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ウェールズ「ケルト紀行」④ 崖の割れ目の聖ゴヴァン礼拝堂

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岩の割れ目に建つ珍しいチャペル、聖ゴヴァン礼拝堂

先週のウェールズの旅の様子をちらちらとご紹介させていただいていますが、ケルトに造詣が深いリピーターのお客様をご案内しての「ケルト紀行」でしたので、リサーチから実際のご案内まで、私にとっても非常に興味深い旅でした。
アイルランドに関係する場所や印象に残った箇所などは、これから少しづつご紹介していきたいと思います。

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まずは、お客様とあとあとまで「あそこは面白かったですね~」と話題にのぼったこちらの場所、岸壁の岩の割れ目に建つ聖ゴヴァン礼拝堂(St Gavan's Chapel)。
礼拝堂は高さ50メートルの崖の上…ではなくて下(!)にあるので、70段強ある石段を海へ向かって下っていきます。

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眼下のスレート屋根が目指す礼拝堂。小雨が降る日でしたので足場が心配でしたが、段差は低く、よく整備された石段でしたのでノープロブレムでした

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一体どこから礼拝堂内部に入るんだろう、まわり込んで海の方から入るのかな…と思って近づいったら、こんな狭い隙間に入り口があった!

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そして、内部。縦5.3メートル、横3.8メートルという小さなチャペルは11~13世紀建立

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窓からは岸壁と海が見えます

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そして、チャペルを通り抜けて海側に出るとこんな感じ。まるで岩の割れ目に挟まるように建っています。入り口に立つのは、楽しみにしていた場所に来られて嬉しそうなS様

聖ゴヴァンはアイルランド出身の聖人。AD500年頃にアイルランドのウェックスフォードで生まれ、海を渡って対岸のこの地へやって来たとされています。
この頃、ヨーロッパ大陸から多くのキリスト教伝道師がブリテン島、アイルランド島へ渡って来ていました。西ローマ帝国が崩壊して混乱に陥ったヨーロッパ大陸を逃れて、ローマの影響が少なく、まだまだ改宗の余地のある異教徒が多く存在していたブリテン島の辺境地や、(ローマ人がやって来なかった)アイルランド島に新天地を求めて渡って来たのです。
時を同じくして、聖パトリックによりキリスト教が伝来したアイルランドでは、パトリックに続くさまざまな伝道師がアイルランド島内のみならず、地理的に近いウェールズやスコットランドへも布教活動に来ていました。となると、当時のウェールズには「大陸から来た伝道グループ」と「アイルランドから来た伝道グループ」の2つのキリスト教グループがあったことになります。

2つのグループが海辺に到着して、ローマ人が築いた「ローマン・ロード」を伝って定住するにふさわしい場所・布教活動しやすい人の多い場所を目指すのですが、アイルランド人はそもそも好戦的気質に欠けていますから、大陸から来るグループに何かと後れを取りがちだったようです。さらにアイルランドの初期キリスト教は密教性・隠遁性が強いですから、崖沿いだとか、離島だとか、わざわざ孤立した過酷な場所を好んで住み、孤独の中で、ある意味気ままに修行する傾向がありました。
となると、「大きな町へはあちらのグループが行っちゃったから、自分たちはこの崖沿いで自由気ままにキリスト教ライフを送ろうか」なんてことになり、人里離れた不便な場所に定住しがち。よって、そういう「辺境の中の辺境」といったローケションにある教会や聖地は、「アイルランド人聖者のゆかりの地」である場合が多いのです(笑)。

話が長くなりましたが、そういうわけで、ここがアイルランド出身の聖者ゆかりの地というのは、私としては納得。とんでもない場所にあることが多いのです。
伝説によると、聖ゴヴァンはアイルランドからウェールズに向かう途中で海賊に追われ、命からがら海岸に到達。すると目の前の岸壁がガガッ~と開いてゴヴァンを取り込み、海賊から守ってくれたそうです。ご加護に感謝してこの地にとどまり、魚を採りながら隠遁生活を送り、海賊の来襲を土地の人々に伝える役目を果たして一生を終えたとか。
AD586年3月26日にこの地で亡くなり、現チャペルの下に埋葬されているそうですから、ここが聖ゴヴァンの墓所ということになりますね。

もうひとつ、伝説。聖ゴヴァンは愛用の銀の鐘をチャペル上部の鐘楼に取り付ける予定でしたが(とは言っても、当時はチャペルはなかったはずですが…)、海賊に持ち去られてしまいました。すると空から天使が現れて、鐘を奪回、二度と盗まれることのないように巨大な岩の中に埋めてくれたそうです。それ以来、聖ゴヴァンがその岩をたたくと、通常の鐘より何千倍も強い音で鳴り響いた…そうな。
で、その「鐘の岩(Bell Rock)」が今もあるというのですが、water edgeにあるという説明から、私はこの岩だと思うんですよね。

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ちょっと細長いけれど、鐘みたいな形。背後に見えているのがウェールズ南西部ペンブルックシャー(Pembrokeshire)の最南端、セント・ゴヴァンズ・ヘッド(St Govan's Head)です

教会にコブのようにくっついている岩もちょっと怪しい感じ。water edgeにあるという説明を読まなかったら、これだと思ったかもしれません。

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聖ゴヴァンの時代にはチャペルはなく、岩の割れ目の洞窟のようなところで生活していましたので、これであるはずはないですが

聖ゴヴァンが誰であったかに関しては別の説もあり、アーサー王の円卓の騎士のひとり、ガウェイン(Gawain)と同一人物であるという説もあるようです。
ウェールズにもイングランドやコーンウォール同様、「アーサー王伝説」があちらこちらに息づいており、今回の旅でもアーサー王の円卓(ローマ時代の闘技場)やら、アーサー王が投げた石(古代のドルメン)などいろいろ見ましたが、伝説ももとは歴史的真実から発生していますから、聖人であり、騎士であり、なんらかのスゴイ人が偉業を成したことには変わりないでしょう。

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Author:naokoguide
アイルランド公認ナショナル・ツアーガイド。2000年よりアイルランド在住。アイルランドでの生活、ガイド業を通してのさまざまな体験を皆さんと共有できたら嬉しく思います。最近の趣味はサーフィンとバラ栽培♪

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