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ケルトの時代へタイムスリップ…秘境ドゥーン・フォート

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湖の中島に浮かぶようにそびえるドゥーン・フォート。何ともミステリアスなたたずまい・・・(写真はいずれも2013年11月撮影)

昨年11月にコーディネートさせていただいた紀行番組「地球絶景紀行」(BS-TBS)が、本日放送になりました!
アイルランド北部の絶景を3箇所含めた旅を・・・というご依頼で、奇岩が連なる珍景ジャイアンツ・コーズウェイ(Giant's Causeway, Co. Antrim, Northern Ireland)、ヨーロッパ一高い海食崖スリーヴリーグ(Sliabh liag, Co. Donegal)に加えて今回ご案内させていただいたのが、南ドネゴールの秘境ドゥーン・フォート(Doon Fort, Co. Donegal)。

ドゥーン・フォートはアイルランド人でも知る人の少ない隠れ家的な場所です。
過去にこのブログで、犬のローヴァーの話として紹介させていただいたことがありましたが、砦そのもののことは私自身の思い入れが強すぎることもあり、なかなか書けずにいました。
過去ブログ:さようなら、ローヴァー

ロック・ドゥーン(Lough Doon)と呼ばれる湖の中島にある、2500年前のケルト時代の砦。この湖自体が外界から切り離されたかのような、ひと目につかない場所にあります。
砦のある島へ渡るには小さな手漕ぎボートを漕いで行くのですが、そのプロセスがこれまたロマンチック。おそらくケルト人も同じようにボートを漕いで渡ったはず。

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撮影の日は近くに住む地元の男性パトリックさんがボートを漕いで連れて行ってくれました

上の写真はボートを漕ぎ出してしばらくして、やっと砦が見えてきた!というところ。
今から10年程前のことですが、地元の友人に連れられて初めてここへ来た時のことを今でも思い出します。漕いで行った先に何があるのか知らされていなかったので、前方に突如として砦が見えた時には思わず歓声を上げてボートの上で立ち上がってしまいました。(その結果、ボートが揺れて落っこちそうに...笑)。
あたりはしんと静まり返り、聞こえるのは風の音とボートを漕ぐ音だけ。太古の昔、ケルト人がここを儀式の場、緊急時の避難所として大切に守っていた時代にタイムスリップしたかのよう。

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約5mの高さの砦の上から。砦は円形に見えますが実は楕円で、直径約56m×26m。基壇部分は幅が4mもあり、脱出用の秘密の抜け道が今でも壁の中に残っています

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砦の上を歩く私たちの影が草むらに...

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苔むした石壁。これはリッチェンと呼ばれる地衣類で、空気の洗浄度の高い場所にのみ生息するという植物

撮影した日は11月とは思えないよう晴天&風もなし。風が強い時は湖面にさざ波がたち、ボートを漕ぐにも苦労することがあるのですが、この日の湖はまるできらきら光る鏡のようでした。

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対岸の丘の上から見晴らすドゥーン・フォート。アイルランド語でドゥーン(Dún=Doon)とは「(石造りの)砦」の意味

ケルト人はクラン(部族)単位の小王国を作り、それぞれ孤立して生活していました。その時代は敵から身を守ることが生活の中心だったので、砦は居住用というより、緊急時の避難場所。このように敵が攻めにくい立地が好まれました。
このエリアには多くの類似した砦が存在したようですが、現在に至るまでほぼ完全に近い形で残っているのはドゥーン・フォートのみ。数十年前に大掛かりな修復が行われていますが、近年また草やツタが石壁を覆ってダメージを与えているので、さらなる修復が必要・・・と地元の人たちは考えているようです。

ここは現在も私有地で、マッキュー(McHugh)さん一族が湖全体とその周辺を所有しています。かつては一族総出で観光客をボートで島へと案内していたようですが、家族のメンバーがひとりふたりと減っていき、現在湖のほとりに住むのはジョー・マッキュー(Joe McHugh)さんお一人。

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撮影終了後の記念撮影。向かって左から2番目がジョーさん、かつては彼もボートを漕いで観光客を砦へと案内していたそう

10年程前に初めてドゥーン・フォートを訪れて以来、機会あるごとに再訪していますが、その度ごとにいろいろな思い出があります。
ローヴァーがいた頃のこと、砦の中でピクニックをしたこと、天候が急変して大慌てでボートを漕いで雨に濡れながら戻ってきたことも・・・。
いつ訪れても変わることなく、太古のロマンを夢見させてくれるドゥーン・フォート。私にとっての最もマジカルな場所です。

ぜひ行ってみたいという方のために道順を下記に記しますが、番組でも「旅人」がそうしたように、最寄りのアーダラ村(Ardara, Co. Donegal)のパブなどで地元のタクシーまたは観光の手助けしている団体の人を呼んでもらい、連れて行ってもらうのが確実でしょう。
(湖はところどころ浅い部分があったり、天候によっては漕ぐのが難しいことがありますので、必ずボートを漕ぎ慣れている人と一緒に行ってくださいね)

★最寄りの村アーダラからドゥーン・フォートへの行き方:
アーダラからPortnoo方面へ5キロ程北上(R261)→「Rossbeg and Doon Fort」の立て看板を左折(L2493)→200m程行くと右手にSt Conall's Schoolあり、さらに50m程進み、「Doon Fort」の立て看板のあるとても細い道を右折→500m程坂を登り、登り詰めたところ左にジョー・マキューさんの家あり。
ここでボートを借りたい旨をジョーさんに伝えて料金を払います(決まった金額はありませんが、ひとり10ユーロ位が目安)。車はジョーさん宅の少し手前右に停めるスペースがあります。

★ボートについて:
ジョーさん宅から坂を歩いて200m程下ると湖があり、そこにボートがあります。通常使える状態のものは1~2艘あるかどうか。穴があいていないか要チェックです。戻ってきたら、ジョーさんにひと言その旨を伝えてから出発するのがいいでしょう。

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10年前に初めてドゥーンフォートを訪れた時の写真。ボートの先頭に飛び乗ってきて水先案内人となってくれていたローヴァー、懐かしいです(過去ブログ:さようなら、ローヴァー

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コメント

あい

見ました
絶景紀行、拝見しました。2009年にドラムクリフでお会いした翌日、バスエーランのスライゴー発ツアーに乗り行きました。スリーブリーグはもちろん、
Glencolumbkilleまで行けたことにも感激しました。
秋はほんとうに静かなんですね。

naokoguide

Re: 見ました
あいさん、ご覧いただきありがとうございます。あの時は7月くらいでしたね、番組の撮影は11月でしたので夏とは印象がまた違ったかと思います。
また機会があればぜひぜひいらしてくださいね!コメントありがとうございました。

ジャックのぱぱ

超、お久しぶりです。
覚えておられないかも知れませんが、
お久しぶりです。
相変わらず、当方アイリッシュウルフハウンドを愛し
ウサギの寝床の住宅事情の日本で3頭と暮らしています。

そう言うわけで、
行ける予定など全くないアイルランドに憧れ続ける毎日です。
最近、クラダリングなる物を聞知し、
非常に欲しくなり検索したり問い合わせたりするのですが、
当方、巨漢でサイズが#27(右手中指の場合)なので、
未だに入手にいたりません(涙)
以前、ご紹介のあったお店の婚約指輪のような高価の物ではなく、
シルバーの定番っぽい形の大振りなリングを、
輸出されているお店か、
日本で販売されているお店をご存じでしたら、
ご教示願えると幸いです。

突然厚かましいコメントで申しわけありません。

ヨロシクお願いいたします。

naokoguide

Re: 超、お久しぶりです。
ジャックのばばさん
その節はお問い合わせいただき、ありがとうございました。もちろん覚えております!ケリーさんのところの子孫のウルフハウンドたちは、元気にしていますか?

クラダリングですが、東京都内のこちらのお店で輸入販売しておられます。お値段もシルバーのものでしたら当地で買うのとあまり変わらない金額で販売しておられるようです。
http://www.boudicca.gr.jp/

お役に立てるといいのですが。また結果お知らせくだいませ!

ジャックのぱぱ

ありがとうございます。
ウチの三兄弟は6歳・6歳・5歳ですが、
元気いっぱいです。
7歳で長寿のお祝いをしてもらえるという犬種ですが、
1日でも長く彼らとハッピーライフを過ごしていきたいと思っています。
クラダリング
どうしても欲しくて欲しくて探しまくっていました。
大きなサイズに対応してもらえたらうれしいのですが。
それでは、入手できましたらまたの機会にご報告させていただきます。

kumi

在ドネゴールの久美です。この夏このDoon Fortへ制覇したいと思います。(笑)詳しい情報ありがとうございました。

naokoguide

久美さんへ
ぜひ行ってみてください!
コメントありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします♪

戸田 四郎

ドゥーン湖ってどの辺りですか?
今年で海外旅行を終えたつもりでしたが、再び行きたい所が、北アイルランド、マン島、チェスタ、グレンコーです。
私達は、行きたい所を一気に全て行くので行先を限定して旅行していますが、北アイルランドのジャイアンツコーズウエイを見るつもりですが、アイルランド島の最北端、更にスリーブリーグ、ドゥーン湖も行きたくなりました。
ドゥーン湖はどの辺りにあって、そこには簡単にアクセスできますか?
今年~来年4月まで予定が一杯で、今検討しているのが、来年6月中頃か8月末になります。観光にはどちらが良いでしょうか?
レンタカの場合、ベルファーストで借りて、アイルランドへ車を持ち込む時に何か手続きが必要でしょうか?

ご多忙中申し訳ございませんが回答宜しくお願いします。

naokoguide

Re: ドゥーン湖ってどの辺りですか?
戸田四郎さま、コメントありがとうございます。
ロック・ドゥーンはアイルランド北西部カウンティー・ドネゴールのアーダラ(Ardara)、ポートヌー(Portnoo)近くです。行き方についてはブログ上に記載しておりますのでご参照ください。
観光化された場所ではないので、フォートへ行くにはボートを自分で漕がなくてはなりません。湖は浅く、ボートを漕ぎ慣れていない方には簡単ではありませんので、アーダラのツーリストインフォメーションに事前に連絡するなどして、誰か漕いでくれる人がいないか事前にアレンジするなどした方が確実だと思います。
http://www.discoverireland.ie/Activities-Adventure/ardara-visitor-information-point/86639

季節については1月か6月かと聞かれたら6月とお答えすると思いますが、6月か8月末でしたらどちらも良い季節ですし、天候もその時次第ですので、どちらでもご自身の都合の良い時でいいと思います。

レンタカーで北アイルランド・アイルランドを超える場合の手続きは必要ないですが、借りる場所と返す場所が違うとその分料金が割高になります。

以上、お役に立てれば幸いです。たのしく安全なご旅行になりますよう願っております。

ひろ

春に行ってきました
今年春にアーダラに行く機会がありまして、以前に見た地球絶景紀行の記憶でドゥーン・フォートに行ってきました。
現地にツテがあったので、Ardara GAP Heritage & History Groupを紹介していただきました。
本当に美しいところで感動しました。
現地でも色々訊きましたが、ボートは慣れてない人でないとかなり難しいのではないかと思いました。

naokoguide

Re: 春に行ってきました
ひろさん、コメントありがとうございます。
番組を見てドゥーン・フォートに行ってくださったとはうれしいです。
そうですね、現地の人のヘルプがないとボートが難しいですね。あの番組の時も、現地の方からGAP Tourismを紹介していただきました。情報ありがとうございます。

http://www.glenties.ie/2010/05/28/gap-tourism-glenties-ardara-portnoo-activities/
非公開コメント

naokoguide

アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドの山下直子です。2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。長野県上田市出身。

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2023年12月2日(土)東京すみだ
2023年12月3日(日)所沢
ケルティック・クリスマス会場にて
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滋賀・彦根にて講演!ブログ参照
2023年11月28日(火)
12:50~ ※オンライン参加可
「緑の島アイルランドの魅力」 詳細はこちら

岡山市にて講演!ブログ参照
2023年12月9日(土)
10:45~/13:00~
「モンゴメリ作品をケルトで読み解く」 詳細はこちら

東京・アイルランド大使館にて講演!ブログ参照
2024年1月12日(金)
10:30~/14:00~
「アイルランドの集い~北アイルランドを中心に魅力を語る~」
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東京・銀座にて講演!ブログ参照
2024年1月14日(日)
13:30~ ※オンライン参加可
「アイルランド春夏秋冬の魅力」
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