
17世紀よりパーソンズ一族の居城として修改築を重ねてきたバー・キャッスル。現在も7代目ロス伯爵とご家族が住んでいらっしゃいます
19世紀に建設された巨大天体望遠鏡のあるバー・キャッスル(
Birr Castle, Birr, Co. Ofally)は、アイルランド内陸部の知られざる名所。
ここ数年行っていなかったので、来週のツアーでご案内する前に、下見を兼ねて出かけてきました。
さまざまな植物が植えられた広大な庭園は、散歩して楽しいだけでなく、ユニークな見どころ満載。
いちばんの目玉は、「レビヤタン(旧約聖書に出てくる怪物)」とニックネームされる巨大な天体望遠鏡。1845年、第3代ロス伯爵
ウィリアム・パーソンズ(William Parsons)が建設したもので、当時は世界最大の望遠鏡でした!

アメリカのマウント・ウィルソン天文台に口径2.5メートルのものが出来るまでの70年間、世界最大だったニュートン式の反射望遠鏡。反射鏡は口径1.83メートル、筒の長さ17メートル。3人がかりで動かしたそう

1900年頃まで使用しましたが、その後、金属の支柱は第1次世界大戦時に溶かされ、1925年に解体。オリジナルの反射鏡はロンドン科学博物館所蔵。1990年代に修復されました
当時の反射鏡は銅と鉛の合金で、アイルランドの湿気の多い気候では、6か月ごとに研磨しなくてはならなかったとか。研磨中も観測が出来るよう、常に2枚の反射鏡が用意されていたそうです。
ウィリアム・パーソンズ(ロス卿として知られる)はこの望遠鏡で星雲や銀河を観測し、膨大なデータを残し天文学の発展に尽力しました。
「子持ち銀河(Whirlpool Nebula)」と呼ばれる渦状の星雲を初めて観測した人物として、天文学史にその名を残しています。(詳しくは
Wikipediaの記述参照)

敷地内にある展示室「サイエンス・センター」にある「子持ち銀河」の写真

こちらは1845年にロス卿がスケッチしたもの
望遠鏡のそばには、観測の際に使用された子午線を示す石柱も残されています。

石柱の奥にあるのは樹齢500年の樫の巨木。樫の寿命は通常200年位だというのに、倍以上も長生きしている魔法の木!樫の木・石柱・望遠鏡が一直線で結ばれます
バー・キャッスルの天文観測の伝統は今も受け継がれていて、昨年2017年には、LOFAR(=LOw Frequency ARray)と呼ばれる電波望遠鏡が敷地内に設置されました。
オランダの天文学組織により設置・運営されているLOFARは、多数の電波望遠鏡をひとつの巨大な望遠鏡として用いる電波干渉計。(Wikipedia参照→
LOFAR)
観測所は現在、オランダに40か所、ドイツに5か所、イギリス、フランス、スウェーデン、アイルランドにそれぞれ1か所ずつ。トータルで20000個の小さなアンテナが設置されているのだそう。

敷地内に観測所発見。LOFAR最西の観測所

太陽熱のパネルみたいなものが敷き詰められていましたが、これは何?
ロス伯爵家はさまざまなけ突出した人物を出している家系としても有名。
天体望遠鏡をつくった3代目ロス伯爵の妻メアリーは、19世紀当時にあって優れた写真技術と現像技術を駆使した人物として知られます。

2人が使用した現像室が「サイエンス・センター」に保存されています
その長男のローレンス·パーソンズ(4代目ロス伯爵)は月の熱を測定する機械を造り、3男のリチャード・クレア・パーソンズは南アメリカに鉄道を建設、4男のチャールズ・アルジャーノン・パーソンズは蒸気タービンの発明者です。
庭園内のそのほかの見どころは、日をあらためてご紹介することにします!
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