アイルランドでは昨日、妊娠中絶を禁止する法律を撤廃するかどうかを問う国民投票が行われました。
(過去ブログ参照→
妊娠中絶 YES or NO?)
本日開票結果が発表され、「YES」が66.4%で過半数を上回り、人工妊娠中絶が合法化されることになりました。

ダブリン城で発表された開票結果を聞いて歓喜にわく人々(
Landslide victory for Yes side in referendum - RTE Newsより転載)
1983年、やはり国民投票で支持を得て違法とされた妊娠中絶。今回再び民意によりそれがくつがされることとなり、この35年でアイルランドの社会や人々のメンタリティーが大きく変化したことが知らされる結果となりました。
ダブリン城に集まった人々の前で演説したレオ・バラッカー(Leo Varadkar)首相は、この結果を「静かなる革命」、「女性たちの選択と決定を信頼し尊重することが示された」と述べました。
2015年、国民投票で同性結婚が合法化されたあの時を彷彿させるような「YES」の勝利。
(過去ブログ→
世界初、国民投票で同性結婚を合法化したアイルランド)
投票率は3年前の60.5%を上回り、なんと64.1%。投票するために国外から里帰りした人、休暇を切り上げて帰国した人も。
26カウンティー(県)のうち、北西部ドネゴールを除く25カウンティーが「YES」支持でした。(ダブリンは70%以上がYES)
私はアイルランド国籍ではないので投票権がありませんでしたが、もしあったら「YES」に入れたと思います。法で規制されることではなく、個人が選択すべきことだと思うので。
でも同時に、「NO」を支持する人たちの理由や心情にも興味がありました。胎児にも人権があり、それを尊重せず中絶するのは殺人である(キリスト教の教えが根底にあります)という「NO」派の主張も理解できるし、正しいことだと思うのです。それが妊娠中絶を禁止する理由になるかは別として。
日本は諸外国から中絶大国と言われるほど、人口妊娠中絶の事例の多い国です。
日本でもかつては違法でしたが、アイルランドのような宗教的・人道的な考えからではなく、戦争に人を送りこむための「産めよ、増やせよ」という国策でした。
日本で中絶が合法化したのは戦後。アイルランド同様、多くの人が尽力して法改正にこぎつけた歴史があることを、今回調べてみて知りました。しかしここまで中絶が日常化すると、「女性の選択と決定を信頼」してよいものか考えさせらる気もしてしまいます。
近年、性教育がきちんと行われるようになったりして、10代の中絶は減少しているそうですが、40代以上は増加しているとも聞きます。
(参考→
日本の人工妊娠中絶法の歴史)
アイルランドのように法改正を国民に問うのはとても良いことだと思います。自分の国の将来を真剣に考え、どんな国にしたいか選択できるチャンスを与えられるアイルランド人がうらやましいなあという気持ちになりました。
政府主導で決められてしまうと、国民は考える機会を得にくく、責任も持ちずらいですよね。「YES」に票を投じた人は結果を喜ぶと同時にその結果を生み出したのは自分…という責任も背負うことになりますから、どうやったらそれが起こらないように出来るか考えようにもなると思うのです。
法改正に伴い、性や命についての教育もより大切。どうやったら中絶しなくてすむか、これを機に議論がそちらの方向へも発展したら素晴らしいですね。
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コメント
北の国からSHIGE
「法を逃れて年間数千人が英国などの外国で中絶手術を受けている。・・・
アイルランドは、国民の多くが中絶に否定的なカトリック教徒で、カトリック聖職者らは現状維持を訴えたが・・・
バラッカ―首相をはじめ主要政党は賛成した・・・
保守的とされるアイルランド社会が変化しつつある」と。
今月は、EU離脱後のアイルランドと北アイルランドの国境検問所交渉難航、ゴールウエイでのMicrosoft(?)情報センター建設中止、武田製薬のアイルランド大手製薬会社シャイアー買収、英国のEU離脱を控えて日本企業のアイルランドへの支社移転の動き等、アイルランドのニュースが目に止まります。
EUにおいてアイルランドの地位が向上したためでしょうか、日本とアイルランドの経済交流が緊密化したためでしょうか。
ちなみに、日本でコンタクトレンズ1,2のブランドであるアキュビューもボシュロムも、アイルランドでコンタクトレンズの生産をしています。(アイルランドはEU内でも法人税が低いためらしいですが)
2018/05/27 URL 編集
naokoguide
日本でも大きく報じられたのですね。アイルランドのニュースは日本ではめったにないこと…と思っていましたが、最近続いているようですね。
確かに、UKがEUを離脱したら、日本にとってはビジネス面でアイルランドの重要性が高まるのかもしれません。
そうなんです、アイルランドは実はコンタクトレンズ輸出国!ずい分前のことですが、アキュビューの工場視察へお客様をご案内し、日本輸出用の大量のレンズが製造されている様子を見たことがあります。
2018/05/28 URL 編集