この夏、「ケルズの書」をめぐるアニメーション『
ブレンダンとケルズの秘密』(原題:The Secret of Kells)が日本で公開されることになりました。

アイルランドでは2009年公開。8年越しでついに日本上映!
トム・ムーア(Tomm Moore)というダブリン出身の若手アニメーション映画監督のデビュー作で、アカデミー賞にもノミネートされ話題になった作品。
各シーンが切り取って鑑賞したい美しい絵画のようで、幻想的な古代アイルランドの世界で楽しみながら「ケルズの書」について知ることのできる秀作です。私は初めて観た時に泣き、最近久しぶりにDVDで観てまた泣きました。
ブレンダンという修道院で暮らす少年が、バイキングの襲撃から逃れて伝えられた「アイオナの書」を完成させる物語。これを見ればなぜ「アイオナの書」が「ケルズの書」となったのかという背景や、アイルランド各地に現存する石造りのラウンドタワー(Round Tower)の内部がどうなっているのか、なんてこともよくわかります。
個人的には、森に生えているワラビが印象的。渦巻き模様の起源はもしやここ?って真剣に思ってしまいました(笑)。
ちなみにブレンダンが森へ集めに行く木の実は、ガルナッツ(Gullnuts)、オーク・アップル(Oak Apple)などと呼ばれるもので、私も最近映画を見直して気になって調べて知ったのですが、これ、実ではなくて木の瘤(こぶ)なのだそう。日本語では「没食子(もっしょくし)」と言い、ブナ科の植物の若芽が変形して瘤になったもの。タンニンを多く含むため、これを抽出してインクとしたそうです。
(インクを抽出するシーンがおもしろい&映画後半で重要なので注目!)
そもそも若芽にインクタマバチという昆虫が産卵し、成長することで瘤ができるそうですからたくさんあるものではなく、探すのはさぞかし大変だったことでしょう。
トム・ムーア監督は宮崎駿監督のジブリ・アニメで育った世代で、作品もその影響を受けているそう。トトロやもののけ姫のファンだそうです。
一方、宮崎監督はアイルランドがお好きで、もうずい分まえのことですが、プライベートなご旅行をご案内させていただいたことがありました。「風の谷のナウシカ」や「魔女の宅急便」にはアイルランドの風景がでてきますし、これはご本人に確認していませんが私が見た限りおそらく「千と千尋の神隠し」はジャイアンツ・コーズウェイのフィン・マックールの伝説のオマージュで、ハープの曲、ファーマナのヤヌス像に似た地蔵のような像など、アイルランド的なものがたくさん散りばめられています。そう考えると、この2人のアニメ監督は両思い(笑)。なんだか興味深いですね。
トム・ムーア監督の『ソング・オブ・ザー・シー 海のうた』(原題:Song of the Sea)は私が知らぬ間に昨年日本で公開されていました。こちらは見ていないのでこれを機に観てみようと思います!
※上映日時や上映館の詳細はこちら→
劇場情報
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コメント
Wada
この「ブレンダンとケルズの秘密」をAmazonPrimeで偶然見つけて観ました。その後に直子さんの日記に記載されていないかを調べたら、やっぱり書かれてましたね。
ケルズの書の由来についてのアニメですが、絵がとても美しいし音楽もいいですね。
第三の目はクリスタルであり、それによって細密画が描けた、という仮説は納得できます。
今ではケルズの書が全ページデジタル化されていて画像がダウンロードできることを知りました。データをダウンロードして原寸大にプリントして鑑賞したいと思います。
アイルランドのことは、知れば知るほどに興味が深まります。
2021/02/15 URL 編集
naokoguide
いいですよね~、この作品。何度見ても好き。結末もいいですよね。
そうなんです、ケルズの書もデジタルで見られる時代。こちらに来てホンモンを見ても、そのときに開かれたページしか見られませんから、ありがたいですよね。
トム・ムーア監督の「ソング・オヴ・ザ・シー」、そして、まだ日本で上映しているかな?最新作の「ウルフウォーカーズ」もまだご覧になっていなかったら、ぜひお勧めです!
2021/02/15 URL 編集
Wada
トム・ムーア監督の「ソング・オブ・ザー・シー 海のうた」は、ブルーレイが日本でも発売されているようです。「ウルフウォーカーズ」は現在公開中なので観に行ってきます。
そして、何より驚いたのはトム・ムーア監督の作品の多くにKilaが音楽で参加していることです。音楽には疎い私ですが、Kilaは1999年に彼らが録音をしていたアトリエを訪れて取材・撮影したことがあり、私にはU2やエンヤよりも親しみのあるミュージシャンなのです。
直子さんの日記でKilaのことは書かれているのでしょうか。
2021/02/16 URL 編集
naokoguide
→http://naokoguide.com/blog-entry-1756.html
日本でもライブしてますよね、Kilaは。
アイルランドの伝統音楽をヒッピー、ソウルにした感じで、ユニークでいいですよね!
2021/02/16 URL 編集
Wada
田端にあるミニシアターで公開していたので「ウルフウォーカー」を今日観てきました。
トム・ムーア監督の絵は素晴らしいですね。手描きの良さがあります。
作品が宮崎駿監督の影響を受けていることが良く分かりますが、自然と開発、野生と文明の対立は人類にとって共通の課題ですからね。
kilaの音楽も、トム・ムーア監督作品に合っていました。
ジブリ的な作品が、アイルランドで受け継がれていることが面白いですね。
2021/02/18 URL 編集
naokoguide
とても良かったですよね。細部をもっと見たくて、もう1度観に行こうと思っていたら、ロックダウンになって映画館が閉まってしまいました。
ほんと、宮崎さんはアイルランドに影響を受けて作品を作り、その作品をアイルランド人が見て受け継いでいくという…というのが素晴らしいですよね。
ここにもケルトの渦巻きセオリーが。ぐるぐる、うずうず、連鎖していくのです。
2021/02/18 URL 編集