『ガリヴァー旅行記』の作者ジョナサン・スウィフト(Janathan Swift, 1667-1745)は、ダブリン出身のイギリス系アイルランド人。晩年の32年間、ダブリンのセント・パトリック大聖堂の司祭長を務めていたことで知られています。

(
セント・パトリック大聖堂内のスウィフトの墓所)
トリニティー・カレッジを卒業し、ロンドンのテンプル卿(テンプル・バーの名の由来となった人物)の秘書をしていたスウィフト。
政治界進出への有力なコネを持っていたにもかかわらず、その著作に当時のイギリス社会への批判を込めたため、出世の道が絶たれてしまいます。
本来は
「主教職」を希望してにもかかわらず、英国のアン女王に嫌われて、主教よりランクが下の「司祭長」としてダブリンのセント・パトリック大聖堂に任命されたのでした。
『ガリヴァー旅行記』は、スウィフトがこの教会に務めていた間に書かれた作品です。
子供向けのお話かのように捕らえられがちですが、本来は
風刺小説という分野にジャンルされる4部からなる長編小説。体長15センチの人々が住むリリパット国は、当時のイギリスを象徴しており、「卵の殻は大きい方からむくのか、小さい方からむくのか」をめぐって敵国と戦争するくだりは、カトリック国との宗教&権力争いを象徴していると言われています。
第3部では、さまざまな国を旅することになるガリヴァー。
宮崎駿さんのアニメ『天空の城ラピュタ』にインスピレーションを与える「空飛ぶ島ラピュタ」はここに出てきます。
江戸時代の日本にもやって来たガリヴァー、そこで「踏絵」を強要されるエピソードはなんとも興味深い(結局、ガリヴァーは「踏絵」を免れるのですが)!
ガリヴァーは1709年にザモスキ(三浦半島の観音崎)に上陸、長崎より船でイギリスへ帰ります。
ガリヴァー上陸300周年を迎える2009年に向けて、観音崎ではさまざまなイベントが予定されているとのこと、これまた楽しみですね~。
大国同士の権力争いのくだらなさ、イギリスの圧政下で苦しむアイルランドの貧困、科学の発展の陰で失われていく自然環境、名声を得て堕落する人々などなど…
ファンタジーの形を借りて、当時のイギリス社会をとことん皮肉った『ガリヴァー旅行記』。
子供の本や古典の中に埋もれさせてしまうのはもったいない!あらためて読み返すに値する作品です~。
セント・パトリック大聖堂は、ダブリン市内観光で必ずと言っていいほど立ち寄る場所のひとつ。
いつもスウィフトの墓所の前で立ち止まり、スウィフトと『ガリバー旅行記』について案内をさせていただきながら、
いつの時代も「出る釘は打たれる」、しかし「出ないとさびる」とおっしゃったどなたかの言葉を思い出します。
変人扱いされようとも、社会に迎合しなかったスウィフトの骨のある生き方。生きている間は辛かったかもしれませんが、
人の生は必ずしも自分自身や自分の生きる時代のものだけはない、ということが分かっていた人かもしれないな~と思ったりするのです。
- 関連記事
-
コメント
Lili
本日お別れした後行ったNCHでジュードに遭遇。ご夫妻で仲良くクワイヤー席。TipperaryのFamでナオコガイドと旧交を温めた話がでました。いやー懐かしかったです。
2006/09/15 URL 編集
naokoguide
次回のファムはジェリーのミステリー・ツアーの予定。Liliさんも一緒に行きましょう!
2006/09/17 URL 編集
西野惠子 メイプル会
帰路のパリ空港で、キャセイのデスクが見つからずに、少し大変でしたが無事に福岡に到着しました。機内預けのトランクが一個パリで積み込み忘れられていました。今日の便で届くとのことです。カメラを無くされたとのことで、和服を着ていたメンバーが写真を送りたいとのことで住所を教えて下さいとのことです。アランでの写真掲載していただき感動しています!!
2006/09/27 URL 編集
naokoguide
こちらこそ、楽しくご一緒させていただきありがとうございました。
写真お送りくださるとの事、楽しみです。
西野さまのメール・アドレスが文字化けしてしまって出てこないので、恐れ入りますが、お渡しした名刺上のアドレスへメールしていただけますでしょうか?
2006/09/28 URL 編集
西野
2006/10/01 URL 編集
naokoguide
2006/10/02 URL 編集
やいっち
http://atky.cocolog-nifty.com/bushou/2006/10/post_7dc9.html
アイルランドで現地ガイドをされているのですね。
アイルランドというと、ジョイス、ケルト人などを連想します。
気象や風土はどうなのだろう。いつかは行ってみたいものです。
2006/10/18 URL 編集
naokoguide
早速、やいっちさんのブログ、拝見させていただきました。面白い!リンクしていただき、ありがとうございます。
今日が、スウィフトの命日だったんですね。
2006/10/19 URL 編集