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ヘンデルの「メサイア」初演の地ダブリン

今年2012年は、アイルランドではタイタニック号出航100周年(ベルファーストにて造船、コーヴに寄港)、フェニックス・パーク(Phoenix Park, Dublin8)創設350周年など、きりのいい記念の年に当たることが多いようです。
ヘンデルの「メサイア」初演270周年でもあり、今日は以前より詳しくお話ししようと思いつつ延び延びになっていた、ダブリンでの「メサイア」初演のエピソードについてご紹介したいと思います。

先日、東日本大震災の1周年に、日本からの合唱団による「メサイア」チャリティー・コンサートがダブリンで行われたことはこのブログでもご紹介させていただきました。
ハレルヤ・コーラスで有名な「メサイア」は、1742年4月13日にダブリンにて慈善公演として初演されました。
日本の合唱団の皆さんのコンサートは、同じくチャリティーであるということ、270周年であるということなど、さまざまな意味があって行われたものです。

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指揮者の辻秀幸先生&東洋英和女学院合唱団の皆さん。聖パトリック大聖堂(St. Patrick's Cathedral)にて(2012年3月撮影)この聖パトリック大聖堂の聖歌隊は今も有名ですが、「メサイア」初演の際にも出演しています

「メサイア」を作曲したジョージ・フリデレック・ヘンデル(George Frideric Handel, 1685-1759)はドイツ生まれですが、英国に帰化しておりロンドンに住んでいました。(英語では「ハンドル」と呼びますが、ドイツ語読みの「ヘンデル」が日本では一般的なのでそれにならいます)
1741年の夏、たった24日間で「神からのインスピレーションにより書き上げた」と言われる「メサイア」。全259ページの直筆スコアには、汚れやペンが引っ掛かった跡など急いで書き上げた形跡が残っています。

その年の11月、友人のバイオリニストがダブリンにいたりした関係で、デボンシャー侯爵なる人物の招きでダブリンにやってきたヘンデル。当時ダブリンのフィッシャンブル・ストリート(Fishamble St, Dublin8)にあった音楽堂にて冬の3か月間計6回のシーズン・コンサートをアレンジし、大成功を収めます。
そのコンサートでは「メサイア」は披露されなかったのですが、次のシリーズ・コンサートの前にチャリティー公演を行おうではないかとの話が持ち上がり、その演目に選ばれたのが「メサイア」。
1742年4月13日、同音楽堂にて「メサイア」が慈善公演として初演される運びとなりました。

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この音楽堂の建物は残念ながら現存せず。跡地にはヘンデルの名をとったホテル(George Frederic Handel Hotel)があります(厳密には音楽堂があった位置とちょっぴりずれています)

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ホテルの柱に刻まれた記念のレリーフ。「GEORGE FREDERIC HANDEL The first performance of the Messaiah took place in the Musick Hall, Fishamble Street on April 13th 1742.(ジョージ・フリデレック・ヘンデル メサイア初演公演がフィッシャンブル・ストリートの音楽堂にて1742年4月13日に行われた)」と記載されています

ヘンデルは聖パトリック大聖堂とクライスト・チャーチ大聖堂の聖歌隊の出演許可を取り付け、男性16名、ボーイソプラノの少年16名が世界初のハレルヤ・コーラスを歌うことに。当時の聖パトリック大聖堂の司祭長は「ガリバー旅行記」の作者として知られるジョナサン・スウィフト(Jonathan Swift)でしたから、彼の許可の元、聖パトリック大聖堂の聖歌隊が出演したことになりますね。
女性パートは、当時ダブリンで定評のあったソプラノ歌手1名、女優1名が歌いました。

公演当日は700人の聴衆を集め、過去最大の観客数を記録。混乱を恐れた主催者側から、「男性は剣を携帯しないように、女性はフープ(当時の女性が身に着けたドレスの内側につける張り骨)を着用しないように」との通達が出たことは、今もってダブリンで伝えられる有名なエピソードです。

ちなみにコンサートの収益は400ポンドにのぼり、3等分して3種類の慈善活動(囚人の解放、病院への寄付、診療所への寄付)に使用されました。これにより142人の囚人が解放されたそうです。

ヘンデルはさらに4カ月ダブリンに滞在し、第2回目の「メサイア」コンサートを同年6月3日に行っています。これはチャリティーではなく、ヘンデル個人の収益のためのものでしたが、やはり好評を収め、当時「メサイア」がいかに人気をはくしたかがうかがわれます。
その後ロンドンへ戻り、ロンドンでの「メサイア」初演公演は、翌1743年3月23日にコベントガーデン劇場で行われています。

上記のようないきさつでダブリンが世界初の「メサイア」初演の地となったわけですが、それを記念して、毎年初演の日4月13日にはフィッシャンブル・ストリートの旧音楽堂(現ヘンデルホテル)前にて「メサイア」の野外コンサートが行われています。
過去に何度か見に行きましたが、臨場感たっぷりのとても楽しいイベントですので、この日にダブリンにいらっしゃる機会があればぜひ参加してみてください。
(過去ブログ参照:今年も盛況…『ハレルヤ』野外コンサート!

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フィッシャンブル・ストリートの音楽堂跡地隣りにある、アパートの中庭にある指揮者のモニュメント

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同じくフィッシャンブル・ストリートにあるカフェは、その名も「コーラス・カフェ(Chorus Cafe)」

ダブリンにはもうひとつ、ヘンデルゆかりのものがあり、なんとヘンデルがひいた(と言われる…!)オルガンが現存しています。
聖ミッカン教会(St. Michan's Church, Church Street, Dublin7)という1000年近い歴史のある古い教会内にあるのですが、いつか行かねばと思いつつ、私も一度も見たことがありませんので、近いうちに行ってみようと思っています。


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Author:naokoguide
アイルランド公認ナショナル・ツアーガイド。長野県上田市出身、2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、バラ栽培など。愛読書は『赤毛のアン』とW.B.イエーツ詩集♪

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