと。

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アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドの山下直子です。2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。長野県上田市出身。

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