記事一覧

フェルメール「手紙を書く女性と召使」の盗難事件 NHKドキュメンタリー

昨年はパリ、ダブリン、ワシントンで大規模なフェルメール展が開催され、夏の3か月間、11点のフェルメール絵画がダブリンに集結。何度も足を運び、名画を存分に楽しませていただきました。
そして今年10月からは東京・大阪でフェルメール展が開催されますね。日本では過去最多となる、8点が出展されるとか。(大阪の内容、展示数は異なるようです)

フェルメール展
《東京》 2018年10月5日(金)~2019年2月3日(日) 上野の森美術館
《大阪》 2019年2月16日(土)~5月12日(日) 大阪市立美術館

vermeerdublin0618
この絵も日本へ行きます!フェルメール晩年の秀作として名高い、ダブリンの国立美術館(National Gallery of Ireland)所蔵の「手紙を書く女性と召使」

昨年のダブリンでの展示にはなかった「牛乳を注ぐ女」(アムステルダム国立美術館所蔵)、「ぶどう酒のグラス」(ベルリン国立美術館所蔵)も来日予定と報じられています。
私も東京での開催期間中に日本滞在予定があるので、ぜひ見に行くつもり。ダブリンで親しんでいる1枚に日本で会えるのも楽しみです♪

実はこの夏、懇意にしているお客様をオランダへご案内する予定があるので、日本での開催前にフェルメールめぐりが出来そう。
旅程をつくりながらあれこれ調べていたら、以前に日本で放映されたNHKのドキュメンタリー番組を発見。ダブリン所蔵の「手紙を書く女性と召使」の盗難にまつわる内容で、約1時間の放送内容がネット上にアップされていたので視聴してしまいました。
(映像のリンクは記載しませんが、ご興味ある方はタイトルで検索してみてください)

アナザーストーリーズ 運命の分岐点 フェルメール盗難事件 史上最大の奪還作戦
初回放送 2016年8月24日(水) 午後9時00分(60分) BSプレミアム
番組HP→アナザーストーリーズ 運命の分岐点

手に汗握る、ドキドキはらはらの内容で、食い入るように観てしまいました!
盗難のいきさつから、ロンドン警察、アイルランド警察、アメリカのFBIが結託して行ったオトリ捜査による名画の奪回までを追った迫真のドキュメンタリー。
この盗難事件についてはいつもお客様にお話ししているので概要は知っていたものの、FBI捜査官のミスで一度はオトリ捜査に失敗したことや、盗難から7年後にアントワープ国際空港で絵が取り戻されたときの具体的ないきさつなどが細部にわたって丁寧に取材・編集されていて、非常に興味深かったです。
アメリカ人の美術商を装い(英語のアクセントもアメリカ風にかえて!)命がけで絵の奪回にあたった、ロンドン警察のオトリ捜査官本人も出演しています。

「手紙を書く女性と召使」は2度盗まれていますが、番組で扱っているのは1986年5月21日の2度目の盗難事件。当時ダブリンにいた悪名高き大泥棒、マーティン・カヒルとその一味による世紀の大盗難でした。
盗まれた時はアルフレッド・バイト男爵の個人所有で、ダブリン南郊外カウンティー・ウィックロウのラスボロウ・ハウスにありました。
名画のコレクターだった男爵夫妻はのちに多数の美術品をダブリン国立美術館に寄贈し、美術館の一翼が「バイト・ウィング」と名付けられているほど。
その屋敷から、推定金額30億円と言われたフェルメールはじめ、ルーベンスやゴヤなど18点の名画がいとも簡単に盗み出されてしまったのです。

russbroughhouse0618
ラスボロウ・ハウス(Russborough House, Co. Wicklow)。館内は一般公開されており、番組によるとカヒルは一般客をよそおってツアーに入り、館内を入念に下見していたのだとか!(写真は2016年7月の訪問時に撮影)

「ザ・ジェネラル(=将軍)」のニックネームで世間を騒がせていた凶悪犯、マーティン・カヒルは犯罪にかけては天才的で、男爵自慢の赤外線セキュリティーも簡単に操作。ところが美術の素人だったカヒルは絵の売却に手を焼き、この盗難をきっかけにカヒルの泥棒人生は凋落の一途をたどることに。
結局、7年の月日を経て絵は奪回されます。カヒルはこの絵の売却が原因でIRAに恨みを買い、翌年、自宅前で射殺。名画の呪い…などとも言われた、大泥棒の終焉でした。

カヒルの生涯は「ザ・ジェネラル(The General)」(1998)のタイトルで映画化されていて、ラスボロウ・ハウスから絵を盗み出すシーンも劇中に再現されています。
(この映画を観て、盗難の時のことをお客様に詳しくお話しできるようになりました!)
カヒル役を演じるのはダブリン出身の名優ブレンダン・グリーソン(Brendan Gleeson)で、カヒル本人かと思っちゃうくらいの名演技。グリーソンはカヒル一味に自宅に盗難に入られたことがあり、そのシーンもちゃんとあって、盗まれた本人が盗む役をしているのが笑える!(笑)

話を「手紙を書く女性と召使」に戻します。
ダブリンの国立美術館でこの絵をお客様に説明するとき、いつも面白いなあ…と思うことは、絵の中の絵の暗示。オランダ絵画には寓話的なモチーフがしばしば登場し、それを読み解くのが面白いですよね。
この絵に描かれている絵は旧約聖書の「モーセの発見」。さまざまな解釈があることと思いますが、私は、絵の題材が女性の恋の行方を暗示している…という説がいちばん好きなので、その解釈に沿ってお客様にお話ししています。
「モーセの発見」は、生後3か月でナイル川に流されたモーセがファラオの娘に無事に拾われて「安堵」するシーン。すなわち、女性の恋もハッピーエンド…ということですね。
(この絵には女主人だけでなく召使の恋物語もあるのですが、その話はまた別の機会に…)

そして、盗まれた絵画もモーセと同じようにちゃんと「発見」され、「安堵」をもたらしたことを思うとなんとも感慨深い。
2度にわたる盗難劇。いずれの結末も、はじめから絵の中の絵に暗示されていたかのように思えてならないのです!

コメント

興味深い!

盗難、映画ととても興味深いです。
いつも拝読させていただいています。

Re: 興味深い!

riceさん、コメントありがとうございます!
こういうことを知ってから絵を見ると、より興味がわきますよね。

今後ともよろしくお願いいたします。

コメントの投稿

非公開コメント

スポンサーリンク

お知らせ ☘

新刊のお知らせ
「絶景とファンタジーの島 アイルランドへ」(イカロス出版)2017年5月29日発売

おかげさまで重版決定
ikarosbook0517
イカロス出版サイト
アマゾン

イベントのお知らせ
スケジュールが決まり次第、お知らせいたします!

プロフィール

naokoguide

Author:naokoguide
アイルランド公認ナショナル・ツアーガイド。長野県上田市出身、2000年よりアイルランド在住。趣味はサーフィン、バラ栽培、ホロスコープ読み、子供の頃からのライフワーク『赤毛のアン』研究。
Instagram

カレンダー

06 | 2018/07 | 08
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

月別アーカイブ