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『ケルズの書』が書かれたアイオナ修道院(アイオナ島・その2)

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聖地に輝く夏の日差し。星のように輝く太陽の上に、エンジェルが・・・!

少し間があいてしまいましたが、先月のアイオナ&スタッファ訪問の続きです。

聖コラムキル上陸の地にて聖者の気分・・・を味わった翌日、いよいよ『ケルズの書』が書かれたアイオナ修道院(Iona Abbey)を訪ねました。

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アイオナ修道院、全景

前回のブログの繰り返しとなりますが、アイオナの修道士たちが着手した『ケルズの書』がなぜアイルランドにあるのか?
書が作成された800年頃はバイキングの活動が激しい時代で、アイオナの修道院も襲撃をうけ、多くの修道士が殺されました。
生き残った修道士たちが未完の書をたずさえて小舟に乗り、「(アイオナ修道院を創始した)聖コラムキルの生誕地へ逃げよう!」と目指したのがアイルランド。ダブリンの北西50キロ程のケルズ(Kells, Co. Meath)に新たに創設された修道院にて完成させたため、『ケルズの書』と呼ばれるようになったのでした。

その後、ダブリンのトリニティーカレッジに寄贈され、現在に至ります。

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修道院の説明パネルにあった『ケルズの書』の写真。最後の審判のページ
(こちらのギャラリーに有名な数ページが掲載されています。ホンモノの美しさには及びませんが・・・。→ウィキペディア:ケルズの書

『ケルズの書』は全340枚のべラム紙(子牛の皮をなめして作った紙)の両面に書かれた、4つの福音書、いわゆる聖書です。
印刷技術が発明される何百年も前、聖書の作成は修道士たちの重要な日々の仕事でした。紙も、鳥の羽を加工したペンもすべて修道士たちの手作り。絵の具は鉱石の粉に樹脂を混ぜて作り、草木や昆虫などからも抽出したようです。
地道な作業の源は、信仰と、ほとんど執念・・・というくらいの精神力!

修道院の話に戻します。

『ケルズの書』が書かれた800年頃の建物は木造で、度重なるバイキングの襲撃により朽ちてしまいました。
その後、1200年頃、ベネディクト派の修道院として再建されますが、それも廃墟となり、現在の修道院は19世紀に土地の持ち主により修復されたもの。
オーディオガイドの詳細の説明を聞きながらじっくり見学できて幸せでした。

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聖コラムキルの墓所であった聖堂の復元。説明によると、800年代の始め、当時の修道院長はバイキングの襲撃からコラムキルの聖遺物(入れ物に入った遺灰)を守ろうとして、犠牲となり殺害されたそう・・・

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美しいハイクロスが2体。手前の聖ヨハネの十字架は聖コラムキルの墓所の目のまえにあります。これ、よく見ると、円環から飛び出した十字架部分が、通常よりちょっと長め&華奢。美しいのですが、やはり安定感に問題があり何度か倒れて壊れ、現在のものはレプリカ。修道院敷地内の博物館にホンモノの破片が展示されていました

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こちらの聖マーティンの十字架は1200年頃のもの。アイルランドで多く見られる800~900年頃のもとは違い、上に向かって先細り&十字架の横棒が円環よりはみ出さない、というこの時代特有の特徴が見られます。写真に写っている面は文様のみですが、反対側には聖書のシーンが彫られています(逆光でうまく写せませんでした)。その中に出てくる聖母子像は、『ケルズの書』の有名な聖母子のページをコピーしたのではないか、と説明にあり、これまた興味深い・・・

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教会内部。手前の美しい文様の石は洗礼盤

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シンプルで美しい祭壇は祈る人の想像力をかきたてます。現在ここで、20世紀初頭に創始されたアイオナコミュニティ(宗派を越えたキリスト教のコミュニティー。現代のケルト式キリスト教)による礼拝が行われています

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教会内部に2つある聖コラムキルのステンドグラス。アイオナの守護聖人かつ、アイルランドの3大守護聖人のひとり(その他2人の聖パトリック、聖ブリジッドのステンドグラスもありました)

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聖コラムキルの聖遺物。なんと、(伝説によると)聖コラムキルの枕!写真を近くで撮りすぎたので大きさがわかりにくいですが、50x30センチ位・・・だったでしょうか(枕にちょうどいいサイズ・笑)

これまで何百回となくお客様にご案内してきた『ケルズの書』発祥のストーリーですが、やはり百聞は一見にしかず。
これまで机上の知識だったものが、一体どんな環境で書かれたのか、ありありと想像出来るようになりまりました。

私が常々、不思議に思っていた『ケルズの書』の色使いについても、謎が解けた気がします。
あれだけ多彩な色をどのようにして集めたのだろうか・・・と不思議に思っていましたが、島の小さな博物館を見学して納得。長さ5キロ半、幅1キロ半という小さな島・アイオナは、なんと鉱石の宝庫だったのです。島の多くがピンク色の片麻岩(ピンク片麻岩って初めて見ました!)、その他に緑や茶色、黒など色とりどりの鉱石が島中に点在しているのです。

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記念に拾ってきたアイオナの石。いずれもセント・コロンバズ・ベイで拾い集めたものです。左の石のピンクと緑の縞模様は『ケルズの書』の色調そのもの

海の色、空の色、草木の色が鮮やかなアイオナ。こういった自然の配色から、書の色使いの発想を得たのであろうことも訪れてみてよく分かりました。

旅の楽しさは、こうやって二次元の世界が三次元に変わること。
修道院見学はもちろん、アイオナの風を感じ、海で泳ぎ、はじめて本当の意味で『ケルズの書』を理解したような気がしています。

アイオナ訪問記、あともう一回だけ、時間をみて書かせていただくつもりです♪

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夕暮れどきのアイオナ修道院。教会内部では礼拝が行われていました

〈関連過去ブログ〉
聖コラムキルの浜辺にて(アイオナ島・その1)
スタッファ島、「フィンガルの洞窟」

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アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドの山下直子です。2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。長野県上田市出身。

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