ダブリンの
国立図書館(National Library)にて、ノーベル文学賞作家・
WBイエーツ(1865-1839)の特別展が行われています。

イエーツの亡き妻ジョージーと長男のマイケルにより寄贈された膨大な遺品の一部が展示されており、その中に、
イエーツが大切にしていた日本刀があるというので見に行ってきました。
1920年アメリカへ講演旅行に出かけたイエーツは、オレゴン州ポートランドで講演に感激した
「サトウ ジュンゾウ」さんという日本人から日本刀をプレゼントされました。
イエーツは自分の死後、この刀を贈り主に返還して欲しいと言い残しましたが、サトウ家は「一度お贈りしたものは、受け取らないのが日本の流儀」と返還の申し出を断ったそうです。
それは長さ30センチほどの刀で、妻のジョージーと並んだイエーツの写真の隣りでピカピカと光っていました。
インドや日本など東洋の精神世界に憧れを抱いていたイエーツ。日本人の精神性の象徴とも言える刀を保持するということは、イエーツには特別な意味を持っていたのでしょう。
この日本刀(「Sato's Sword」と呼ばれる)は、のちにイエーツの詩の中にも登場しています。(『Meditations in Time of Civil War』『A Dialogue of Self and Soul』)
イエーツは日本の能に関心を持ち
『鷹の井戸(Hawk's Well)』など能仕立てのお芝居を作っていますが、それに使用されたお面も展示されていました。
また、10代の頃から
オカルト的なことに関心のあったイエーツは、「
黄金の夜明け団」という秘密結社のメンバーでもありました。そこで授与された「生命の樹」というカラフルな昇給試験合格証や、愛用のタロット・カードなどの展示は、まさに魔法学校さながら!
多くの展示品の中で私がもっとも興味深く思ったのは、
イエーツの妻ジョージーの「自動書記」ノート。
52歳で初婚だったイエーツ、相手は25歳の若いジョージー・ハイド・リー。結婚して4日目ハネムーンの最中に、この妻に驚くべきことが起こります。なんと
彼女の肉体を通して霊界からメッセージが伝えられ、右手が自然に動き出し、ノートに絵や文字が綴られていったのです。ジョージーの「自動書記」はその後2年ほど続き、イエーツの創作に計り知れない影響を与えたのでした。
まるで子供のお絵かきのような絵や文字が綴られているのですが、これが霊界からのメッセージ。その中にある塔の絵は、新婚のイエーツ夫妻が暮らしていたゴールウェイ郊外の
バリリの塔(Thoor Ballylee)を連想させます。廃墟となった中世のタワー・ハウスを購入し、そこで生活しながら創作活動に打ち込んだイエーツですが、もしやそれは、霊魂からのお告げだったのかも…。
神秘的で美しい詩を次々に創作していったイエーツですが、そこには
スピリチュアルなエネルギーが働いていたのかもしれません。
子供時代の品、家族の写真、手書き原稿や手紙など貴重など貴重な展示の他、美しい映像を眺めながらイエーツの詩の朗読が聴けるコーナーもあり。
雰囲気満点のイエーツ・ワールドにどっぷりとひたらせてくれる、素晴らしいエキシビジョンでした。
The Life and Works of William Butler YeatsNational Library of Ireland
Kildare Street, Dublin 2.
Tel: +353 1 676 6690
月-水 9.30 - 19.45/木-土 9.30 - 16.45/日13:00 - 16.45
入場料無料
※追記(2014年12月15日):当初3年間限定の特別展として開かれましたが、その後も継続され、来年イエーツ生誕150周年を迎える現在も展示は行われています。
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コメント
higashimoto keiko
2008/12/11 URL 編集
naokoguide
コメントありがとうございます。フレンドトラベルさんとのツアー、よく覚えています。その節は、ありがとうございました!
イエーツの詩については、初期の代表作であるこの詩が読みやすく、美しく、お勧めです。過去のブログに載せていますので、ご参照くださいませ。
http://naokoguide.blog33.fc2.com/blog-entry-462.html
その他のご質問については、またおいおい、ブログ上でご紹介させてくださいませ。
2008/12/14 URL 編集