数日前のブログでもご紹介したクロハン村唯一のパブ、オコーナーズ(
O'Connor's, Cloghane, Co. Kerry)のことをもうちょっと書きます。
12歳の若きバンジョー・プレイヤーがえんえん演奏し続けた土曜日に続き、イースター・サンデーの夜は伝統音楽のセッションで盛り上がりました。
パブで演奏されるようなアイルランドの伝統音楽は、ツアー中のバスの中でお客様のためにCDをかけることはあっても、個人的にはあまり聴きません。もしも複数のパブがあって、演奏される曲に違いがあるのなら、コンテンポラリーな方を好むかも。
ところがクロハン村にはここ一軒しかなく、夜の娯楽はここしかないので毎晩通ってしまい、気がつけばこの夜もかなり上機嫌で、普段は絶対に聴かないような音楽に合わせてルルル~、チャチャチャ~と楽しんでいる自分がいたのでした(笑)。

宴もたけなわ。我々の仲間のひとり、キアンがマイ・バウルン(ヤギの皮を張った打楽器)で飛び入り参加!
オコーナーズでは飛び入り演奏、飛び入りシンギング、大歓迎。
演奏者のティーンエージャーの娘や、40年以上毎年訪れているというベルファースト出身の男性などが次々に登場して歌を披露。飛び入りにしてはみな、めちゃくちゃうまいのです。
熱気ムンムンの店内には老若男女(7~80歳位まで)、村人&訪問客が入り交じり、不思議な一体感がただよっていました。ふと気づけば、普段はアンチ伝統音楽な友人アンマリーまでもラララ~と歌っているではありませんか。
ウィスキーのグラスをかたむけながら、「最近、お父さんが聴くような曲が好きになってきのよね~」とかなんとか言いながら(笑)。

飛び入り参加の村のおじさんが歌った「ニワトリの歌」に敬意を表して、即席の「ニワトリ・ダンス」を踊る我々の仲間キーランとコナー。「ニワトリの歌」、あれは一体なんだったのでしょう。めちゃくちゃ可笑しくてナンセンスな歌詞と、ニワトリがのり移ったとしか思えないパフォーマンスが忘れられません…(その後、私たちはそのおじさんを「ミスター・チキン」と呼び、翌日もずっと彼のモノマネをし続けたのでした)

オコーナーズのマジックにかかり、なぜかセルフィ。サーフ仲間のジョンとリッチーと。3人ともなんだか亡霊っぽく写ってる…
楽器で奏でる速いテンポの曲から、民謡系のバラードまでさまざまなアイリッシュ・トラッドが演奏される中、スローな曲が始まるたびに、「今度こそローズ・オブ・トラリーよ!」と言い続け、毎回「違う~!」と突っ込まれ続けた私。
アイルランドにはカウンティー(州)ごとにその地域を歌った代表的な民謡があって、カウンティー・ケリーといったら「ローズ・オブ・トラリー(Rose of Tralee)」なのです。
(詳しくは過去ブログ参照→
「トラリーのバラ」咲く、トラリー・タウン・パーク)
どうしてもケリーでケリーの歌を聴きたい!と、(本当はツアーガイドなのに)この日ばかりはツーリストっぽいことを思った私は、ついに「ローズ・オヴ・トラリー」をリクエスト。
生粋のケリー・マンである歌い続けて60年!というおじいちゃまシンガーが、悲恋の歌を朗々と響くテノールで歌い上げてくれたのでした。感激。
あ~、民謡なんて好みじゃない…って思ってたのに(笑)。
子どもの頃、歌番組で演歌歌手が登場するとエクサイトする父母を見て、「私も大人になったら演歌が好きになったりしちゃうのかな…」と思ったものですが、こういうことか…、とやっとわかりました。
(演歌は今も聴きませんが、自宅で聴くJ-POPはすでてエイティーズです・笑)
オコーナーズには村の郷土博物館的な要素もあって、店内にはいろいろな興味深いものが。
その昔近くの浜でクジラが打ち上げられた日の新聞記事とか、ゲーリック・フットボール・チームの優勝写真とか。
ひときわ目をひくのは、これ。

窓辺に飾られた車輪と、天井に打ち付けられた鉄板に注目
実はこれ、第2次世界大戦中にドイツ軍の戦闘機がこの近くに墜落した時の残骸なのだそう。生々しい!

パブの表の壁にそのことを記したプレートあり。1940~43年の間に、イギリスの民間機(水上飛行機だったよう)含め4機がブランドン山に激突するなどして犠牲者を多く出しています

パブの前に置かれているコレは水上飛行機の一部…?
こういう小さな村の小さなパブがアイルランドには無数にあり、日々違ったドラマが繰り広げられていることでしょう。
これからは「ローズ・オヴ・トラリー」を耳にするたびオコーナーズでの楽しい夜が思い出され、ミスター・チキンを思い出して大笑いしてしまうかも。悲恋の歌なのに!(笑)
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