『Once ダブリンの街角で』のジョン・カーニー監督の新作映画『シング・ストリート(Sing Street)』が、近ごろまた日本で上映されているようですね。

邦題は『シング・ストリート 未来へのうた』、公式HPは
こちら日本では7月に公開されましたが、いくつかの劇場で再び上映しているようです。
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上映劇場情報➡
目黒シネマでは、12月3~16日がジョン・カーニー監督特集。『シング・ストリート』の他に、カーニー作品を2本立てで上映中
アイルランドでは今年の春頃に上映していたのですが、劇場公開を見逃してしまい、私も最近になって友人がプレゼントしてくれたDVDで見たばかり。
これまでのジョン・カーニーの作品の中でいちばん好き。すっかりはまって数回見ました!
ストーリーは上述の日本語公式HPに紹介されていますのでここでは省きますが、1980年代のダブリンが舞台。当時日本でも流行った80年代ブリティッシュ・ポップスが次々流れて懐かしい。
ジョン・カーニーは私と同世代で、やはり80年代にティーンエージャーでした。当時、日本はバブルの時代でしたが、アイルランドは大不況。それぞれ違った理由から、今いるところよりもっと広い世界へ出ていくことを夢見る時代だったと思います。
そして国は違えど、音楽が呼び起こす共感は古今東西を問わず。デュラン・デュランや『バック・トゥー・ザ・フューチャー』と聞くだけで、作中の登場人物にとたんに感情移入出来てしまうから不思議ですね。
映画の中で主人公のコナー率いる中学生バンドが次々に生み出すオリジナル曲が、これまたとてもいい。既成のものもあれば、この映画用に作ったものもあるようですが、元バンドマンだったジョン・カーニーらしく、『Once』同様、こちらもやはり音楽映画です。
ジョン・カーニーの作品はいつも、それぞれの時代のダブリンの「現実」を背景に描きながらも、ファンタジー(非現実、夢)が混在するのが魅力。主人公のコナーが学校のステージで演奏しながらアメリカのハイスクールのプロムを妄想するシーンがまさにそれです。ジョン・カーニーの作品らしさが小気味よいくらいに炸裂していて、何度見ても印象的なシーンです。
(彼のファンタジー&コメディ映画で、日本では公開されていない『ゾナッド(Zonad)』という作品があります。あのシーンはそれに相通じる痛快さがありました。『ゾナッド』はアイルランドの小さな村に宇宙人がやって来るお話!)
かれこれ10年くらい前のことですが、『Once』の日本上映が決まった時、日本からの取材陣をお連れしてジョン・カーニーのインタビューを取りに撮影現場にお邪魔したことがありました。(まさに『ゾナッド』の撮影中でした!)
『シング・ストリート』を見ていて、あの時に『Once』というタイトルに込めた意味について、ジョンとやり取りしたことをふいに思い出しました。
(過去ブログ➡
『ONCE』の監督ジョン・カーニーを訪ねて/
『ONCE』の意味って…?)
「ひとたび…すれば(ONCE)、この世はバラ色だ」と夢見ながらも、現実はそうでなかったり、そうできなかったり。それでも、あきらめて冷めた生き方をするよりは、「ONCE…」という想いで夢を見て生きていきたい。
これがジョン・カーニー監督が作品を作り続ける理由なのだと思います。
コナーの妄想シーンもまさにそれ。監督自身の人生哲学であり、アイリッシュネスであり、誰もが心の中に持っている、大人になってもなかなか折り合いがつけられない想いなのでしょうね。
この映画のロケ地について書こうと思っていたのですが、映画評みたいになってしまいました(笑)。
長くなりましたので、ロケ地のシング・ストリートについては後日。
余談:コナーのバンド仲間イーモン君はウサギ好き。作中に登場するウサギちゃんたちは、実はイーモン君を演じている役者の男の子のペットなのだそう。いつもウサギと一緒にいるので映画にもそのまま出してしまったのだそうです!
※日本版DVDは2017年2月発売予定です!
※ロケ地について書きました(2020年5月14日)→
シング・ストリートは実在します!…ロケ地いろいろ
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