読書の秋とはよく言ったもので、この時期になるといつも、お気に入りの小説や詩を再び読み返したくなるから不思議。
今私が再読している小説には、
秋にぴったりなロマンチックな詩が引用されています。
九月が、彼女の月がきた
彼女のうちに息づく生命は、
この月にこそ弾む
彼女は葉を落とした木々を、
炉に燃える火を愛する。
だからぼくは一年のうちで、
この九月と十月とを
彼女に帰するのだ
ぼくの一年のすべての日々は彼女のもの
彼女はその多くの日々を
すでにぼくにとって耐えがたくし
あるいは謎多きものとしているが
それよりもはるかに数多くの日々を、
えもいわず、幸せなものとしてくれている。
彼女はぼくの毎日に一抹の香りをのこし、
ぼくがめぐらした壁には
彼女の影が軽やかにおどっている。
彼女の丈なす髪は、
ぼくのすべての滝にまつわり
ロンドンのすべての街路は、
思い出のくちづけをちりばめている。
(中村妙子訳、『シェルシーカーズ』ロザムンド・ピルチャー、朔北社より)
September has come, it is hers
Whose vitality leaps in the autumn,
Whose nature prefers
Trees without leaves and a fire in the fire-place;
So I give her this month and the next
Though the whole of my year should be hers who has
rendered already
So many of its days intolerable or perplexed
But so many more so happy;
Who has left a scent on my life and left my walls
Dancing over and over with her shadow,
Whose hair is twined in all my waterfalls
And all of London littered with remembered kisses. 作者は、
ベルファースト出身の詩人ルイ・マクニース(Louis MacNiece 1907-1963)。彼の代表作『秋の日記(
Autumn Journal)』第4章から。
9月の到来をこんなに美しく表現することの出来たマクニースは、きっと9月に特別な思い入れがあったに違いない…と思い、彼の経歴を紐解いてみると、やっぱり
誕生月は9月!そして
亡くなったのも、その56年後の9月。
さらに
来年2007年の9月は、マクニース生誕100周年。
ベルファーストのクイーンズ・ユニバーシティーでは、100年祭のイベントが企画されているようです。(詳しくは
こちら)
ルイ・マクニースの詩が書かれた敷石。ベルファースト・聖アン大聖堂前の「作家の広場」にて
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コメント
Pearl
そうしたら、naokoguideさんのブログに出てきたのでもうビックリ!!naokoguideさんが「シェルシーカーズ」を読み返していることも。
私は「九月に」を読んでいますよ~。
2006/09/18 URL 編集
naokoguide
ペネラピが9月生まれだから、リチャードがあの詩を読んだわけですが、実は9月生まれなのは、ピルチャーさん自身なんですよね~。
2006/09/18 URL 編集