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焚き火と満月の夜…セント・ジョンズ・イブ(イニシュモア島)

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焚き火を囲んで集う村人たち。イニシュモア島にて

アランニット本の取材でアラン諸島に滞在しています。
昨晩はセント・ジョンズ・イブ(St John's Eve)という夏至と関連したお祭りの日で、ラッキーにもその滞在中のイニシュモア島でその場に居合わせることが出来ました。

セント・ジョンズ・イブというのは聖ヨハネの日の前夜祭。イエス・キリスト生誕(クリスマス)のちょうど6か月前である6月24日が洗礼者ヨハネの生誕日で、キリスト教ではその日を「聖ヨハネの日(St John's Day)」に定めています。
たまたま夏至に日が近いことから、キリスト教以前の習慣である夏至祭と結びつき、ヨーロッパや南米のカトリック国では前夜祭(イブ)に火をたくなどしてこの日を祝う習慣があります。
有名なスペインのバレンシアの火祭りはこれにちなむものですし、白夜になる北欧諸国で盛大に行われことでも知られています。

アイルランドでは西海岸地方にこの伝統が残り、各地で夜を徹して焚き火が行われます。私たちが居合わせたイニシュモア島では、島の14の村ごとに焚き火が行われ、なんとも神秘的な様子でした。

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夜10時頃。石灰岩の天然の石だたみの広がるアラン諸島独特の景観の中、ソファを持ち出してくつろぎ始める人々

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子供たちは木の枝にマシュマロをさして焼いて食べたりしていました

雰囲気は子供の頃に近所で行われたどんど焼きそのもの。木の枝に差した色とりどりのまゆ玉や、お餅やジャガイモを焼いて食べたものでした(笑)。

火をたくことには魔除け・魔女よけの意味があります。夏至のこの頃は魔女の活動が活発になると信じられており、魔女よけに火をたくだけでなく、古くは野に生えている薬草(ハーブ)を集めて、悪霊が遠ざかるように家のドアにかかげたりしたようです。

昨晩は満月で、しかも月が地球に最も近いパワームーン。写真では見にくいかもしれませんが、めらめらと燃え盛る炎の後ろに大きな満月が昇っていく様子は本当にパワフルで、空や大地からエネルギーがふつふつとほとばしるかのようでした。

島のドライバーのオリー(Ollie)が、他の村の焚き火の様子も見に連れて行ってくれました。

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ここはオリーが住む村。海がバックに見えてこれも素敵

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岩の高台に集う人々。やっと空に夕焼けが

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この村は村人が少ない様子。おそらく子供&子供連れの人々は早くひきあげて、火の番をする人のみが残ったのでしょう

あともうひとつ、もうひとつ…とオリーが次々に違う村に連れて行ってくれて、焚き火めぐり。最後に最初の村にもどって見たのが冒頭の写真です。
空はすっかり闇に包まれて、焚き火もより大きく、人も増え、総勢50人ほどの村人が盛大に集っていました。
誰もがくつろいて、ビールなどを片手に火を見ている中、どこからともなく歌声が聞こえてきました。ここアラン諸島はゲールタクト(Gaeltacht=母国語であるアイルランド語を日常的に使用している地域)ですから、歌も当然アイルランド語。
アカペラの、ちょっと物悲しいような旋律のその歌は「シャンノース」と呼ばれる古いアイルランドの歌。これまでもパブなどで、誰かがすくっと立ち上がって突然歌い始めるのを見たことはありますが、このようなシチュエーションで聞くのは初めて。古い時代から受け継がれてきたであろう歌が闇夜に響き、その神秘的な様子は言葉では言い尽くせないほどでした。
あの雰囲気には魔女や妖精も圧倒されて、容易には現れることが出来ないでしょう(笑)。

満月に照らされ、焚き火にいぶされて、全身が浄化されたかのよう気分。イニシュモア島のセント・ジョンズ・イブはどんな聖地に行くよりもパワフルでスピリチュアルで、静かな夜でした。

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焚き火と闇夜と満月。昨晩はアイルランドの西海岸のあちらこちらで同様の景色が見られたことでしょう

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アイルランド公認ナショナル・ツアーガイドの山下直子です。2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、アイススケート、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。長野県上田市出身。

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