
夏のディングル半島を彩る真っ赤なホクシャ(Fuschia)が教会壁の赤砂岩によく合います(写真はすべて2012年8月撮影)
ウェールズのオガム石のことを書くために写真を探していたら、ずい分前に書きかけてそのままになっていた記事を発見したので、頑張って書き上げようと思います。
(関連過去ブログ:
ディングル遺跡めぐり① ビーハイヴ・ハット)
ディングル半島における初期キリスト教史跡の真珠(…と私が勝手に読んでいる・笑)とも言えるのが、こちらキルマルケダー教会(
Kilmalkedar Church, Co. Kerry)。この地域特有の赤砂岩と、ロマネスク様式が美しい12世紀建立の教会堂です。
馬蹄型のアーチが美しいロマネスク様式は、発祥地フランスからアイルランドに一世紀ほど遅れて伝わってきますが、その後に流行したゴシック様式に建て替えられてしまうことも多いため、現存するものは限られており、貴重です。

たたずまいがなんとも美しい

ロマネスク様式のいちばんの特徴である馬蹄型アーチ。教会内部には、やはりロマネスク様式の特徴であるブラインド・アーチ(壁がくり抜かれていないアーチ)もきれいに残っています

アーチ拡大。3重のアーチ。アーチにジクザグ文様や人頭がつけられているのはアイルランドならではの特徴で、アイリッシュ・ロマネスク様式と言われます
この教会には珍しい石碑が何体か残されていて、教会の建物だけでなく、そちらも見逃せません。

教会内部にあるラテン十字が刻まれた石碑。ケルト十字ではなく、ラテン十字なのがポイント。さらに、写真では側面になるので写っていませんが、ラテン語のアルファベットで「6世紀 DNI(Dominicという名を意味するそう)」と書かれています。ラテン語はキリスト教布教によってアイルランドにもたらされたものですから、キリスト教伝来直後の早い時期に、こんな南西の果てで盛んな教会活動があったことがうかがい知れます。この石は上部が割れてしまっていますが、円形のデザインがちらりと見て取れるので、もしやそこにはケルト十字があったのでは…などと考えてしまいますが、そうだったらより面白いですね

こちらは日時計の石。穴の開いているところに棒を刺して、その陰で時刻を見ました。このように上部が平らになった半円形の十字架は、巡礼路に多く見られるもの。ケリーの守護聖人聖ブレンダンの聖地でもあるこの地は、ディングル半島最高峰のマウント・ブランドン(Mount Brandon, 952m)への巡礼路の中継地でもあるので、巡礼者の巡礼ステーションに置かれた石でもあったようです

そして、ひとつ前のブログでご紹介したオガム石。石の先端には、上の日時計と同じような穴が開いていますが、アイルランドのオガム石には時々このような穴あきのものがあります。その穴にちょうど光が当たって写り、ご利益ありそうな感じの写真になりました

アイルランドの多くの廃墟となった教会跡地がそうであるように、ここも墓地。ケルト十字のユニークな墓石が多く、これはシャムロック付きの十字架
国内に数ある教会堂の廃墟の中でも、特に好きな場所のひとつです。ホクシャが咲く時期にまた訪れたいものです。

ディングル半島の生垣にホクシャがさかんに植えられたのは1920年頃。修道士たちの時代にはなかった花、現代の私たちだけのお楽しみですね
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