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ディングル史跡めぐり① ビーハイヴ・ハット

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隣り合うビーハイヴ・ハット(2014年3月撮影)

アイルランド南西部ディングル半島に位置するヨーロッパ最西端のスレー岬(Slea Head, Dingle, Co. Kerry)のことを先日のブログで紹介させていただきました。スレー岬をめぐる周遊路スレーヘッド・ドライブ(Slea Head Drive)は、その景観のみならず、ケルト時代からキリスト教時代にかけてのユニークな史跡が数多く残されていますので、順を追ってご紹介させていただきたいと思います。

数あるディングル半島の史跡の中でも私がいちばん好きなのが、その形からビーハイヴ・ハット(Beehives huts=「蜂の巣小屋」)またはアイルランド語でクロハーン(Clochán)と呼ばれる石造りの建物。

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まるで妖精の棲家(すみか)?とでも言いたくなるような、ちょぴりメルヘンチックな形状のビーハイヴ。2012年8月にご案内させていただいたT子さんとJ子さん

接着剤は全く使用せず、土地の石を円形に積み重ねて作られた蜂の巣型の小屋。アイルランド南西部のみに見られるユニークな建造物で、スレーヘッド・ドライブ沿いに数多く残されています。

一体いつ、誰が、どのような目的で建てたのか考古学的には明らかにされておらず、年代の特定がなされていない謎の建造物。
一般的には今から2500~3000年前、ケルト人がアイルランド島に入ってきたその頃、海からの外敵から身を守るために要塞として建造した・・・というのが通説。キリスト教伝来以降は、修道士たちが生活や祈りの場として利用したようです。

ビーハイヴ・ハットは単体ではなく、何体がまとまって建てられているのが普通です。
2~3体が連結していることもあれば、微妙な距離を置いて点在している場合もあり、地中に作られた秘密の抜け道でそれぞれがつながっていることもあります。

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小屋の上部が崩れ落ちてしまっていますが、内部はこんなにきれいな円形なのです


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ヨーロッパ大陸からロマネスク様式のアーチ型が伝わってくる以前の入口の作り方。平らな石を挟み込んだT字型の入口の作りは、ニューグレンジ(Newgrange, Co. Meath)など紀元前3000年頃の史跡にも見られる様式です

このビーハイヴ・ハット群はファハン・グループ(Fahan Group)と呼ばれ、ディングル・タウン(Dingle)からスレー岬(Slea Head)へ行く途中の2件の私有地の中に点在しています。
私がいつも見学させていただくのはこちら、メアリーさんのお宅の土地にあるもの。(この少し手間にも別のお宅で管理しているビーハイヴ群があります)

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この看板が目印・・・だったのですが、先月行った時には看板が風で吹き飛ばされてしまっていました・・・(2012年8月撮影)

白壁の家からメアリーさんが出てきますので、2ユーロの謝礼をお支払いして見学させてもらってくださいね。
この辺りはゲールタクト(Gaeltacht=アイルランド語を日常的に使っている地域)ですので、アイルランド語で挨拶をしたりすると喜ばれます(笑)。

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先月お客様をご案内した時に見かけた子羊ちゃん。ビーハイヴ・ハットの裏の斜面を飛ぶが如く駆け上っていました・・・カワイイ

【2017年9月追記】
人気者だったメアリーさんは昨年お亡くなりになりました。メアリーさんの意思を継いで、今はお孫さんのエイドーンさんがファハン・ビーハイヴ群を管理しています。
入場料ひとり€3、ビーハイヴの見学のほか、子羊を抱っこさせてもらえます。メアリーさんの住まいだった家を改装して、夏場はコーヒーやお茶を出すサービスも(有料)。運が良ければエイドーン手作りのビスケットやポーターケーキがあることも!

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アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドの山下直子です。2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。長野県上田市出身。

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