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山梨県立文学館の「村岡花子展」へ(「花子とアン」のこと、片山廣子のこと)

まるで私の一時帰国に合わせてくれたかのようなタイミングで放送が始まったNHKの連ドラ「花子とアン」を、毎日楽しみに見ています。
私が長年にわたっての『赤毛のアン』ファンであり、海外への興味の原点が『アン』であったことは折に触れてお話しさせていただいていますが(過去ブログ参照:『赤毛のアン』とアイルランド?アイリッシュだった…私のペンフレンド!など)、「花子とアン」は『赤毛のアン』を日本で最初に翻訳した村岡花子の生涯を描いたドラマ。
村岡さんのお孫さんである村岡恵里さんが書かれた評伝『アンのゆりかご 村岡花子の生涯』(2008年マガジンハウス)が原案となっています。

連ドラの放送に合わせて、懐かしいアニメ『赤毛のアン』の再放送(BSプレミアム・月曜午後6時半~)も始まりました。
今から35年前に最初に放送されたこのアニメ、当時家族みんなで毎週楽しみに見ていました。私とアンとの出会いは、本を読むより先にこのアニメ。風景描写もセリフも原作にとても忠実で、今となっては暗唱できるくらいに何度も繰り返し読んだ村岡さんの美しい日本語訳のトーンがセリフやナレーションに活かされており、あらためて感激しながら見ています。

ドラマ「花子とアン」の方は今週で放送3週目に入り、ティーンエージャーとなった英語&文学好きの花子が登場していますが、これまでの子供時代のエピソードには『赤毛のアン』のオマージュがちらほら散りばめられていて楽しかったですね。

・教室で朝市くんに石板をたたきつけるエピソード→赤毛をからかわれたアンがギルバートにしたのと同じ
・「空想の余地があっていい」という花子のポジティブシンキング→少女時代のアンの口癖
・村の教会は「阿母里(あぼり)教会」、小学校は「阿母(あぼ)尋常小学校」→アンが育った「アヴォンリー」村をもじっているらしい・・・
・お爺やんの口癖「そうさな」→マシューの口癖そのまま!(お爺やんの名前「周造(しゅうぞう)」は「マシュー」に由来しているそう・笑)

甲府アヴァンリー村(!)限定のオマージュかと思いきや、女学校に入ってからもありました。スコット先生のお部屋掃除を命じられた花子と醍醐さんにマリラの紫水晶のブローチ事件が?・・・と思いきやそうではなくて、先生のラブレター丸写し事件に発展。
『アンの青春』で、アンの教え子のアネッタ・ベルという女の子がお母さんの昔の恋人からのラブレターをつぎはぎして手紙を書く・・・というエピソードがあるのですが、テレビを見ていてこれを連想した人は相当のアン・オタクですね(笑)。

さて村岡花子の出身地であり、ドラマのロケも行われた山梨県甲府市でも「花子とアン」で盛り上がりを見せているよう。
山梨県立文学館で「村岡花子展」が開催されることを知り、週末に河口湖へ出かけた折に見に行ってきました。

村岡花子展 ことばの虹を架ける ~山梨からアンの世界へ~
場所:山梨県立文学館
開催期間:平成26年4月12日(土)~6月29日(日)

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文学館入口に村岡さんの写真入りの大きなサインが出ていました

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富士山の見える広々とした芸術の森公園内にあります。手前はエドガー・ミューラー作の富士山を描いた3Dストリートアート

村岡花子の生涯、ゆかりの人々、翻訳・創作作品の数々など充実した資料展示に加え、TV出演の時の貴重な画像が大画面で常時映し出されていました。
アン・シリーズのみならず、私が少女時代に愛読した英米文学の多くが村岡さんが初めて日本に翻訳・紹介したものであったことに今更ながら驚き。あしながおじさん、パレアナ、秘密の花園、リンバロストの乙女などなど・・・。あー、どれも懐かしい物語ばかり。

展示の中で特に注目したのは、村岡さんと親しい交流のあった歌人であり、松村みね子のペンネームでアイルランド文学を日本に紹介した片山廣子のこと。
説明や写真の他に、「K夫人によろしく」と書かれた村岡さん直筆の柳原白蓮宛ての手紙があったりして、2人の間の親しい交流を臨場感をもってうかがい知ることができました。

片山廣子については、過去に幾度かこのブログでも紹介させていただいています。
→過去ブログ参照:アイルランド文学の翻訳者・片山広子を偲ぶ片山広子『燈火節』を読んで

村岡花子と同じ東洋英和女学院の卒業生で、15歳年上。歌人・佐々木信綱を介して知り合い、花子は英米文学に精通した上流階級の夫人・廣子にさまざまな刺激を受けました。
当時としては珍しい、夫人自身の書斎を持っていたという廣子。『アンのゆりかご』によると、その本棚には花子が初めて目にする作家たちの本がずらり。オスカー・ワイルド、バーナード・ショー、ジョン・ミリントン・シング、ダンセニイ、グレゴリー夫人・・・といったアイルランドの文学者の作品が多く、ミッションスクールの寄宿生だった花子は毎週のように片山邸を訪れては一冊づつ寄宿舎に持ち帰り、「近代文学の香り」をいっぱいに感じながら読むふけったようです。
(オスカー・ワイルドの子供向け短編小説『幸福な王子』は、『しあわせな王子さま』のタイトルで花子が最初に日本に紹介しました)

片山廣子さんが私を近代文学の世界へ導き入れて下さった。そうして、その世界は私の青春時代を前よりももっと深い静寂へ導き入れるものであった。けれどもこの静かさは、以前のような、逃避的な、何者をも直視しない、正面からぶつかって行かない「精神的無為」の静かさではなくして、心に深い疑いと、反逆と、寂寥をたたえた静かさであり、内面的には非常に烈しい焔を燃やしながら、周囲にその烈しさを語り合う相手を持たないことから来る沈黙であった。『改訂版生きるということ』より「静かなる青春」(村岡花子)

この花子の言う「深い静寂」というのが、アイルランド文学からの影響なのでしょうか。

廣子への尊敬と友情の気持ちは生涯にわたって続き、結婚後に花子一家が大森に居を構えたのも片山邸が近かったからのようです。洗練された片山家の有り様や、夫人の人柄に強く惹かれていたのでしょう。
また、幼い子供を亡くし悲嘆に暮れる日々を送っていた花子に、マーク・トゥエインの『王子と乞食』の翻訳を勧めて励ましたのも片山廣子でした。(完成した翻訳本は泣き息子さんに捧げられています)

花子にとってはまさに「腹心の友」であった片山廣子ですが、ドラマ「花子とアン」では花子のもう一人の腹心の友・柳原白蓮との友情がクローズアップされるようですね。
予告などを見ても片山廣子の名がないのでちょぴり残念ですが、村岡さんの功績が再評価されることで、多大な影響を与えた片山さんについてもより多くの人が関心を持ってくれるようになるといいなと思います。

あと数日で日本を発ちますが、今後のドラマの進行は引き続き注目していきたいと思います♪
(アニメのアン、もう一回くらい見たかった・・・笑)

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甲府から河口湖へ行く途中に見た一面の桃畑に感激。まさに桃源郷そのもの。アンがグリンゲイブルズに来た時はリンゴの花が満開でしたね・・・

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アイルランド公認ナショナル・ツアーガイド。2000年よりアイルランド在住。アイルランドでの生活、ガイド業を通してのさまざまな体験を皆さんと共有できたら嬉しく思います。最近の趣味はサーフィンとバラ栽培♪

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