日々のご案内が終わり、お客様からこんなお褒めの言葉をいただくと、まさに
ガイド冥利に尽きるというもの。
「とってもわかりやすい説明、ありがとうございました~」
「理路整然としたご案内、よくわかりました~」
「あなた立て板に水のようね~、聞きやすかったわ~」以前は「親切ね~」とか「アイルランドがお好きなのね~」「よくご存知ね~」と言われることが多く、それはそれで嬉しい気がしたものの、何か違うな~という気がしていました。なんだかレストランで、「素敵なところにお店を出されましたね~」とトンチンカンな褒め言葉を聞いているような気分…。
それが最近、
「(ガイディングが)わかりやすい」としきりに言っていただけるようになりました。
やはり「(お料理が)おいしい」とお客様に言わせてこそレストランの本領発揮、同じくガイドも、
説明が明瞭で、お客様をフムフムと言わせてこそ、知識と情熱を正しく使って仕事をしていることになるのでしょう。
お客様をフムフムと言わせるには、情報量はもちろん、それを見せる
「話術」が必要。
私は、
ガイディングとは「情報のデリバリー」だと思っています。
お客様にお伝えしている「情報」そのものは、ガイドブックや専門書と共有している部分であり、私のオリジナルでも何でもありません。要はその
「伝達の仕方」に、ガイドそれぞれの持ち味やオリジナリティーが発揮されるわけで、これは、同じ教科書を教えても先生によって教え方が異なり、生徒の理解度に反映されるのと同じこと。
情報や素材はもとより、その使い方、見せ方を工夫し、「話術」を磨くのが私たちガイドの仕事の本領と言えるでしょう。
ところで「話術」について、私には、経験から学んだひとつの法則があります。名付けて
「渦巻きの法則」、古代史跡に刻まれたこの文様から思いつきました~。

(
Knowth.comより)
これは、
ニューグレンジの墓室内の巨石に刻まれた謎の渦巻き文様。3つの渦巻きが結合するこの文様は、5200年前の新石器時代の人々が描いたものです。(金属が発明される以前のものですから、石器で彫刻されたもの。)
私の
「渦巻きの法則」は、まさにこのイメージ。
ひとつのトピックに対してだいたい3つくらいの具体例(年号、数字、人物の名前、歴史的事実などなど)を挙げ、それをぐるぐると掘り下げて話すのですが、
思う存分ぐるぐるしたら、最後は中心トピックに戻してあげる。ここが大切です。
非常に単純なことなのですが、その
「ぐるぐる」が戻ってきたときに聞き手はフムフムとなり、理解したという満足感を得るようです。
もし「ぐるぐる」が戻ってこないで、話が脱線したまま次のトピックへ移ってしまうと、聞き手は中心を見失い、「今何の話を聞いているんだっけ?」と不安になってしまいます。まさに、話のオチのない状態。
これだと、「あのガイドさん、ひとりでベラベラしゃべっているけど、なんだか内容がないよな~」と、一生懸命ガイディングしているにもかかわらず、空回りになりがち。
「渦巻きの法則」は、一般的な会話や、さまざまな現象にも当てはめることが出来ます。中心をはずさない会話をする人は魅力的。
単独で渦巻きを作るより、人と結合している方が何事もうまくいく。
あちらこちらで渦を作って脱線する人生も、中心さえしっかりしていれば大丈夫、などなど。
どうやら、
「つながっている」「元に戻る」「中心がある」という感覚は、人に安心感を与えてくれるようです。
どんなに「ぐるぐる」しても最終的には元に戻っていく。それがわかっていれば、不安にならずに「ぐるぐる」脱線することを楽しめますしね~。
5000年前も今も、人間が心地よく思うイメージ、大切だと思うものは変わらないということでしょうか~。
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コメント
四方俊男
2006/06/26 URL 編集
アンナム
「つながっている」「もとに戻る」「中心がある」これは決して忘れません。
いつも 物事を考察していると このような含蓄のある答えが出てくるのでしょう。
2006/06/27 URL 編集
naokoguide
2006/06/27 URL 編集
naokoguide
だから、ものすごく考察したり、特別な気づきがあったりしないと哲学に至らないのですが、古代人ってきっと、そんなことぜ~んぶわかっちゃってたんじゃなかろうか・・・って思うのです。
私が30数年かかって気がついていることも、古代人はもともと全部知ってたんじゃないでしょうかね~。人間は、もしかして退化している・・・?
2006/06/27 URL 編集