土曜日にアイルランド国立博物館(National Gallery of Ireland, Dublin2)へ行った際、ミュージアム・ショップで素敵な本を見つけ、今、夢中になっていっます。
「ハリー・クラーク アイルランドの挿絵とステンドグラスの世界」 解説・監修:海野 弘(パイインターナショナル)そう、なんと日本語の本!
タイトルの日本語には気づかず、美しい装丁にひかれてページをめくってみたら日本語が飛び込んできて驚きました。

正確にはバイリンガル版。日本語主体ですが、英語の要約も記されています
ハリー・クラーク(1889~1931)は19世紀後半~20世紀初頭に活躍した(遅めの)アールヌーボー、アールデコ期を代表するダブリン出身の挿絵画家/ステンドグラス作家。
アンデルセンやペローの童話集、エドガー・アラン・ポーの怪奇小説の挿絵で知られますが、父親のステンドグラス工房の後を継ぎ、教会などの窓を飾るガラス制作も精力的に行いました。彼の手による素晴らしいステンドグラスはアイルランド各地に残されています。
この本は個人のコレクターの方の貴重なクラーク挿絵が集められたもので、装丁も美しいため、言語に関わらず人気の一冊なのだそう。
ショップの人の話では2014年の初版以来置いているとのことですが、なぜこれまで気が付かなったのか自分でも不思議。ハリー・クラークは以前から好きなので、彼に関する本のコーナーはよく見ていたのに。
31ユーロもして勇気がいりましたが、ここまで強烈に持っていたい!と思う本もなかなかないので即買ってしまいました!(日本では定価2800円+税で売られているようです)
読んでみると解説も秀逸。この海野弘さんという方、クラークの研究者かと思ったらそういうわけでもないんですね。美術やアールヌーボーだけではなく、世界のさまざまな分野の専門書を書いている博学な方のようで、プロフィールやほかの著書を調べてみて、その探求心や情熱に驚かされました。
ハリー・クラークの作品の魅力はもちろん、その人生や人柄、影響を受けた人なども含め、歯切れのよい文章で大変わかりやすく書かれています。
クラークがジェイムソン・ウィスキーのブローシャーに挿絵を描いていたこととか、W.B.イエーツと交流があったこともわかりました。クラークもイエーツと同じく、お母さんがスライゴ出身だったんですね。2人のマジカル・パワーは土地の精霊の仕業かも(笑)。
海野さんはクラークの挿絵によるイエーツ詩集を見てみたかった…と書いておられますが、私も同感です。幻想、ダークワールドなど、クラークが得意とした世界はまったくのイエーツ・ワールドですから。
(クラーク作のイエーツの「イニスフリーの湖島」と「ドゥーニーのバイオリン弾き」の挿絵はいろいろな詩人の作品を集めた「春」という詩集の中にあり、本書でも紹介されています)
同時代の別の挿絵画家の絵も豊富に掲載されていて、クラークとここが似ているとか、影響を受けているとかということがビジュアルで理解できるのも嬉しい。
児童書好きなので、カイ・ニールセンとかアーサー・ラッカムなど昔好きだった挿絵画家の名前も出てきて嬉しくなりました。
本書はクラークの「挿絵作品」と「ステンドグラス作品」という2つの大きなチャプターが中心ですが、私が夢中なのはどちらかと言うと「ステンドグラス作品」の方。実物が今もアイルランド中で見られるからです。
クラークの主だったステンドグラスがどこにあって、何が特徴で素晴らしいのか、ということが詳しく解説されています。当時はステンドグラスといえば教会の窓を飾るのが主流でしたから、クラークが手掛けた作品は人々が日常的に通う教会の窓を今も当時のままに飾っているのです。
ダブリン市内にもたくさんあるのになぜこれまで見に行かなかったのだろうか…と思い、早速、本書片手に近くの教会へホンモノを見に出かけてきました!
長くなるのでその話は後日。
この本のおかげで「ハリー・クラークのステンドグラスめぐり」がしばらくマイ・ブームになりそうです♪
※ハリー・クラーク関連の過去ブログ:
西の果ての島でステンドグラス鑑賞(イニシュマーン)/
今年のクリスマス切手はハリー・クラーク)/
国立美術館本館、6年ぶりに再オープン/
ビューリーズ・カフェ、再オープン
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コメント
ようはっぱ
うちの市の図書館には著書や訳した本関係が71件あるようです。
凄い。
その中から気になった本を2冊予約しました。
楽しみです。^^
2018/04/14 URL 編集
naokoguide
私も何冊かアマゾンで購入しました♪
2018/04/16 URL 編集