
宿の入り口の扉の上には創業者チャーリー・ハンターさんの名の元に発行された、古き時代を偲ばせる、お酒やタバコの販売許可証が
ダブリン南部のカウンティー・ウィックロウ(Co. Wicklow)には昔のお屋敷などを利用したホテルが数多くありますのが、中でもユニークな宿がこちら、ハンターズ・ホテル(
Hunter's Hotel, Co. Wicklow)。
日本から来てくれたお友達と一緒に、久しぶりに泊まりに出かけてみました。
1825年創業の、アイルランドでいちばん古いコーチング・イン。コーチング・インとは馬車の時代の街道沿いの宿屋のこと。日本風に言うと旅籠屋(はたごや)…といったところでしょうか。
現在も創業時から代々続いて、ハンターさん一家が経営しています。

2エーカーの広々とした敷地の脇には川が流れ、庭の花々の手入れが行き届いていることでも有名
時流に乗ってモダンに改築する宿が多い中、ハンターズはみしみし音を立てる床が今も残る貴重な宿。
お部屋からもレストランからも、古い窓ガラスから見えるのはお庭の緑。やわらかい緑が、華美なところがひとつもないシックな内装とぴったり合って、心の底から落ち着いた気持ちになれる宿のひとつです。

ディナー・タイム前のまだ静かなレストラン。窓辺の花がなんとも愛らしい

客室はそれぞれ形や内装、カーテンやソファの柄がお部屋ごとに違っています

窓の外の緑が自然のカーテンのよう
お部屋にチェックインした後、お庭でティータイム。ハンターズのスコーンはミニ・サイズなので、ディナーの前でもお腹に応えません。

緑の中でいただく濃いめのお茶とスコーン。優雅なティータイム…のはずが、なんとスコーンにつけるジャムに寄ってくる蜂たちを追い払うのに忙しく、優雅さとはほど遠いものになってしまったのですが(笑)

お庭には秋の花が。コスモスがきれい

この大きなグンネラは、ハンターズに来るたびに見るのが楽しみなもののひとつ

バラの花?と思いきや、なんと八重咲きのタチアオイでした!
宿の裏手は菜園になっていて、レストランで出される野菜の多くがそこで作られています。
ディナーのおいしさもさることながら、今回私が感激したのは朝食に出されたシンプルな卵やソーセージ。

アイルランドの田舎は本当に食事がおいしい。家族経営の農家で丁寧に作られた素材ばかり
こちらのハンターズ・ホテルには過去数年にわたりお世話になっており、いろいろな思い出があります。
もう5~6年前のことになりますが、
エッセイストの酒井順子さんをご案内して泊まったのもここでしたし、
Leeの花カレンダーを撮影した時もここでたくさんのショットを撮らせていただきました。
そしてハンターズといえば、今は亡き大女将のモーリーンさんをいつも思い出します。3年ほど前に93歳でお亡くなりになる間際まで、ホテルの中をかくしゃくと歩き回っては宿泊客と楽しげにおしゃべりしておられる姿を今も思い出します。

花カレンダーの撮影の際に撮らせていただいたモーリーンさんの写真(2008年撮影)。この時すでに90歳でいらっしゃったと記憶しています
酒井順子さんがエッセイの中で「カワイイ」おばあさん、と書かれたモーリーンさん。酒井さんをご案内してハンターズに来た時もやはりお庭でティータイムをしたのですが、背筋をしゃきんと伸ばしたモーリーンさんがお茶を運んできてくださいました。
今も家族経営の温かい感じは変わることのないハンターズですが、モーリーンさんのいないハンターズはやはりちょっぴり寂しく感じられました。

お庭の脇を流れる川のそばから見たハンターズ全景。いつまでも変わらぬ昔気質の宿であって欲しいものです
- 関連記事
-
コメント