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コカリナが奏でるアイルランドの歌「涙と希望の村」 by 黒坂黒太郎さん

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黒坂さんご本人よりいただいた「希望のコカリナ」CD by 黒坂黒太郎とコカリナの仲間たち

「コカリナ」という楽器をご存知でしょうか。
オカリナにちょっと似た小さな笛のような木製楽器で、もともとハンガリーの露店で売られていたものが1995年に日本に紹介され、広められたのだそうです。
「コカリナ」と命名し日本に紹介し、ご自身の活動をもって普及に努めてこられた方が黒坂黒太郎さん。コカリナの第一人者として現在も広く活躍しておられます。
(詳しくは黒坂さんの公式HP参照。コカリナについて&黒坂さんの活動について、詳しく説明されています→コカリナの世界へようこそ

もう10年以上も前になりますが、黒坂さんとお弟子さんたちのアイルランドでのコカリナ演奏旅行をご案内させていただいたことがあります。
お会いしてみると、黒坂さんはなんと私と同じ長野県上田市のご出身。たちまちのうちにご縁を感じました。
1998年の長野オリンピックの際、道路建設により伐採された木からコカリナを制作した黒坂さん。それをオリンピック会場で子供たちが演奏したことで、多くの人々の知るところとなったそうです。
地元にいる母に聞いてみると、上田市の人々にはコカリナはよく知られていて、子供たちが学校で演奏したりしているとのこと。離れてしまった私は知らなかったのですが、当時小学生だった親戚の子供たちも「コカリナ?学校でやってるよ」と普通に知っていたので驚いたものです。

その後も黒坂さんのご活躍は折に触れて耳にしていましたが…。昨年久しぶりにご連絡をいただきました。
アイルランドのある曲に大変心を動かされ、原発事故で故郷を追われた福島の皆さんのために黒坂さんご自身が訳詞(作詞)して演奏しているが、今後もずっと歌っていきたいのでオリジナルの作詞者より正式な承諾をもらいたい、連絡を取る方法がないだろうか…とのことでした。

黒坂さんが心を動かされたというのは「アイル・オブ・ホープ、アイル・オブ・ティアズ(Isle of Hope, Isle of Tears=希望の島、涙の島)」という曲で、作詞はアイルランドの小説家・作詞家として知られるブレンダン・グレアム(Brendan Graham)さん。ケルティックウーマン(Celtic Woman)の歌声で日本でもヒットした「ユ―・レイズ・ミー・アップ(You Raise Me Up)」を作詞した方でもあります。
「アイル・オブ・ホープ、アイル・オブ・ティアズ」はアイルランドのいろいろな歌手により歌われているフォークソングで、私はショーン・ケーン(Sean Keane)という男性歌手の歌声で聞き馴染んでいました。哀愁を誘う、なんともいい曲です。
Sean Keane "isle of Hope Isle of Tears" McNamara's Nashville

実はこの曲、グレアムさんのオリジナルの歌詞は、私の大好きなアニー・ムーア(Annie Moore)のストーリーを歌ったもの。
1981年12月、アイルランド南部のコーヴ(Cobh、タイタニック号の最後の寄港地として知られる町)より2人の弟2人を連れて移民船に乗り込みニューヨークへと向かった15歳の少女アニー・ムーア。1982年1月1日、ニューヨークのエリス島に移民局が開局したその日に到着した彼女は、移民局を通過した最初の人物として歴史に名を残しました。

「アイル・オブ・ホープ、アイル・オブ・ティアズ(希望の島、涙の島)」は、アニー・ムーアとエリス島のストーリーを通して、故郷を離れ希望と涙の入り混じった気持ちで新天地に降り立った移民たちの心境を歌ったもの。
ガイディング中、アイルランド移民やアニー・ムーアの話をする時はいつもこの曲が私の頭の中をぐるぐるし始めるので、「1892年1月1日、エリス島の移民局開局、アニー・ムーアは15歳、移民局は1943年に閉鎖、その間に1700万人が通過」…と歌に歌われている通りにお客様にお話ししています(笑)。
(英語の原詞をご覧になられたい方はこちら

ちなみにコーヴにはアニー・ムーアの銅像があるのですが、海の向こうのエリス島にもあって、私がそちら側のアニーに会いに行ったときの話はこちら。
→過去ブログ:エリス島の移民第一号、アニー・ムーア

話をコカリナと黒坂さんのことに戻します。

「アイル・オブ・ホープ、アイル・オブ・ティアズ」を聴き、かつてアイルランドから移民した人々と、原発事故で土地を追われた人々が故郷を思う気持ちには共通したものがある…と感じられた黒坂さんは、この歌を「涙と希望の村」と名付け、日本人の心境に合うように作詞し直しました。
コンサートではこの曲を聞いて多くの方が涙を流されるそうです。
涙と希望の村 歌 矢口周美 (私にとっても黒坂さんにとっても地元である軽井沢・大賀ホールでのコンサート。歌っておられる素敵な方は周美(かねみ)さん、黒坂さんの奥様です♪)

これを長く演奏していきたいと考えた黒坂さんが、作詞者のグレアムさんに承諾を得ようと思い私にご連絡くださったわけですが、音楽関係の知り合いを通じて2~3連絡を取ったところ、思いがけず簡単にグレハムさんご本人と音楽出版社に連絡がつきました。
このスピィーディーなネットワークにも感謝。知り合いの知り合いのそのまた知り合い…といった具合にあっという間にメールが回り、瞬く間にご本人にいきついてしまったのです。
Music Plantの野崎洋子さん、いつもありがとうございます♪)

その後、黒坂さんが、日本の被災地の皆さんが置かれている状況などを踏まえてオリジナルの歌詞を日本語で作詞したことをお伝えしたところ、「どうぞこの歌をお使いください」と快い返事をくださったそうです。黒坂さんの熱意、曲への深い理解・想いが伝わった結果ですね。

ちなみにブレンダン・グレアムさんは、カウンティ―・ティペラリーのニーナ(Nenagh, Co. Tipperary)のご出身。(今はCo. Mayo在住のようです)
実は10年余り前の黒坂さんのアイルランド演奏旅行の際、この町でもコカリナの演奏をしているのです。懐かしい。このニーナつながりにもなんだか縁を感じずにはいられません。

「涙と希望の村」は、昨年9月にキングレコードより発売された黒坂さんの最新コカリナCDに収録されています。(詳しくはこちら→『希望のコカリナ~よみがえった石巻アカマツの奇跡~』
このCDは、東日本大震災により黒こげになった石巻門脇小学校の被災松から作られたコカリナの演奏を中心に収録したもので、先日、黒坂さんご本人よりCDをお送りいただきました。ありがとうございます。(冒頭の写真)

黒こげになった松の木が音となってよみがり、美しい音色をかなでています。何度も聴いているうちに、まるで木の中に生き続けている精霊が木霊(こだま)しているかのように聞こえてきました。
木は焼けてしまっても、その命は永遠なのですね。

コカリナという不思議な楽器がつないでくれたご縁に感謝。これからも黒坂さんとコカリナの演奏者の皆さんを陰ながら応援させていただきたいと思います。
いつかまた、アイルランドに演奏旅行に来ていただけますように。


コメント

「涙と希望の村」の曲が誕生するまでの物語がnaokoguideさんとシンクロしていて驚きです。
コカリナという楽器も初めて知りました。
音楽に国境はないと言いますが、こんなふうにアイルランドのフォークソングが日本の多くの人々に感動の涙を流させるなんて 素敵すぎます!

アンナムさんへ

特にフォークソング・ファンではない私ですが、この曲は以前から好きで、同じ土地出身の黒坂さんが演奏しておられると聞いた時には不思議な気がしました。
そうなんです、英語と日本語で歌詞の内容は違えど、そこに込められている想いは一緒。木の精霊が音にのって人々の心に入ってくるときに、感動がおこるのでしょうね。

Isle of Hope, Isle of Tears

とっても心に沁みる曲ですね。
You Raise Me Upのグレアムさんの作詞と知って思わず「へぇ~」とトリビアのような声をあげてしました(笑)

歌詞もメロディも、日頃安穏と暮らしている私ですら故郷を想い、懐かしく切なくなるくらいですから、大震災で被災された方々にとっては心を揺さぶり、かつ優しく励まされ、深く慰められることだろうと思います。
Isle of Hope, Isle of Tearsと共にコカリナの「涙と希望の村」もiTunesなど探してみます!
聞いていてポルトガルのファドを思い出しました。雰囲気は全く違いますが、サウダーデ・郷愁の想いに通じるものがあり、国・人種・歴史・時代を問わず、人の心の琴線はみな同じなのかもしれませんね。

コカリナという楽器は私も初めて知りました。
実はたった今、長野の叔母から毎年恒例のリンゴが届きました♪(上田駅から徒歩数分の所に住んでいます笑)
今夜、お礼の電話をするのでコカリナのことや黒坂さんのことを叔母や従姉妹にも聞いてみようかと思います。

素敵な曲を教えてくださって、ありがとうございました!

Re: Isle of Hope, Isle of Tears

しんママさん、コメントありがとうございます。上田のリンゴ、羨ましい!(笑)
黒坂さんは上田市内でもさまざまな活動をしておられますので、ご親戚の方々もご存知かもしれません。そうですね、コカリナの音色は哀愁漂う他国の曲にもぴったり合いそう。シンプルですが、奥深い楽器のようです。
素敵なクリスマスをお迎えください。今後ともよろしくお願いいたします♪

初めてコメントします

こんにちは。アイルランドが大好きで、こちらのブログを時々拝見してます。昔、黒坂さんをモデルにした「コカリナの海」という本を読書感想文の題材にしたのです。まさか、アイルランドつながりで、もう一度黒坂さんの名前を目にするとは。しかもこの曲、ケルティックウーマンのCDで聞き、それをきっかけにアニームーアを知ったという思い入れのある曲だし。
念願の2度目の渡愛のために航空券を取ってきたので、計画を詰めてるところです。出発まで後二か月!前回はダブリンだったので今度は西部(コネマラ周辺)とキルケニーを検討中。コーヴも気になるな。ブログ、参考にさせていただきますね。

Re: 初めてコメントします

miiさん、コメントありがとうございます。すみません、お返事したつもりが反映されていなかったようです。
コカリナの海、調べてみました。そんな本があったとは黒坂さんからもうかがっていなかったので、初めて知りました。いろいろつながりますね!

楽しいアイルランド旅行になりますように。秋のアイルランドは静かでなかなかいいですよ♪

コカリナが奏でる

今頃になってNaokoさんのこのblogを見つけました。  16年8月Ashford Hotelでの夕食会の演奏曲にこの歌をリクエストした時、Naokoさんが「私もこの歌好き!」とおっしゃって下さったのが印象的でした。歌詞が特に感動的です。私は、特に Celtic Woman がPowerscourt Houseで歌ったLive DVD が大のお気に入りです。

Re: コカリナが奏でる

SHIGEさん、3年以上も前の古い記述を見つけてくださってありがとうございます。
この翌年、黒坂さんがアイルランドに演奏会にいらしていただき、「アイル・オブ・ホープ…」日本語版を演奏してくださいました。コンサートにはこの曲を作ったブレンダン・グレハムさんもいらしてくださいました、その時のブログです。

http://naokoguide.blog33.fc2.com/blog-entry-1873.html

Celtic Womanの「ユーレイズミーアップ」もブレンダンさんの作詞です!

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アイルランド公認ナショナル・ツアーガイド。2000年よりアイルランド在住。アイルランドでの生活、ガイド業を通してのさまざまな体験を皆さんと共有できたら嬉しく思います。最近の趣味はサーフィンとバラ栽培♪

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