冬の夜長のアイルランドはDVD鑑賞に最適。
昨年のクリスマス前のことですが、人々がショッピングやディナーの準備にいそしんでいる時、私がクリスマスに向けてラストスパートで行っていたことは、英国のTVドラマ『ダウントン・アビー(Downton Abbey)』の総復習でした(笑)。
これまで飛び飛びでしか見ていなかったこのドラマ、今回こそキャッチアップしよう!と意を決して、DVDボックスを購入。クリスマスの夜にスペシャルが放送されるので、それまでに全4シーズン+2回のクリスマス・スペシャルを全部みるぞ!と意を決して、毎日TVの前にすわって泣き笑いしていたのでした。
話には聞いていたものの、本当に面白くてすっかりはまってしまい、寝る間も惜しんであっという間に見てしまった。おそらく全シーズン合わせて35時間くらいあったと思います(笑)。

英ITV制作、英国&アイルランドで2010年より放送されているTVドラマ。2013年秋にシーズン4が終了し、今年放送されるシーズン5の制作・撮影もそろそろ始まるようです。英・愛ではもちろん、アメリカでも大人気(
ITVのオフィシャルHP(英語))
時は20世紀初頭、英国ヨークシャーの大邸宅『ダウントン・アビー』で暮らすグランサム伯爵一家と、屋敷の使用人たちの人間模様を描く一大長編フィクション。
伯爵の後継者問題、娘たちの結婚とその候補者たち、意地悪な使用人、身分違いの恋・・・などなど、これでもかというくらいにネタ満載。
ディティールも凝っていて、屋敷の調度品、エレガントな衣装(時代の流れによって女性のドレスが徐々にローウェストになるなど、流行の変化もちゃんと描かれています)、当時の生活習慣なども大変興味深いのです。
ストーリーはタイタニック号沈没(1912年)の知らせが来るところから始まり、シーズン2では第1次世界大戦勃発から終わりまで、1920年になったシーズン3ではアイルランド独立期の騒乱・政治的混乱についても言及され始めます。
日本ではスターチャンネルにてシーズン3の放送がちょうど始まったところのようですね。(詳細は
こちら)
今後の展開を楽しみにしておられる方も多いことでしょうから詳しい内容はお話ししませんが、シーズン2も良かったですが、シーズン3、すごくいいのでお楽しみに。あ~、泣きました、笑いました、画面に向かって(笑)!
(2/6追記:今年の5月より、NHK総合でも放送が始まるそうです!)
(※ここからネタばれあり!)
このドラマにはさまざまなカップルが登場しますが、私のいちばんのお気にリは伯爵家の三女シビルと、屋敷の使用人としてダウントン・アビーにやって来たアイルランド人のトム・ブランソン。
2人はシーズン2で身分違いの恋を成就させてダブリンに移り住むのですが、シーズン3で再びダウントン・アビーに戻ってきます。それもなんと、トムがアイルランドの独立運動に関わり追われて逃げてくる・・・というドラマチックな成り行きで!
アイリッシュ・アクセントで話すトム・ブランソンですが、演じているのがそもそもアイルランド人俳優、今年34歳になるアレン・リーチ(Allen Leech)。

トム・ブランソン役のアレン・リーチ。屋敷のおかかえ運転手役なので、シビルと結婚する前はいつもこの姿でした
シーズン4の中で、パーティーで伯爵夫人に出身地を聞かれてウィックロウのブレイ(Bray, Co. Wicklow)だとトムが語るシーンがあるのですが、アレン・リーチ自身もブレイのお隣りのキライニー(Killiney)の出身。
アイルランド&英国のTVドラマ/映画などに10代終わりから登場し始め、この『ダウントン・アビー』でブレイクしたようです。
(余談ですが、トムの祖父はゴールウェイの牧羊家、しかもブラックシープの。・・・英国人が考えるステレオタイプのアイリッシュ像にちょっぴり苦笑)
英国貴族ばりばりのダウントン・アビーの中で、反骨精神旺盛なアイルランド人魂をちらつかせながら、三女のシビルに一途な恋心を抱くトム・ブランソンのキャラはとても新鮮。彼を通して、その時アイルランドでは・・・という話がちらりちらりと出て来るのも興味深いところです。
まずシーズン2では、いとこがイースター蜂起で殺されたことをトムが怒りをこめてシビルに語るシーンがあります。ダブリンのノースキング・ストリートを歩いていて、「反逆者かもしれない」という推測のみで英国兵に撃たれたと。(第3話)
そしてシーズン3。メアリーの結婚式に出席するためシビルと共にダウントンに帰ってきたトムは、英国貴族のしきたりに迎合せず、ディナーの席でもアイルランドの政治的混乱を熱く語り続けます。
その後、雨の夜に突然屋敷に姿を現し、独立戦争最中のアイルランドでドラムグール(Drumgoole)伯爵なる人物の城に火が放たれ、その暴動の扇動者として警察に追われている、と説明するのですが・・・。
(その後の話の流れで、グレゴリー夫人やマルケビッチ伯爵夫人の名も言及されています)
さて、一体このドラムグール伯爵の城というのは実在したのか、焼き放たれたというのは事実なのか、『ダウントン・アビー』がどこまで歴史的史実に忠実なのか興味のあった私は、早速手元の歴史の本を参照したり、グーグルしたりてみました。
すると、そのような関心を持ったのは私だけではなかったようで、ネット上にこんな記事を発見。私より先に調べていたアイルランド人がちゃんといたのでした(笑)。
↓
Downton Abbey’s Lazy Irish History(「ダウントン・アビーの怠惰なアイルランド史)
この方の調べによると、1920年代にドラムグール伯爵の城が焼かれたという記録は見当たらないとのこと。1649年にクロムウェルに占領され、その後ホテルになったドラムグールの城ならあるそうですが。(どのホテルなのか、そこまでは書かれていませんでした。)
ドラマの中では、ドラムグール伯爵家はダウントンのグランサム伯爵家と知り合い。トムの話を聞いて誰もが「まあ、なんという悲劇!」という反応を示す中、毒舌家のグランサム伯爵夫人(=ヴァイオレット。おばあさんの方)がぽろりと、「Well, yes or no. That house was hideous!(さあ、悲劇じゃないかもしれないねぇ。あの屋敷は悪趣味だったからねぇ!)」と言うのが可笑しかったです(笑)。
上記の記事を書いた方も言っていますが、1920年代のアイルランドは独立に向けての騒乱期で、ドラマの中にちらりと挿入させるにふさわしいような出来事満載の時代。トムが追われた理由も歴史的史実とマッチングしていたら面白かったのにな~と、ちょっぴり残念に思いました。
ちなみにこの話はシーズン3の第4話。そして第5話では、トムとシビルのカップルにあり得ない~!!!というくらいの恐ろしい悲劇が起こります。これはシビル役の女優さんが次のシーズンへは出演しないことに決めたから・・・らしいのですが(涙)。
伯爵家の3姉妹の中でシビルがいちばん好きだった私は、この後のエピソードを見る気力が失せる程、落ち込みました・・・。
物語やドラマの舞台を訪れるのが好きな私は、ロケ地となっている城に興味がわいています。
ダウントン・アビー役となっている城は、英国ハンプシャーにあるハイクレア・キャッスル(
Highclere Castle)。800年の歴史のあるこの城は、現在も伯爵が所有、生活している生きた城です。
シーズン2で第一次大戦中に野戦病院として城を提供する話が出てきますが、これはハイクレア城で実際に行われたことなのだそうです。ドラマに負けないくらい、さまざまな歴史がありそう。
4~9月の間は日を限って一般公開されているようですので、機会があれば訪れてみたいものです♪
(ドラマの影響で2014年春の入場チケットはすでに売り切れのようですが・・・!)
P.S. すっかり忘れていましたが、もうひとつの小さなアイリッシュ・コネクションがありました。使用人のミスター・ベイツ(この方もかなりの波乱万丈!)のお母さんはアイルランド人。どの回か忘れましたが、ミスター・ベイツ本人が「肌が白いのはアイルランド人のお母さんゆずり」というようなこと言っていたかと思います。
そして恐らくその名前からして、あの意地悪な使用人ミス・オブライエンもアイリッシュ・コネクションがあることでしょう。
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