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「愛国心」について考える

昨日4月29日(土)付けのIrish Timesに、

‘Japan moves to enact call for patriotism’(=愛国心を呼び覚ますことを法案化しようとする日本)

という見出しで、日本の教育基本法の改正についての記事が掲載されました。内容は、

・「愛国心法案(patriotism bill)」が戦前のナショナリズムへの逆戻りとして批判の的になっていること
・法案の通過は小泉政権の勝利を意味すると共に、日の丸と国歌斉唱を暗に認めることになること
・各政党の反対意見いろいろ
・靖国問題と絡めて近隣アジア各国の批判を招くだろうこと
・教師たちも反対
・「政府は子供たちを洗脳しようとしている」by 根津公子さん


日本語で読んだほうがより分かりやすいだろうと、インターネットで日本の新聞記事などもいくつか読んでみましたが、日々、日本のニュースを追っていない私には、総括的なIrish Timesの記事の方がわかりやすい。日本語であれこれ読んでしまうと、どうも活字による大義名分にごまかされているような気がして…。

私自身、教育基本法の改正に関してさまざまな想いがありますが、そもそも「愛国心」って何だろう?ということを、ちょっと考えてみました。

今回、論争の的になっている「愛国心」とは、一体どんなニュアンスで言われているのでしょう。
おそらく「日本人としての意識/誇りを持つこと」なのでしょうが、どうも、言葉だけがひとり歩きしてしまって、言わんとすることがよく伝わらないままに議論が進んでしまっているような印象を持ちました。
「国を愛する心」と書くけれど、国家そのものには実体がないので、これでは意味をなさない。国家は人の集まりなので、「国民に愛着を持つ→その国の国民としての意識を高め、誇りを持つ」と私は解釈しています。
だとしたら、それはとても大切なことではないでしょうか。

私自身が国外で生活しているため、「日本人」としての意識を強く持つ場面が多く、そう感じるのかもしれません。
どうしても私を通して日本を見られてしまうので、「日本人として恥ずかしくない振る舞いをしよう」と思ったりするのですが、この感情は自分を律する上で役に立っています。
また、日本人であることは変えられないのだから、その事実に愛着を持ち、日本人でよかったな~とハッピーに思えた方が幸せ。

しかし、この感情が強すぎたり、弱すぎたりすると問題なのでしょう。国民意識がありすぎると選民的で排他的になりかねないし、かといって、なさ過ぎると拠り所がないような不安な気持ちになりそう。

2002年のサッカー・ワールドカップの際、試合後のインタビューに答えるアイルランド人が、

I'm proud of being Irish!(アイルランド人であることを誇りに思います!)

と言っているのを聞いて、ちょっとうらやましく思ったことを思い出します。
学歴や職業といった後天的なものではなく、性別、国籍、どんな親から生まれたか、といった自分が生まれ持ったものを誇らしく感じられるって、とってもシンプルでいいな~と感じたのです。

これこそ、究極の自己肯定。
多くのアイリッシュから感じられる「根拠のない自信」は、ここに源を発しているんだ~と思ったものです。
スポーツの試合で気持ちが高揚したほんの一瞬の言葉だったとしても、「自分はアイルランド人で幸せ~、他の何者にもなりたくないんだ!」という気持ちは、一個人の人生としてはとても幸せなものだと思います。

旅の前にガイドブックを読んでもなんだかピンとこない、でも旅の後に再読すると「そうそう、そうなんだよね~」ともやが晴れるようにすっきりすることがありますね。それは紛れもなく、それまで誰か他の人の体験だったものが、自分のものになったのを再確認した瞬間
実生活もこれと同じで、「自身の体験」が伴わないとピンと来ないことが多いものです。
「愛国心」という言葉そのものには何の意味もなく、そこから体験を通して引き出される個々の感情に、本当の意味があるのではないでしょうか。

アイルランド人であるとか、日本人であるとかといったことは、それ自体、何の意味も持ちません。それをどう捉えて、自分の人生にどうやって引き寄せるかが大切な気がします。

教育基本法が改正されようとされまいと、人として大切なことの真実は変わりません。「愛国心」教育よって「洗脳」されてしまう~なんていう懸念こそが「大義名分によって人が変わる」という一種の「洗脳」に他ならないのでは?

「愛国心」という字面や、多すぎる情報に惑わされないで、「自身の体験」から考えたり、感じたりする訓練をしたいものです。考えられないようなら、それは人生修行が足りない!
そう思ったら、感じられるようになるまで貝のように口を閉ざして、毎日の生活をしっかりする、これを何歳になっても肝に銘じて生きていきたいな~と思うのです。

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プロフィール

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Author:naokoguide
アイルランド公認ナショナル・ツアーガイド。長野県上田市出身、2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。
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